山本飛鳥の“頑張れコリドラス!”

とりあえず、いろんなことにチャレンジしたいと思います。

「賞味期限まで」(桐生典子)

2006-02-06 18:48:05 | 読書
一言で言えば、「ドタバタ劇」だった。

主人公、安美がドラッグストアが好きで、ドラッグストアで何か買わなければいられないような精神状況になっていることは、ひとつの現代病のようである。
この作品に出てくる安美の家族は、近頃よくある典型的な家庭とも言える。
子供がすでに高校以上の年齢になると、家族はそれぞれ個人主義になって、勝手に暮しているような状況となる。

この作品でも、やはり夫婦は長続きするものではないという作者の考えが根底に流れているようである。若くして恋愛結婚した安美の父母も年を重ねると別の相手に引かれ、それぞれが愛人を持っているような状況である。
結婚相手でも愛人でもどっちにしても男女の仲と言うのは賞味期限があるようである。

両親にはそれぞれ愛人がいて、娘には知り合ったばかりの一目ぼれの男がいて、弟は家に寄り付かず自由にしている。親子は親と子ではなく友達のようである。そして、家族がてんでに自由に振舞って、混沌としている、あるいは崩壊しているとも言える家庭のようすがよく描かれている。今、多くの家庭が多かれ少なかれそんな要素を持ち合わせていると思う。家族の賞味期限も切れかかっているのかもしれない。
それで、なんかいやな気分になる。

匂いや汚れや病気や栄養失調やばい菌や、いろんなものに対処するために、ドラッグストアにはいろいろなものがあって、現代人はそれに頼る。
そういうもので対処すればなんとかなると思っているのだ。
しかし、すべてに賞味期限はやってくる。
賞味期限がないのは自然だけだ。

恋人の心にも、なついていた猫にも賞味期限があるなら、
その期限がきれるのを体験したくないと安美は思ったのだろか。
最後の場面は理解に苦しむ。
線路近くの工事現場に九条を突き落としてしまったのだろうか?

いやな気分が残る作品だ。

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