パピとママ映画のblog

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コズモポリス ★★

2013年05月29日 | か行の映画
『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンが、一日にして破滅へ向かう若き大富豪を演じるサスペンス・スリラー。人気作家、ドン・デリーロの小説を基に、『クラッシュ』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』などの鬼才、デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化。共演には、ジュリエット・ビノシュや、ポール・ジアマッティ、マチュー・アマルリックなど一癖ある実力派キャストたち。過激な作風のクローネンバーグ監督が自身にぴったりのテーマを鮮烈に切り取り、観る者に大きな衝撃をもたらす。

あらすじ:28歳という若さで巨万の富を手に入れたニューヨークの投資家のエリック・パッカー(ロバート・パティンソン)。白いリムジンの中で金を動かし、天国と地獄が隣り合わせで一瞬先は闇という投資の世界に生きながら、一方ではセックスの快楽に夢中になっていた。しかし、エリックの背後に暗殺者の影が忍び寄る。さらに、自分自身わかっていながらも、破滅の道へと歩みを進めるエリックは……。
<感想>「ベラミ」では美貌の色事師を演じ、そしてこの作品では、暴動でごった返すNYの大渋滞に巻き込まれた、白いリムジンの中にいた投資会社を経営する青年エリックが、破滅へのと向かう若き大富豪という、新たなチャレンジを続けるロバート・パティンソン。特に今回は監督が鬼才として知られるデヴィッド・クローネンバーグだけに、ロブ様の新生面が期待できる。しかしだ、映像化が不可能と言われたドン・デリーロの同名小説が、クローネンバーグによって映画化されたもの。
すべてが欲しい、何もかもと、侵略するかのように買占めに走り、仕事相手も謁見式のように様々な客が入れ替わりリムジンの中に乗り込んでくる。まるで現代の王様のような存在の28歳のエリック。しかし、誰にも理解されない孤独と虚しさを埋めるために、ひたすら刺激を求めていく。

会社創立時からの部下シャイナーや人民元のチャート作りをする若い男と雑談を交わし、年上の愛人ディディ、ジュリエット・ビノシュとはカーセックスを楽しむ。ところ選ばず女たちと情事を重ね、女シークレットサービスとの情交の後に、「俺のDNAを痺れさせてくれ」とスタンガンの電撃をせがむほどに彼は、生の実感に飢えているのだ。渋滞に閉じ込められたリムジンの中でのエリックの性行為は、まるで「クラッシュ」を見ているようだし、飛び交う暗号のような株式の専門用語や、彼自身の内面の空虚さを埋めるように繰り返されるうんちくも、まるで「裸のランチ」のカットアップのようでもある。

ジョギング姿のシングルマザー(サマンサ・モートン)と論争しながら医師の身体検査を受ける。その合間には、これも富豪一族出身の新妻エリーズ、サラー・ガドンとランチ。しかしエリックはこの日、人民元の値動きを予測できず、全財産を失うほどの損失をこうむっていた。人民元の下落で破産の危機に直面しても、「俺は今とても自由を感じている」と解放されたかのように微笑む。

妻のエリーズからは破局を宣告され、おまけに警護官から暗殺者に狙われているという報告も入った。その警護官を射殺してしまうとは。昔から通っている散髪も途中でやめてリムジンを帰したエリックに、ついに暗殺者の銃弾が襲い掛かるが、彼は逆にその男、ポール・ジアマッティの部屋へ乗り込んでいく。

エリックはハイテク装備のリムジンから世界を見通す神であり、排泄もセックスもすべてリムジンの中で行う。このリムジンは虚無を象徴するバーチャル空間なのだ。彼はやがて車外へ飛び出し破滅的な運命にあうのだが、そこで見過ごしてはいけないのは、彼が終盤、彼の命を付け狙う暗殺者との2人の思考が交錯する原作の構成を、エリック1人の視点にまとめあげることによって、より彼の癒しがたい孤独を浮き彫りにしているようだ。エリックが、ついに拳銃にふれた瞬間に、自分の手を拳銃で撃ちぬく。それはスクリーンを支配するイノセントすぎる興奮のほとばしりに見える。そして、ジアマッティに拳銃を突きつけられる最期は、それは虚無を狂気で瞬時に飲み込むクローネンバーグならではの映画的演出なのだろう。

エリックのよりどころである資本主義の終焉を告げるような、リーマンショックやウォール街占拠デモを想起させるリムジンの車外に展開される暴動のイメージも、原作のビジョンを見事に具現化していると思われる。だが、観る側としては、まったくもって意味不明で自分の頭の中で解釈ができないのだ。されとて、ドン・デリーロの小説も読む気にならないのだ。
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