ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/02/21 「京鹿子娘二人道成寺」で胸打たれたこと

2006-02-25 23:54:00 | 観劇
二月歌舞伎座2/21夜の部でついに玉三郎・菊之助の「二人道成寺」を観ることができ、短い感想だけアップしておいたその記事はこちらが、1回しか観劇できずにとても残念。しかしながら他にも手広く観劇予定を入れてしまっていたので幕見もかなわず。

1回だけの観劇であったが、特に印象的だったことについて書いておきたい。
上記の記事の前に菊之助の舞台写真写りが悪いことから彼の顔のメイクについても勝手に書き散らしてしまった。心配だったそれを花道からの登場でまずチェック!そうしたらメイクが変わっていたようでとってもいい顔になっていて安堵!!夢の世界にすーっと入っていけた(「真ん中な日々」のまこさんから、月の後半からのメイクが変わったというコメントもいただきました。感謝、感謝ですm(_ _)m)

舞踊ではまだまだイヤホンガイドの力も借りる私だが、今回は若い菊之助が玉三郎の胸を借りてつとめる舞台というように紹介されていた。「二人道成寺」は演じ方もいろいろあるらしいが、玉三郎の解釈で一人の花子の分身のように演じられているとのこと(以下、玉さん、菊ちゃんで表記)。だからまず菊ちゃん花子ひとりが花道から登場するのねと納得。分身の方の玉さん花子が花道のスッポンから登場してきて花子が二人揃って舞い始めた瞬間から身体にゾクゾク感が走る。

ふたりとも容姿端麗で所作も美しい。さらに1+1=2ではないことがはっきりと見てとれる。ふたり並んでひざまずき懐紙を鏡に見立ててのお化粧の所作のところなどは仲のよい姉妹のよう。玉さんは妹を気遣うような素振りがあちこちで見られる。
若い菊ちゃん一人の場面もしっかりとつとめている。まず山門のところで菊ちゃん花子がひとりで所化たちに「鐘を拝ませて」という場面、鈴を転がすような美声。これは玉さんよりも声が綺麗だと思ってしまった。
舞姿もそれぞれに個性的。菊ちゃんはちょっと硬いなあと思う時もあるが、キビキビと若さあふれる動き。玉さんは悠然とした動きだが、緩急のメリハリがきいている。特に菊ちゃんの若さを押し出したいと思われる場面では玉さんは少し抑えた動きをしているようにも見えた(鞠つきや海老反りの場面など)。

しかしながら一番大きな違いは二人の表情だった。菊ちゃんはまだまだ余裕がないのか顔の表情の変化が少ない。鐘に怨みの気持ちを見せる決めの場面が何箇所かあるが、玉さんは怨みのこもったきっとした目になっているのに菊ちゃんは睨んでいるくらい。さらに後になればなるほど玉さん花子の怨み目は蛇というか般若度が増していくのがはっきりわかる。そして、最後の鐘に上った後の場面で私は唸ってしまった。玉さん花子は怨み目の表情で上りきるとふっと微笑みを浮かべ、そこからまたさらに凄みのきいた怨み目を見せて決まるのである。その微笑みは?!所化たちの制止もふりきってついに鐘を占拠でき、してやったりと微笑んだのだろうかと思ってしまった。一方の菊ちゃんは、鐘に上って身体の方はしっかりと固定できて余裕ができるとだんだんだんだん目をすごませていっていた。これだ~、20代と50代の経験の違いはここだ~と痛感。さらに玉さんは菊ちゃんを慈しむような表情が何度も見てとれた。自分を慕って必死についてくる見込みのある若手を育てようという慈母観音のような表情。こうして芸は伝承されていくのだろうと見ていて胸を打たれるような瞬間があった。
一回しか観ていないというのに、とにかく眼福、至福、一生の宝物の舞台となってしまった。一回しか観ていない分、玉三郎舞踊集のDVDを買ってしっかり流れも頭に入れて再再演に備えようかという気持ちになってきている。

写真は玉三郎舞踊集のDVD。バラで買おうかセットで買おうかという悩みに進化しつつあるのであった。