パピとママ映画のblog

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アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台★★・6

2022年08月22日 | アクション映画ーア行

          

刑務所の囚人たちに演技を教えることになった俳優の奮闘を描いたフランス発のヒューマンドラマ。スウェーデンの俳優ヤン・ジョンソンの実体験をもとに、実在の刑務所で撮影を敢行した。あらすじ:売れない俳優エチエンヌは、刑務所の囚人たちを対象とした演技ワークショップの講師を依頼される。サミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を演目に選んだ彼は、一癖も二癖もある囚人たちに演技を指導していく。エチエンヌの情熱はいつしか囚人たちや刑務所管理者の心を動かし、実現は困難とされていた刑務所外での公演にこぎつける。彼らの舞台は予想以上の好評を呼んで再演を重ねることになり、ついには大劇場パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届く。「クイーンズ・オブ・フィールド」のカド・メラッドが主演を務め、「アルゴンヌ戦の落としもの」のエマニュエル・クールコルがメガホンをとった。2020年・第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション。

<感想>刑務所の中では、日本では家具製作やミシンでの縫製とか、出所してからのことも考えて手に職を教える。こちらは、フランスでの刑務所の囚人たちを対象とした演技ワークショップであり、先生として今はあまり仕事のなくなってしまったコメディアンの、エチエンヌが演出を手掛ける物語。囚人たちが俳優として「ゴドーを待ちながら」を劇場で演じるのである。

スウェーデンで起こった実話らしいが、ヨーロッパのこの辺りの感覚のピンとこない感じや、娯楽として囚人たちの毎日に活性化を試みるわけ。しかし、囚人たちはあまり乗り気ではなく、演劇経験なんてまるでない人たちが、嫌々ながら暇つぶしに演じているみたいだった。

本当の囚人たちが演じるのではなく、役者が囚人の役を演じているのが分かる。最初はエチエンヌがひたすら囚人たちを、これは決して囚人たちの過去で判断するのではなく、目の前にあることから新たに関係性を築き上げていこうとする心意気に魅了された。

刑期中の囚人たちなのに特例で、塀の外のホールで舞台上演するというのだ。それが評判を呼びまくった挙句に、チラシに「予想外のラストがあなたを待っている」なんていう、なんか捨て身極まりない売り文句に踊らされてしまう観客たち。確かにその通りだったのだけれども、それを芸術として讃美するということは決してありませんから。

最後に、囚人たちは自由が欲しくて逃げたのではないのだろう。きっと、観客の前でのプレッシャーに耐えきれなくて逃げたのだと思う。それに、この囚人たちが逃げたことを題材にした演劇が作られ、上演されているという。そこんところが、なんて素晴らしいんだろうと思った。大舞台を成功させれば、刑務所を出た後の人生も変わってくるとは思うのだが、そもそも何らかの犯罪を犯して刑務所に入っているわけだから、人間は中々変わることができないということ。

特に、公演後に酒飲んで全裸で騒いでいるのは、やりすぎですよ。自由になりたかったら、懲役を全うしろって話ですよ。それで、パリのオデオン座から公演依頼がきて、全裸で騒いで懲罰房に入れられたみんなも、なんとか集めて、最終公演に出演します。それに囚人たちは、最後の公演の直前に逃走するわけですが、やっぱりそうきたかと、いつか逃げ出すねという感じがしました。

ですが、ちょっと腑に落ちなかったのが、囚人たちが逃げ出して、エチエンヌが一人でこれまでの経緯を観客たちに話すわけですが、最後の一人芝居の位置づけ方も的外れの気がする。そこで観客たちから拍手喝さいを浴びます。これはどうして観客は拍手をしたのでしょうか。最後に逃走するような囚人たちを、これまでまとめ上げてきた彼に対する拍手なのでしょうかね。

それでも彼らの過去の犯罪に触れていないのが良かった。囚人たちがずっと外に出たいと待っていたことが、演劇公演で外へ出れることが、彼らの喜びだったのだろう。

 

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