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アラビアの女王 愛と宿命の日々★★★

2017年03月18日 | アクション映画ーア行
ドイツの巨匠ベルナー・ヘルツォーク監督のメガホンにより、「砂漠の女王」と呼ばれたイギリス人女性ガートルード・ベルの半生を、ニコール・キッドマン主演で描いた伝記ドラマ。20世紀初頭、イギリス鉄鋼王の家庭に生まれ、オックスフォード大学を卒業したガートルード・ベル。イギリスの上流階級の生活を捨て、アラビアへと渡った彼女は、イラン、ヨルダン、シリアなど約2500キロにもおよぶ旅を続け、各地の部族と交流。やがてイラク建国の立役者として尽力した。アラビアの地で砂漠に魅せられ、波乱に満ちた半生を送る主人公ベルをキッドマンが演じるほか、ジェームズ・フランコ、ロバート・パティンソン、ダミアン・ルイスらが脇を固める。

<感想>実在の人物がモデルなこともあり、家族や恋愛もあれば政治も絡むが、とにかくニコール・キッドマンありきの映画で、彼女が常に気品に満ちた立ち居振る舞いと情感豊かな表情で力強く演じている。堂々たる佇まいと演技力というか、いつも彼女の演技ですが、実在した「砂漠の女王」の再現であり、映画全体のテーマを表している。
白い服で砂漠が舞台となると、どうしてもヘルツォーク監督作品の、初期の傑作である「アギーレ/神の怒り」や「フィツカラルド」のキンスキーの女性版と比較したくなる。ですが、「アラビアのロレンス」とは大違いですから。

物語の展開では、ガートルード・ベルはペルシャの地で、三等書記官ヘンリー・カドガン(ジェームズ・フランコ)と恋に落ちるのです。二人は結婚を約束するのですが、彼女の父親は猛反対して、彼女をイギリスに呼び戻してしまう。そして、ほどなくしてカドガン書記官は煩悶の末、自殺してしまうという結果に。
というところから始まる話は、その後、失意のガートルードが、カドガンとともに愛したアラビアの砂漠を旅するうちに、アラブの族長たちと懇意になるが、二度目の恋にも破れてしまうという展開になる。
史実を基にしているとはいえ、エピソードが時間的にどんどん跳びまくり、ですがそれは殆ど気になりません。いい意味では大味なのだが、この監督の持ち味と思うが、益々その傾向は強まっているようだ。

この監督は、フィクションとドキュメンタリーを行き来する作家でもあるが、実在の人物をモデルにした本作では、ニコール・キッドマン自身についてのドキュメンタリーにもなっていると思う。
実生活では自然に逆らうほどの美意識と洗練さを装う一方で、フィクションの上では野蛮な役柄を好んで演じたがる。ですが、自然の脅威に挑む人間の情熱や狂気はあまり感じられない。彼女の精神性を堪能するには、うってつけの映画ですね。

ラブロマンスに重点を置いたのも、ヘルツォーク監督らしくないと思った。しかし、ジェームズ・フランコがロマンチストの公使館員で熱演、ダミアン・ルイスが誠実な軍人役をと、それぞれ好演。ですがアラブ人とは恋に落ちないのが残念ですよね。期待していたのに。
ヘルツォーク監督はそうした伝記的事実には比重を置かず、ただ砂漠を愛してそれに徹した人物を描いている。力作ではバッド・ルーテナント狂気の行方」の方に、彼の新しい境地を感じるのだが。
吹きすさぶ風が砂を飛ばし、風紋ができた砂漠をワイドにとらえており、刻一刻と変える砂漠の表情を鮮烈に映し出しているのが素晴らしい。

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