パピとママ映画のblog

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ラヴレース ★★★

2014年05月03日 | ら行の映画
1970年―― 21才のリンダ・ボアマン(アマンダ・セイフライド)は、フロリダの小さな町で、厳格なカトリック教徒の両親(ロバート・パトリック&シャロン・ストーン)と暮らしていた。ある夜、リンダは女友達と遊びに行った帰りに、地元でバーの経営をしているチャック・トレイナー(ピーター・サースガード)と知り合う。厳しい両親との生活にうんざりしていたリンダは、チャックの優しい言葉に惹かれ、彼とつきあい、すぐに結婚する。性的にうぶだったリンダに対して、チャックは、セックスの快楽を一から教え込んでいった。
その半年後―― チャックのダークで陰湿な一面が、しだいに明らかになってきた。妻のリンダをポルノ映画へ出演させるという、とんでもないアイディアを思いつく。
たった7日間で撮影されたリンダの主演映画『ディープ・スロート』(タイトルはリンダがチャックから伝授された「秘技」を指して付けられた)は、1972年に全米公開され、記録的な大ヒット作となった。「リンダ・ラヴレース」というポルノ女優としての芸名を授かった彼女は、一躍スーパースターに――パーティ会場でも「プレイボーイ」編集長のヒュー・ヘフナー(ジェームズ・フランコ)やサミー・デイヴィス・Jr.といった有名人から賞賛されるほどの人気者となり、70年代の解放的な「セックス革命のシンボル」として祭り上げられていく。
しかし、その6年後―― ニューヨークで新生活を始めたリンダは、自伝本を書くために、出版社を訪れる。これから書こうとする内容の真偽を証明するため、彼女はポリグラフ(ウソ発見器)のテストを受ける。そこで語られるのは、長年メディアによって捏造されてきた「リンダ・ラヴレース伝説」の裏で起こっていた「衝撃の真実」だった…。

<感想>アメリカ人男子で知らないものはいないと言われるほど、語り継がれている伝説のポルノ映画。物語性のある初の一般劇場用ポルノ映画として、72年に全米公開された「デープ・スロート」。社会現象にもなり大ヒットした作品の主演を務めたリンダ・ラヴレースの生涯を描いている。
ロバート・エプスタインとジェフリー・フリードマンの共同監督作と言う、強靭な社会派映画を想像したら、この映画は、そんな彼女の知られざる陰の部分を描いたシリアスな、端正な男尊女卑をえぐる映画だった。
ハリウッド・セレブのパーティでもてはやされ一方で、プライベートでは自分を業界に売り込んだ夫のDVに耐え忍び、救いのない状況に追い込まれていた彼女の苦悩を描いている。
まさに体当たりで伝説の「ディープ・スロート」、コゼット役からの何というふり幅だろう。というよりも、コゼットがファンティーヌにさせられるお話と言うべきか。イメチェン的な迫真の演技を見せる、主演女優を演じたアマンダ・セイフライドの華奢な裸体に胸を突かれます。

70年代、1本のポルノ映画で世界を湧かせたラヴレースが、当時の自分を振り返り「夫に従う」という教えに疑いを覚え、その勇気を知る正しく作られた映画です。エロさを期待して観ると、後半にこれでもかと返り討ちに遭うはず。つまり、夫は借金を抱えており、その資金繰りに妻であるリンダに売春をさせる。普通では考えられないのに、こんな仕打ちをされたら絶対に離婚するはずなのに。実家へ逃げ帰るも、母親には自分が選んだ結婚なのだから、どんな虐待があろうと夫の言うことを聞きなさいと、戻らされる。
リンダ・ラヴレースは自身の過酷な経験から、ポルノグラフィによる女性搾取と、男性のDVに後半では立ち向かった女性なのであり、だからこの映画も一種の啓蒙性を帯びているようですね。後に女性運動家となるラヴレースの内面の変化に重きを置いています。

中間地点で語りが「折り返す」構成になっているのも面白いです。母親役のシャローン・ストーンがしばらく誰だか判らずビックリしました。それに、卑劣さの滲み出るピーター・サースガードなど、ヒュー・ヘナフー役のジェームズ・フランコには、もう少し見せ場があっても良かった気がします。

この映画の主人公であるリンダ・ラヴレースや彼女が主演した「ディープ・スロート」が世界的な話題になった1970年代は、まだビデオが普及していなかった。ポルノ映画は、そういう映画を専門に上映する映画館で見る物だった。そんな時代状況が、今の若者に判るといいのだが、普通の女の子が男たちの食い物にされて不幸になる。という話はいかにも古臭い。これはもっと生かせる面白い題材だった、と思う。
私には、始めから年上の男が若い彼女に目を付けて、彼女に売春をさせ、ヒモとなって食い物にしようと企んでいたとしか思えないのですが、この時代ではこんふうに騙されたのを知らないで、幸せになろうと男と結婚するのだろう。一つの家庭からもう一つの家庭に至るまでに、彼女が体験したすべての事実を人々に知ってもらうための自伝になっています。
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