図書館の棚の中に、ふとこの本をみつけて借りて来た。
「少年A」とは、1996年に起きた「神戸連続児童殺傷事件」の当時14歳だった犯人のことである。
この事件は、いまだかつてない猟奇的な殺人事件であり、さらに犯人が中学3年生だったということで、今でもその当時の衝撃は忘れることができない。そして、1999年に、この本が出版されたが、当時は特に読もうとは思わなかった。
図書館のこの本は、年数も経ってはいるものの、確かに多くの人に読まれたであろうページの汚れや乱れが見受けられた。
この本を手に取ってみて、それがその少年の父母の手記であることに注目した。そんなに自分と変わらない年齢のはずであり、親としての心境はどんなに辛いものなのだろうかと思った。
そして、昨夜から今日の昼までに一気に読み終えた。
この少年は、私の子供よりも3歳年上であり、この少年の下に2人の弟がいたことがわかった。そうすると、うちの子たちは、この家の下の子たちと同じくらいの年代である。
そして、殺された児童たちもまた、同じような年齢だったので、当時は他人事ではなく感じたのも当然だ。
少年の両親は、少年が起こしていた事件について、その犯行の前にも後にも、少年Aには、その気配や普段と変わった様子さえまるでなかったために、全く気付いていなかったということだ。殺害された少年淳君は、末の弟の友達だったそうだが、まさかAがしたとは思いも及ばなかったという。
しかし、Aは小6の時に万引きをしたことから始まり、中学になってからは、次第に暴力などの問題を繰り返すようになり、友達にケガをさせたりしたため、母親は何度も学校に呼び出されて対処したりしていた。そして、児童相談所に通ったりしており、最後の事件を起こす頃には不登校となっていたそうだ。あとになってみれば、予兆は確かにあったと言える。
動物を殺したり物を万引きしたりは親の知らないところでエスカレートしていた。
精神異常ではないというが、精神的な歪みがあったことは確かである。
人の痛みを察することができなかったり、人や動物の命を物体としてしか捉えられないなど、生まれながらにしての異常性もあるだろう。知能指数が70で正常範囲とはいうものの、これはちょっと低めであり、成績も悪かったそうだ。そのため、何らかの思考回路の欠如などがあったかもしれない。
また、Aは母親が好きなのに、強い憎しみも抱いているという部分では、年子で弟が生まれて母親の関心が弟にむけられたこともあり、小さいうちから愛情不足になっていたと考えられる。
そして、Aが弟をいじめると、母親が「自分より小さい子を虐めてはいけない」と言って、お尻を叩いて叱ったという。小さいころはそういう日常が続いていたそうだ。祖母はAに対して優しかったが、祖母が亡くなった後、Aはさらに疎外感を感じたのかもしれない。
さらにAには、直観像素質の力があり、目で見たものを像としてそのまま記憶してしまう能力がある。自分の興味のあるものであれば、書物のページの文章をそのまま記憶してしまうし、写真なども記憶できるのであろう。私が思うには、このような場合、ホラー映画や残虐シーンなども一般人より強く脳裏に焼き付いてしまうので、子どもの時代にそういうものを見ると悪影響があるかもしれないと感じた。
色々なことが重なって、不幸にもひどい事件を起こすことに至ってしまい、残念なことだ。
この事件を機に、弟たちは両親から離れて遠くで暮らしたり、両親も戸籍上離婚したりなどして、もう同じ場所で普通に生活を続けることはできなかった。
両親は、なぜこんなことが起きてしまったのか、どうしたら良いのか、どうしたら加害者側として償えるのか、というところで何も解決されないままこの本は終わっている。
・・・
その後、少年はどこまで更生できたのか。懲役は13年であり、府中の関東少年院に収監されていた。その後東北のほうに移送されたりもしたらしいが、出所して既に12年が経っているそうだ。
出所後も世間に取り上げられたことがあった。それは少年Aが「絶歌」という本を大田出版から出すという問題だった。その収入を少年Aが得ると言うことの問題、また犯行を犯したAの本質は変わっていない等の情報が飛び交っていた。
そして、現在のAの姿などという記事も週刊誌に出たりしていたようだ。
今回読んだ本の中には、事件直後、自宅に押しかけるマスコミのことが書かれていた。
家族は、そういうマスコミに恐怖を感じ、すべてやり過ごさないといけなかった。
この本は「文芸春秋」社のものである。
その印税は被害者への補償にしたとのことである。
少年Aの出所後の姿が撮影され、それを載せていた週刊誌は、「週刊文春」である。
これも文芸春秋社の出版物であり、それは事件後に容赦なく押し掛けたマスコミの態度と変わらないように思える。
マスコミは、いったい何を伝えようとしているのだろうか。
この事件については、被害者(淳君・彩香ちゃん)のご家族の手記の出版物もあり、その人たちの発信も読まなければ、いけないように思った。
しかし、この事件に関する内容を読めば、少なからぬストレスがのしかかってくるのはわかっているので、読むのには覚悟がいる。
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