メキシコの俊英マイケル・フランコが監督と脚本を担当し、第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてグランプリとなった珠玉の物語。新たに引っ越した場所で淡々と日々を送っていたものの、突如娘が行方が不明になり、ある決断を下す父親の姿を描く。『あの日、欲望の大地で』のテッサ・イアが娘を演じ、父親をメキシコのテレビを中心に活躍するエルマン・メンドーサが好演。静かながらも情感あふれるストーリーが心の奥深くに染み込んでいく。
あらすじ:妻を亡くして失意の底にいるロベルト(エルマン・メンドーサ)と娘のアレハンドラ(テッサ・イア)は、メキシコシティへと移り住む。二人は見知らぬ土地で再スタートを切ろうとするものの、なかなか喪失感から逃れられずにいた。アレハンドラは転校先の学校で友達もでき、少しずつ明るさを取り戻していくが、ある日、盗撮された性行為をインターネットで流され……。
<感想>復讐という言葉には、何か得体の知れない誘惑的なイメージがある。メキシコの新鋭監督マイケル・フランコの第二作「父の秘密」はそんな復讐のドラマである。
この作品も未成年の虐めや性犯罪にあたる映画だと思うのですが、こちらは、韓国版と違って母親が交通事故で亡くなり、父親と娘が引っ越しをして新しい生活をするという設定。
そこで娘は転校生ということもあり、始めは仲良く友達と上手くいっていたように思われたのに、ヒロインが虐めに遭う。その虐めの信じがたいほどの陰湿さといい、ラストの暴力といい、さながらドキュメンタリーででもあるかのようだ。
ある日のこと、男友達の別荘へ遊びに行き、そこでマリファナやお酒を飲んで、その勢いでトイレで男のホセくんとセックスをしてしまいました。それが、その一部始終を彼氏がケータイの動画に映していたんですね。そのことは、彼女も知っていたようです。
ところが、そのホセとの性行為の動画がネットに流されて、学校中に広まってしまい、彼女はみんなの虐めの対象にされてしまう。ヤリマンとか売春婦とかいろいろ言われ、挙句に女友達の家でスケスケの洋服を着せられて、髪の毛を切られ、誕生日の日には、学校の教室でまずいケーキを強引に口の中へ入れられてしまう。やられたらやり返せばいいのに、と単純に解決する事態でもない。父親に相談して学校を変えるか、叔母さんの家へでも移るかしないとダメですよ、これは。しかし、彼女は激しく泣き叫んだり、怒りに震えることもない。
そして、行かなければいいのに、学校の行事の旅行へも行ってしまう。これは絶対にみんなの虐めの好都合の場所だし、部屋のトイレに閉じ込められて、デブの男や他の男にもレイプされて虐められる。
酷いのは、夜になり海へ行き、焚火の前で酒を飲みマリフナを吸い、男どもが彼女におしっこをかけて、身体が臭いから海で洗えとばかりに海へ飛び込ませる。いっこうに海から上がってこないアレハンドラをそのままにして、翌朝やっと先生や警察、父親に電話するという痛ましい事故になる。
しかし、彼女は泳ぎが上手いし絶対に溺れて死んではいないと思ってました。案の定生きていて、バスで元いた家へ一人で行き、そのまま海へ行くのです。そこで彼女の行方は消えてしまいます。ですが、学校や警察の態度が未成年だし、酒やマリファナを吸って海へ飛び込んだのでは、娘さんの方にも落ち度があると相手にしてくれません。
これでは、父親の怒りは収まりませんよね。韓国版の「母親なる証明」ではないですが、父親が娘の一部始終を知り、その無念さを知り、仇を討ってやるとばかりに、一番の首謀者らしき男の子を拉致して、ボートに乗せて両手足を縛った男の子を海の中へ捨ててしまいます。
父親の復讐さえも静かに実行され、連鎖する暴力そのものに乱暴に向き合わされます。そのシーンが、一切台詞もないし、音楽もなく淡々と進むので、父親の心情をこれで表しているかのようでした。長回しのラストシーンは、何の答えも残してくれません。不穏な空気に満ちてその演出の極めてクールなタッチが際立っていると思います。
2014年DVD鑑賞作品・・・36 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:妻を亡くして失意の底にいるロベルト(エルマン・メンドーサ)と娘のアレハンドラ(テッサ・イア)は、メキシコシティへと移り住む。二人は見知らぬ土地で再スタートを切ろうとするものの、なかなか喪失感から逃れられずにいた。アレハンドラは転校先の学校で友達もでき、少しずつ明るさを取り戻していくが、ある日、盗撮された性行為をインターネットで流され……。
<感想>復讐という言葉には、何か得体の知れない誘惑的なイメージがある。メキシコの新鋭監督マイケル・フランコの第二作「父の秘密」はそんな復讐のドラマである。
この作品も未成年の虐めや性犯罪にあたる映画だと思うのですが、こちらは、韓国版と違って母親が交通事故で亡くなり、父親と娘が引っ越しをして新しい生活をするという設定。
そこで娘は転校生ということもあり、始めは仲良く友達と上手くいっていたように思われたのに、ヒロインが虐めに遭う。その虐めの信じがたいほどの陰湿さといい、ラストの暴力といい、さながらドキュメンタリーででもあるかのようだ。
ある日のこと、男友達の別荘へ遊びに行き、そこでマリファナやお酒を飲んで、その勢いでトイレで男のホセくんとセックスをしてしまいました。それが、その一部始終を彼氏がケータイの動画に映していたんですね。そのことは、彼女も知っていたようです。
ところが、そのホセとの性行為の動画がネットに流されて、学校中に広まってしまい、彼女はみんなの虐めの対象にされてしまう。ヤリマンとか売春婦とかいろいろ言われ、挙句に女友達の家でスケスケの洋服を着せられて、髪の毛を切られ、誕生日の日には、学校の教室でまずいケーキを強引に口の中へ入れられてしまう。やられたらやり返せばいいのに、と単純に解決する事態でもない。父親に相談して学校を変えるか、叔母さんの家へでも移るかしないとダメですよ、これは。しかし、彼女は激しく泣き叫んだり、怒りに震えることもない。
そして、行かなければいいのに、学校の行事の旅行へも行ってしまう。これは絶対にみんなの虐めの好都合の場所だし、部屋のトイレに閉じ込められて、デブの男や他の男にもレイプされて虐められる。
酷いのは、夜になり海へ行き、焚火の前で酒を飲みマリフナを吸い、男どもが彼女におしっこをかけて、身体が臭いから海で洗えとばかりに海へ飛び込ませる。いっこうに海から上がってこないアレハンドラをそのままにして、翌朝やっと先生や警察、父親に電話するという痛ましい事故になる。
しかし、彼女は泳ぎが上手いし絶対に溺れて死んではいないと思ってました。案の定生きていて、バスで元いた家へ一人で行き、そのまま海へ行くのです。そこで彼女の行方は消えてしまいます。ですが、学校や警察の態度が未成年だし、酒やマリファナを吸って海へ飛び込んだのでは、娘さんの方にも落ち度があると相手にしてくれません。
これでは、父親の怒りは収まりませんよね。韓国版の「母親なる証明」ではないですが、父親が娘の一部始終を知り、その無念さを知り、仇を討ってやるとばかりに、一番の首謀者らしき男の子を拉致して、ボートに乗せて両手足を縛った男の子を海の中へ捨ててしまいます。
父親の復讐さえも静かに実行され、連鎖する暴力そのものに乱暴に向き合わされます。そのシーンが、一切台詞もないし、音楽もなく淡々と進むので、父親の心情をこれで表しているかのようでした。長回しのラストシーンは、何の答えも残してくれません。不穏な空気に満ちてその演出の極めてクールなタッチが際立っていると思います。
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