パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

トーク・トゥ・ハー ★★★★

2016年11月28日 | DVD作品ーた行
昏睡状態の女性と彼女を愛する男性、2組の姿を描く異色ラヴ・ストーリー。監督・脚本は「オール・アバウト・マイ・マザー」のペドロ・アルモドヴァル。出演は「マルティナは海」のレオノール・ワトリング、新鋭のハヴィエル・カマラ、アルゼンチンで活躍するダリオ・グランディネッティほか。2003年アカデミー賞オリジナル脚本賞、ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞ほか多数受賞。
あらすじ:病室のベッドで昏睡状態にあるアリシア(レオノール・ワトリング)は、看護士のベニグノ(ハヴィエル・カマラ)により4年間世話されてきた。バレエ・スタジオで踊るアリシアの美しさに魅せられたベニグノは、彼女が交通事故に会って以来、自ら献身的な看護を志願したのだった。
一方、女闘牛士リディア(ロサリオ・フローレス)も、競技中の事故によって昏睡状態で入院していた。彼女の恋人のマルコ(ダリオ・グランディネッティ)は絶望に陥っていたが、ベニグノと互いの境遇を語り合ううち、二人に厚い友情が生まれていく。
だがベニグノの盲信的な愛は、アリシアを妊娠させるという事態に発展する。8カ月後、リディアが死んで埋葬された頃、ベニグノはレイプの罪で投獄されていた。マルコはベニグノに面会し、彼の頼みでアリシアの現在について調べる。するとアリシアは、子供は死産となったものの自分は奇跡的に回復し、ダンス教室に松葉杖をついて姿を見せていた。しかしベニグノはそれを知らないまま自殺。マルコとアリシアは互いに惹かれ合っていくのだった。(作品資料より)

<感想>この作品のラブは現実的な愛じゃない。屈折して苦々しく、辟易するほど自己中心的で、完璧な作りごとのように思われる。だが、嫌な気分にすらなりながら、しかし何故か惹きつけられる。いくら否定したくても、アルモドバルのペースにハマってしまうのだから。

植物状態のアリシアとリディア、彼女たちにかかわる2人の男。ベニグノとマルコ。4人の関係が描かれ展開していく物語。中でも、献身的な介護を通し、自分だけの完璧した愛の世界を作り上げるベニグノのドラマは、まさに壮絶というべきもので、ここぞとばかりに監督アルモドバルの演出の腕が冴えわたる。

そのどこか仰々しい節まわしはそのままエスカレートしていく。だからなのか、映画的テンションは保たれ、ベニグノの動作や言葉からは、一つの真実が浮かび上がる。
そして劇中劇として作られた、オリジナルのサイレント映画「縮みゆく恋人」で、緊張感は最高潮に達するのだ。この映像は、素晴らしい出来だと思います。ベニグノの倒錯と妄想、夢想、現実を一体に包みこみます。

とはいえここまでは、物言わぬ相手への自己満足的な感情を描くに過ぎぬようにも見え、それに、言ってみればこの設定は、非常に体のいい比喩でしかなく、それをやってのける監督アルモドバルの、巧妙な自分の悪いところをわざとさらけ出す悪趣味と意地悪さを感じてしまった。だからなのか、正直かなり長い時間、嫌な気分の悪さが続いた。だが、本当の愛の物語が、倒錯の後にやってきてくれた。
それぞれ愛する女を失った2人の男、ベニグノとマルコの間に通う愛情こそが、本当の希望に映って見えた。これでやっとほっとする。2人は互いを認め合い、語り合える唯一の親友になるのだから。きっとこの映画は、2人の男のこの一瞬を描くためのものなのだ。
だが、無情にもそんな2人の間にすら、1枚のガラスの壁を置く。2人は果てしなく近くにいるのに、触れ合うこともないのだから。あの手この手で孤独を強調する意地悪さを恨めしく思う。
崇高か不謹慎なのか、それとも究極の愛か悪趣味なのか、見る人によっては監督の完璧に近いそのテクニックに称賛する方もいるのでは?・・・私にはとてもそうは思えなかったから。

2016年DVD鑑賞作品・・・66映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング