パピとママ映画のblog

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リトル・フォレスト 冬・春★★★

2015年02月27日 | ら行の映画
『重力ピエロ』などの森淳一監督が、「海獣の子供」などで知られる五十嵐大介の人気コミックを実写映画化。都会で生活することに挫折して故郷の山村に戻ってきたヒロインが、四季折々の恵みをもたらす一方厳しさも見せる大自然の中で自給自足の生活を送りながら、再生していく姿を描く。主演は『アナザー Another』『桐島、部活やめるってよ』などの橋本愛。収穫した旬の食材を使って作る素朴な料理の数々も見どころ。
あらすじ:都会から東北の小さな山村・小森に帰郷したいち子(橋本愛)は、自ら農作業に励み収穫した作物や、山菜、木の実など四季折々の恵みを使って日々の食事を作る生活を送っていた。冬は雪に覆われるなど自然の厳しさに改めて直面するも、生きるために食べ、食べるために自分で作るシンプルな暮らしを通じ、自分の生き方を見つめ直していく。
<感想>漫画家・五十嵐大介の同名コミックを、「春」「夏」「秋」「冬」の4部作として実写化し、「夏・秋」(前編)、「冬・春」(後編)の2編にわけて劇場公開する「リトル・フォレスト」の四季四部作の終幕である。

テレビもないし、コンビニだってない。誰もケータイ手にしてないし、娯楽と言えば本を読むことと、自家製のお菓子作りです。それを『アナザー Another』の橋本愛が、農村で手作り生活をするのが、今回は、何やら楽しくなって心地よくなってきたりして。
冬からスタートしたので、一面銀世界の田舎の風景ですが、雪かきをしないと家の前が雪で埋もれてしまう。ですが、屋根の雪下ろしをするまででもないみたい。薪ストーブの上で、焼き芋やいたり、お湯をかけてコーヒー飲んだり、炬燵もあるけど、隙間風がはいるようなボロ屋の民家では、風が強いと隙間風が入り込んで寒そうですね。

それでも、クリスマスには自家製のケーキを焼いてくれたことを思いだし、見よう見まねで自分も焼いてみる。甘酒を入れた小豆の赤と、ほうれん草の緑色の長方形のケーキが結構よく出来ているのだ。それに、黒米を入れた生地にかぼちゃの黄色い生地のパンケーキも美味しそう。
幼い頃の思い出では、お正月に、村の人たちが御餅を搗いていろんな味付けをする。いち子は納豆餅が大好きだという。自分でも家で餅つき機で、餅をつき砂糖をたくさん入れた納豆餅に、餡子もちと雑煮を作って食べる。でも、誰か一緒に食べてくれる人がいたら楽しいのに、殆どがいち子一人の食事です。
春になり、愛ちゃんが畑に立ち土を耕して苗を植えて、草取りをする。それに、春の山を歩き、芽吹いたタラの芽やわらびに、ふきのとう、しどけ、こしあぶらなどを取り、それを仕込んで山菜の天ぷら料理を作る。出来上がった天ぷらを美味しそうに食べる愛ちゃんのほころんだ顔がいいですよね。

そういったシンプルな行動に、その意味や目的を加えたりせずに、ただ彼女の日常として淡々と撮っているからだろう。しかし、若い女性が畑仕事だなんて、良く体を動かして働くのに感心した。キャベツの紋白蝶の話には、害虫だから殺してと言った母親の教えが良く分かる。キャベツの葉にツブツブの緑毛虫の卵がいっぱい付いて、それを必死になって取る愛ちゃんの仕草に感心したり。ちなみに、キャベツのパンはまずそうで、かきあげの天ぷらはいいかも。

母親が家を出て、娘のいち子が都会から逃れて実家の田舎に移り住んで、娘に早くから根本的なサバイバル・スキルを仕込んだうえで、一家解散したのだ。小出しにされていた人物の関係の決着に驚くことは特にはない。生命に直結した健やかさがエロチックでもあり美しくて強い。
ですが、主人公の愛ちゃんの旺盛な食欲の描写が前作よりも減退した分、映画としての魅力も下降ぎみになっているようだ。冬越えをするための薪割りや、凍み大根、干し柿作り、お汁粉やパンの中へ入れるための小豆を畑で作る手間のかかる作業、雪の下への貯蔵野菜、冬は外が雪が積もって買い物に行けないので、自家製の野菜の塩漬けや、すいとん汁を作ったりして過ごす。

食と生活を丁寧に描くことに徹すればいいものを、母親からの手紙で失踪の理由が明かされるかと引っ張っていき、それが何も描かれてないので肩すかしをくらってしまう。
それに、母親と同じように、田舎の暮らしに嫌気がさしたのか、いち子も田んぼも畑も放り出して、家を出ていき都会で暮らすのだ。
街のスーパーで働くいち子が、米や畑で野菜を作っていたのを持っていき、そこへ手弁当を持ってお昼を食べていると、男の友達ができて、次の日にその男の弁当も作り持って行ったのに、その男が陰で手作りのマフラーとか弁当とかいらないと、言っているのを聞きガッカリして落ち込むいち子。

田舎では、幼馴染の男がいち子の家に始終顔を出して、いくらか気をもたしているようにも取れたのだが、その彼に素っ気ないいち子の終盤の展開も、だからと言うことでもないが、その男は自分の親友と結婚してしまった。ラストで、いち子の夫となる男を見せないで、結果だけを提示だけでは、何だか寂しくもありましたね。

それでも季節は動き、彼女自身もいまの自分に飽き足りなくなっているのが垣間見れ、畑や山の風景も、作られる食べ物も、都会人が憧れる農村ライフのいいとこ取りだが、ラストが田舎に落ち着くようで、村祭りのお神楽の踊りが良かったですよね。
季節をまたぐ度に、少女から大人へと変貌する女優たちを、美しい自然を背景に眺めるスケッチとして見れば申し分ないと思います。
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