Silver linings

カリフォルニアで子育てとか仕事とか。

Just experimenting.

2010-06-01 02:00:10 | エクスプロラトリアム
こないだつくっていたパーテーション、予定が少し遅れ気味でまだショップの中に鎮座しています。クリスがこれをデザインし、デービッドが立てるための土台と枠をつくり、私はレーザーカッターでカットされたピースを組み立て+サンドペーパー係(やすりがけ)。そしてようやく出来上がりました。


立ててみるとやっぱりうつくしい!
照明があたっている部分はとくに素敵だなぁと思った。

エクスプロラトリアムは2年後にエンバカデロへ移転します。その新しいミュージアムスペースために、今いろいろなことが企画され、試され、実施されています。このパーテーションは新しいミュージアムに持って行くためのプロトタイプのひとつ。大きさも、素材も、置き方(立て方)も、使い方も、今のところすべてが未知数です。私はよく「なんのために使うの?」「どこに置くの?」「どうしてこのデザインなの?」と質問してしまうのだけど、、、

そんなとき、エクスプロラトリアムのスタッフはだいたいこう言います。
We don't know yet. We are just experimenting. Let's see how it works.
(僕らにも分からない。これは実験してるだけだから。どうなるか見てみよう。)

ほんとうに、み~んながみんなこう言う!
それを聞くたび、自由だなぁと思う。それを聞くたび、私までふわっと解放される気がする。教育の話になるとこども達の学びのために「こういうゴールがあって」「それを達成するために1、2、3」というエンジニアリング的な考え方にどうしても支配されがち。でもここは違うんだなぁと思う。こちらが意図したレールの上をその通りに歩いてもらうだけなんてつまらない、と誰もが思っているかのよう。これをこれからフロアに置いてみて、ビジターがこれをどう見るか、どう関わるか、置いてみて違和感がないかどうか、いろいろ試してみようということ。

実際この日もたまたま後ろに置いてあった照明にあたってパーテーションが本当にうつくしく見えたのをきっかけに、フロアに置く時は照明のあてかた工夫してみようという話に。話しながらちょっと照明の角度を変えてみようと後ろにまわったら、なんと後ろにたまたま置いてあった照明はこんなものでした。何これー?


植物が逆さまにぶらさがっていて、「Upside Down Plant」と書いてあります。
「何これー?」と聞くと、
「あー、それね、それも今、実験中なんだ。
 植物を逆さまにして根っこに光を当てると根っこは上に伸びてくるのか、葉っぱが上に出てくるのか、葉っぱは下に伸びるのか、、、etc..ということを試してるんだけど。まだ分からない。」
それを聞いて思わずニコリ。

プロトタイプ(prototyping)とか、実験(experimenting)とかいう言葉は、分かりきったことをするのではなくて、分からないからやってみるんだ、と背中を押してくれる。失敗したり、うまくいかなかったりしても、今後はそうしなければいいというヒントがひとつ増えるだけ。

Just experimenting.
ガチガチにかたまった頭をほぐす魔法のことば。

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6 コメント

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素敵な言葉ですね! (yasuko)
2010-06-19 01:11:13
こんばんは、お久しぶりです。
Just experimenting・・・
素敵な言葉ですね。

今、私たちのNPOでは東大の工学部生と一緒に
科学の授業を開発しています。
私たちは日本で科学教育を研究していて、昨年
と今年とUCバークレーに行ったのは「WISE」と
いう科学教育プログラムを開発しているチーム
のメンバーと会うためでした。
UCバークレーでは理系の研究者が科学教育
プログラムを開発しているのですよね。
でも日本は、小学校の校長先生が理科の教科書
を監修していたりして、その差は歴然・・・
今東大工学部と開発しているのは、学習指導
要領に縛られない、自由な科学の授業です。
指導教官は航空宇宙工学科の有名な教授なの
ですが、その先生が「授業の中で答えがでなく
てもいいんだよ。子どもたち自身が何か疑問を
見つたらすごいこと!」という、研究者
ならではのアドバイスをして下さって、私は
その言葉に感心していました。
Just experimenting という言葉には同じような
響きがありますよね。
答えを急がないで!って。

なんだかとりとめのない文章になってしまい
ましたが、いつもブログ楽しみにしています!
 
返信する
ありがとうございます! (rucco)
2010-06-21 01:39:23
こんにちは!コメントうれしいです、ありがとうございます。

とても興味深い実践をされてるのですね。大学生といっしょに小学校の授業をつくる、なんて理想的です。私も京都にいた頃、仕事で大学生といっしょにこども達向けのワークショップをつくったり、小学校へ授業をお手伝いに行っていました。小学校教育に民間や地域、大学がどんどん関わっていくというスタイルがいいですよね。yasukoさんの場合は有名な指導教官がついてくださっているのなら本当に理想的だなぁと思います。

それと、WISEは学習科学の分野ではよく知られたプロジェクトですね。ブログを読ませていただきましたが、マーシャリンさんにお会いしてお話を伺ってきたなんてその行動力がすばらしい!たしかに、UCバークレーの丘の上にあるホールオブサイエンスというミュージアムでも、カリキュラム開発がとてもさかんです。そこのミュージアムショップに置いてあるカリキュラム本がとても充実しているのですが、UCバークレーの研究者や学校の先生が共同で開発されたと聞いています。

Just experimenting.は、実はずっとエクスペリメントなんですよね。いつ完成とか、いつ正解が見つかる、というものでもなく、ずーっと現在進行形でいつまでも「エクスペリメント」。展示のしかたひとつとっても、これで完成、これで満足、といったことがなくて、いつ何時も変わり続けることを受け入れる柔軟性があるような気がします。私がエクスプロラトリアムから学ぶことは、(理科に限らず、ものづくり、デザイン等)様々なことに対して実験をつづけようとする態度、みたいなものです (^^

それでは、また!
返信する
こんにちは!! (koji Miki)
2010-06-21 22:46:50
ruccoさん、こんにちは。

yasukoさんと一緒にNPOを作りましたkojiです。
東大の工学部ゼミでも一緒に進行役をしています。
最初、ゼミの説明会に行ったとき、教授が『来週僕は出張なのであとはkojiさんとyasukoさんよろしく』と言われて...
そのまま、継続していま2学期目のゼミを担当しています。

先日は、教授から『僕の知っている工学系の学会で発表したら』と言われて...
申込み締め切りの数日前でしたが「通ってしまって」...
結局、2つの学会で発表することになり、
この数週間、大学入試以来の猛勉強をすることになってしまいました。
yasukoさんは毎晩の様に新発見をして『ねえねえ、こんなの見つけちゃった!!』...
cpuが暴走し続けていました。

WISEにyasukoさんが突入したお話はまたの機会にして、
そこでバイリンガルのelissaさんという大学院生に巡り会いました。
先日、彼女から
『エクスプロラトリアムからUCバークレーのローレンスホール異動されたserryさんを紹介しますよ』
という話が飛び込んで来て、どんなインタビューにしようか知恵を出し合っています。

私たちは、日本の子どもたちがもっと科学を好きでい続けて欲しいと願っています。
小学生の内は大好きだった理科がいつの間にか、苦手や嫌いになってしまっています。
実はその状況が親子2世代に渡って続こうとしています。
私たちはそのためにジュニアサイエンスカフェを開催したり、
東大工学部生による小学校との連携授業を進めています。

それとともに、USでの科学教育からも勉強しようとしているのですが、
science for all americans などを知り、調べれば調べる程すごいと感じざるを得ないです。

またyasukoさんがエクスプロラトリアムを訪問したことから
『USの科学館における科学教育に対する考え方と姿勢』が日本と全く違うことを知りました。
エクスプロラトリアムの展示の仕方も大変勉強になります。
スタッフの方々のモチベーションも大変勉強になります。
ruccoさんのこのブログを読ませていただくだけでも得るものがたくさんあります。

そんなことでもしよろしければ、多くのことを教えていただきたく思っております。
科学教育に関しては、みなさんから見ると思いっきりかけ出しの二人ですがよろしくお願いします。

最後になりましたが、私の現在の本業は
「日本の科学教育を推進するための独立行政法人で子ども向けの科学のサイトを運営すること」
です。

日本の子どもたちのためにお知恵と経験を貸していただければありがたいです。

koji
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はじめまして! (rucco)
2010-06-23 01:19:26
こんにちは、Kojiさん。
コメントありがとうございます!熱い思いが伝わってきました (^^

こちらこそKojiさんやyasukoさんの取り組みから学ぶことがありますよ!かがくナビのウェブサイト素敵ですよね。私も科学教育は専門ではないので、「へぇ~」「ふ~ん」とうなってばかりの日々です(笑)。エクスプロラトリアムのスタッフのバックグラウンドは本当に様々です(サイエンスはじめ、アート、教育、テクノロジー、デザインetc)。私がお世話になっているラーニングスタジオでは、アーティストを招いてワークショップをしたり、雑誌MAKEと共同でものづくりワークショップを企画したり、機械じかけのおもちゃを分解して違うおもちゃをつくり直すワークショップをしたり、、、必ずしも科学という枠にはとらわれない活動をしています(リーダーのマイクももあえてサイエンスと呼ばないようにしています)。

よく知っているモデストもサイエンスという名前のくくりが好きではないと言いますね。サイエンスといったとたんにこども達は「あぁ、なにか学ばされる、、、」「勉強だ」と身構えてしまうのでしょうね。エクスプロラトリアムとローレンスホールオブサイエンスの一番の違いがそこにあるような気がします。ローレンスの方は「科学教育」を全面に打ち出しているというか。。ぜひ両方をご存知な Serryさんという方のインタビューの際に聞いてみてください。

もちろん私でできることがあればぜひ協力いたします!私もエクスプロラトリアムで日本のこども達を見かけるととてもうれしいですし、ぜひ日本のおとなの方々にこのミュージアムのことをもっとよく知っていただければと思っています。

機会があればぜひミュージアムにいらしてください!これからも色々と情報交換していきましょう(^^
返信する
なるほど! (yasuko)
2010-06-23 11:15:46
毎回長いコメントですみません。
お聞きしたいことがたくさんあって!

「サイエンス」と聞くと身構えてしまうのはアメリカの子どもたちも同じなのですね。
エクスプロラトリアムの目指すものは「科学を楽しんでもらう」ということなのでしょうか?
でも、学びたい人には学べるだけの材料は十分提供するよ!ってことですよね?

私が驚いたのは「After school activities」にconcept mapがついていることでした。
日本では見たことがないです。
でもこれがあれば、親や先生も「こういう方向で調べればこの続きが分かるのね!」って思えますよね。
こういうconcept mapは、館内の展示やワークショップにもあるのでしょうか?

日本の科学館やワークショップを見て回る機会もありますが、日本の場合は、極端にどちらかのような気がしています。
楽しいけどほとんど何も残らないか、学べるけど難しいか。
楽しいワークショップにもconcept mapがあれば、楽しいだけでは終わらないものになりそうだとNPOで話していたところです。
どちらも併せ持つエクスプロラトリアムはやっぱりすごいですね。
日本からツアーでも組みたいくらいです♪

Ruccoさんも日本でワークショップをされていたのですね。
大学と組もうと思ったのはどうしてですか?
どんなメリットがありましたか?
差し支えなければぜひお聞きしたいです!

今回は質問ばかりになってしまいました。
コメント欄に掲載するのに問題がある場合は sence_of_wonder2008nifmail.jp へ送って頂いても構いません。
 
お時間のあるときにでも教えて頂けると嬉しいです。

 
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Unknown (rucco)
2010-06-24 12:39:03
エクスプロラトリアムが目指すもの、、、なんでしょうね??
私もこれを機会に考えてみたいと思います!

コンセプトマップ、確かにありますね。以前、ラーニングスタジオとは別で、Physics of Toys というワークショップをお手伝いした時に、このアフタースクールサイトに載っているアクティビティをいくつかしたので、そのときに資料としてこれに目をとおすようメールがありましたね。私は「ふ~ん」で終わっちゃったのですが(笑)、こういうの、日本にはないのでしょうか?

コンセプトマップは今のところアフタースクールアクティビティでしかお目にかかったことはなく、館内の展示にはついていません。それぞれの展示には yasukoさんもご存知だと思いますが、What's going on? という説明書きはついていますが。

ラーニングスタジオでもワークショップをする時に、コンセプトマップではないけれど簡単な資料を配ることはあります。やっぱり、この経験を館内だけのものにしてほしくなく、家へ帰ってからも興味をもったこども達が自分ひとりでも探究できるように、と思っているのだと思います。チーム内でよく言っているのは、Low floor, wide walls, high ceiling. (敷居を低く、多様性を確保し、天井を高く)なのですね!入り口を低くしてどんな子も「楽しい」と思えるようにし、学びたい子にはそれなりに天井を高くしてあげる、という配慮がいいですよね。でもマップだと押し付けがましくなくていいですね。

>楽しいけどほとんど何も残らないか、学べるけど難しいか。

笑。
ミュージアムというインフォーマルな学びの場においては、たのしいことがまずは一番大切だと思います。

>大学と組もうと思ったのはどうしてですか?
私は日本では、京都のけいはんな学研都市にある CAMP(Children's Art Museum and Park)というところでスタッフとして働いており、大学との連携も私の仕事のテーマでした。同志社大学さん、同志社女子大学さんと、共同でフィールドワークという授業をしたり、プロジェクト科目という授業を担当していました。特定の教科を教える場として、というよりは、私はワークショップという共同の「ものをつくる」学びの場が、その「場」をつくるスタッフにも、参加するこども達にも、大きな学びをもたらすと思っていました。実際、ひとつのワークショップを1から準備するプロセスは教育実習等では体験できないおもしろさがあると感じました。ワークショップって1人ではできないですし、チームワーク、コミュニケーション、実際に手を動かして準備を「確実に」前に進めていく力も必要ですし、高校の文化祭の準備に似た雰囲気がありますが、少し大人になった大学生という立場の青年たち(?)に、実際にこども達を前に自分たちが運営していかなければならない「場」を与えるということ、それが大学の授業であるというのはユニークだなぁと思いました(このへんは同志社大学さんの取り組みがユニークなんですね)。どの学生も本っ当に熱心に取り組んでいましたよ。おそらくyasukoさんが今進めていらっしゃる東大の工学部学生と授業をつくる、というプロジェクトでも学生さんとっても熱心に取り組んでいるのではないかなぁと想像しています。

私個人的には、小学校の頃にテーマは何であれワークショップという双方向の学びの場でたくさんいい経験をしたこども達が、中学校、高校を経て、大学生になったら今度は自分たちがワークショップをする側にまわる、というひとつのラインとなったらいいなという思いがありました(本当は中学校、高校でもワークショップ的な学びの場があるといいのですが、なかなか塾や予備校、学校の授業もぎっしりで大変ですよね)。それに、ファシリテーターが大学生だとこども達との距離が近くてよかったですよ。年齢のせいでしょうか(笑)。京都で働いていた頃は、ファシリテーターの年齢層が幅広く(それこそ定年退職された大ベテランの方とか)、こんなにバラエティにとんだ年齢層でみんなが1つの場で学ぶって素敵だなぁと思っていました。ワークショップという場に1人の「先生(=教える人)」は必要なくて、“一緒に考えてくれる”複数のお兄さん、お姉さん、おばさん、おじさん、おじいさん etc が必要なんだなぁと個人的には思っています。そういう場を人工的につくらなければならない今の時代もなんだかなぁ、、、と思いますが(苦笑)。学校の授業とは違って一回きりで単発で終わってしまうワークショップに深い学びを求めるのは難しいですが、「やったー!」という感動や「わぁ!」という驚きがこども達の心に残ってあとあと何度も思い出すような、そんな一期一会のワークショップができたらいいですね。

好きだった仕事を辞めて渡米し、これからどうしようかなーと考えていたところに、エクスプロラトリアムのラーニングスタジオに出会い、知れば知るほど共感する部分が多く、今こうして末端でも関わらせてもらっていることに本当に感謝です。そんな日々の中でこのグループが目指すものや、エクスプロラトリアム全体が目指すもの、自分なりに考えて言葉にしていけたらなぁと思っています。
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