パピとママ映画のblog

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風に立つライオン ★★★★

2015年03月17日 | アクション映画ーカ行
ケニアで医療ボランティアに従事した実在の医師・柴田紘一郎氏の話に、さだまさしが着想を得て作った楽曲から生まれたヒューマンドラマ。ケニアの病院で働くことになった日本人医師が、心と体に深い傷を負った患者たちと向き合っていく。監督はさまざまなジャンルの作品を世に送り出してきた三池崇史。テレビドラマ「JIN −仁−」シリーズなどの大沢たかお、『幕末高校生』などの石原さとみ、『さよなら渓谷』などの真木よう子らが集結。医療のあり方を見つめた物語に加え、ケニアの雄大な風景も観る者の胸を打つ。

<感想>さだまさしが、1987年に発表した楽曲に着想を得た小説をもとにした人間ドラマです。アフリカで巡回医療に携わった実在の医師をモデルに、現地の少年たちとの交流、日本に残した恋人への思いが情緒豊かにつづられる。
大沢たかおさんが、「解夏」「眉山」に続き、さだまさし原作の映画に出演。
この作品は、「風に立つライオン」の曲を小説化して、さらに映画化したいと持ちかけたのは、他ならぬ大沢たかおさんが自身だったのです。

原作も読みました。冒頭の東北地方大震災の跡地に立つ、ケニアから来たミケ、彼が雪の降る震災の瓦礫の跡地に立ち、手に握りしめているのは“トウモロコシ”の種で、彼はケニアで少年兵として駆り立てられ、足を撃たれてそれでも、切らずに手術をしたのが島田航一郎。
彼の温かい眼差しと優しい心に癒され、麻薬漬けになって少年兵士として銃を持ち、9人もの人間を殺した。そのことを悔やんで涙ながらに自分も医者になりたいと願う。島田航一郎から、「一生かけても10人の命を救え」と言われ、奮起を起こして勉強する。絵が上手くて、ミケランジェロとあだ名を航一郎からつけられる。

アフリカのケニアの実情と、日本の大震災の被災地を組み合わせたのは、今の世界で起きているテロや内戦に目を向けて欲しいという、メッセージなのだろう。何処の国でも、子供たちが犠牲になって大人の勝手な命令に従い、人間としてのモラルや秩序などの教育や愛情を失っていく。

そして、アフリカの大地へと映像が変わる。派遣先での過酷な現実。国境近くの戦傷病院。そこで行われていたのは、壊疽を防ぐための負傷した患者の手足を切断する手術であった。傷が癒えれば、また戦地へと戻り少年兵としてこき使われる。命を軽んじられ、人間として真っ当に生きるすべを知らない少年たち、これではダメだと、病院の隣に孤児院を建てて、看護師の和歌子と一緒に勉強を教えるのだ。

島田航一郎は、シュバイツァー博士のようにアフリカで、大きな理想を胸に研究に従事できると張り切って行ったのに、研究よりも病院不足から内戦での急な患者を受け入れることだった。それに、まだ幼い少年兵たちに何か力に成れないのか、そして、国境付近の地雷源のあるところには、病院へも運ばれずに死んでいく少年たちがいることを知り、自分の命も顧みずに車で出かけて襲撃に遭い、航一郎は命を奪われる。彼の腕にしていたセイコーの時計をみたゲリラの一人の目が忘れられない。

劇中での大沢たかおさんがアフリカの大地に立ち、「ガンバレー」と何度も叫ぶ姿に、これはきっと自分にたいしての叱咤激励ではないかと感じていました。もちろんアフリカの人たちにも声援を送っているのは違いないが、不甲斐ない自分にもっと「ガンバレー」と言い聞かせているのでは。
夕日を見ている姿に、さだまさしの歌が流れて、歌詞の中の恋人との思い出とかが映されていく。恋人の秋島貴子は、離れ島で開業している父親の後を継ぎ、僻地医療に従事することを選ぶのだ。だから、アフリカへ行く島田航一郎の誘いにも躊躇し、自分の選ぶ道は僻地での医療だと。

訃報のしらせが届いた後に、島田航一郎からの手紙が届く。それには、「どうか幸せになって下さい」と書かれていた。貴子には、猟師の鈴木亮平が幼馴染として、いつも見守っている存在感が最高。台風の時に、車で崖崩れに遭遇し、危機一髪のところに亮平が助けに来て、命を救われるというエピソードがいいですね。遠くにいる恋人との叶わぬ結婚も、身近にいる男性と将来を共にすることも大事ではないかと思う。
それにしても、アフリカで、看護師の和歌子との接点もあったのに、現地では子供たちも、先生たちも二人の結婚を望んでいたのに、何故か貴子一筋の彼に一本気で実直な気質が伺われる。

それでも、ラストでアフリカの大地に凛々しく立つ大沢さんの姿に、タイトルの「風に立つライオン」のさだまさしの歌が流れて感動を呼び、観る者の目に涙があふれて来る。日本人って言うのは、どんな危険も顧みないで、困っている人がいれば、突き進んでいくというそんな侍のような真っ直ぐな生き方が素晴らしい。
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