パピとママ映画のblog

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杉原千畝 スギハラチウネ★★★★.5

2015年12月06日 | アクション映画ーサ行
第2次世界大戦中、リトアニア領事代理として日本政府に背く形で多くのユダヤ難民にビザを発給し彼らの命を救った杉原千畝の波乱に満ちた半生を映画化。世界情勢が混乱を極める中、諜報(ちょうほう)外交官として日本にさまざまな情報を送ってきた杉原を唐沢寿明が演じ、彼を支える妻に小雪がふんするほか、日本、ポーランドの実力派俳優が集結。『サイドウェイズ』などのチェリン・グラック監督がメガホンを取り、国際色豊かなスタッフ、キャストをまとめ上げた。
あらすじ:1935年、満洲国外交部勤務の杉原千畝(唐沢寿明)は高い語学力と情報網を武器に、ソ連との北満鉄道譲渡交渉を成立させた。ところがその後彼を警戒するソ連から入国を拒否され、念願の在モスクワ日本大使館への赴任を断念することになった杉原は、リトアニア・カウナスの日本領事館への勤務を命じられる。同地で情報を収集し激動のヨーロッパ情勢を日本に発信し続けていた中、第2次世界大戦が勃発し……。

<感想>6000人のユダヤ人難民を救った日本人外交官、杉原千畝のことは知っていました。それがチェリン・グラック監督によって映画化されることになり、彼の功績を多くの日本人に知ってもらう映画となっています。

第二次大戦中にナチスの迫害から逃れてきたユダヤ難民に、日本通過のヴィザを発行して彼らの命を救ったことで知られている杉原千畝。日本のシンドラーとも呼ばれる男の覚悟の裏側にはどんな想いがあったのか?・・・彼のドラマチックな生涯を映像で観ることはとても感慨深く、危険を冒してまで世界情勢を分析し、日本に情報を送り続けた彼の“諜報外交官”としての一面もクローズアップされている。

杉原千畝は、英語、ロシア語、ドイツ語、フランス語など数か国語に精通し、情報収集のために現地の人々と交流を重ねるかなり頭のいい男だった。北満鉄道譲渡交渉時に、情報分析能力の高さが知れ渡り、ソ連の脅威に。外交官としてモスクワ赴任を希望するも、「ペルソナ・ノン・グラータ(歓迎されざる人物)」に指定され入国拒否をされていた。

実在の人物・杉原千畝を演じた唐沢寿明の英語の台詞の流暢なことといったら、それに自分の立場や命が危うくなるリスクを知りながらも、ビザを発給し続けるその姿勢に感服します。ユダヤ人たちを殺すナチスドイツ。日本人たるもの、人種差別による反抗心はあったと感じます。

映画の中で出てくる満州ハルピン学院の方針「自治三訣」、人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」これを実行することは難しいけれど、本当にいい言葉ですよね。国も人も何にもしてくれないから、自分が出来ることは一体何なのか、自分の頭でちゃんと考える。これからの時代は、受け身ではない姿勢がさらに必要になってくると思います。

こういう映画を観ていていつも思うのですが、ヒトラーが率いるナチスが、ユダヤ人たちが理由もなく迫害され殺されていくのを、その行為が許せないという気持ちに胸が痛くなり、そのユダヤ人たちの財産を略奪し、自分たちの私腹を肥えさせる態度には憤りを覚えます。
彼が自分の力だけでなく、妻の幸子に扮した小雪が、夫の背中を押してくれ「すべてを失うことになってもついて来てくれるか。」と聞いた時に、妻は「はい」と答える。子供を3人も育て上げ、夫が日本政府から疎まれていることで、ヨーロッパを転々とし、文句も言わずについてくる妻にも大和ナデシコの真髄があると見た。外交官の妻として苦難を分かち合い、献身的に支えてくれる。これが杉原千畝の日本人の男としてやるべきことの、決意の現れだったのでしょう。

すが、杉原千畝も男ですから、幸子を妻にめとる前に、満州国外交部在籍時に、ソ連の機密情報収集を手助けした白系ロシア人のイリーナと、本当は結婚も考えていたはず。ですが、彼女にフラレてその後、友人の妹の幸子と結婚。しかし、リトアニアで助けを求めるイリーナと再会する。だが、彼女も偽装結婚をしていた。こういうロマンスな展開は、あまり必要なかったのではと。
ゲシュタボ(ドイツの秘密警察)に命を狙われるカーチェイスも、ハラハラしながらこれは外国の映画ではと思いつつ、最後までユダヤ人たちにビザの発行をし続けた立派な男として描かれています。

ユダヤ人たちを救うのは杉原千畝だけではなく、在ウラジオストク総領事代理の根井と、連絡船天草丸の乗務員の大迫に扮した濱田岳など、様々な男たちの勇気ある決断があってこそ成功したと言っていいだろう。

ですが、ラストの方で、命を救ってもらったユダヤ人の男が日本の外務省へ杉原千畝を訪ねていくと、そんな男は存在していないと言うのだ。つまりは、彼は日本政府の許可なしでビザを発給していたので、それが外務省の怒りに触れてクビになり、一切そのことについて日本政府は黙視を続けているのにも怒りを覚えます。

ポーランドでオールロケを敢行。キャスト&スタッフの8割がポーランド人で、台詞はほぼ外国語。まるでポーランド映画のような感じもありました。
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