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多十郎殉愛記★★★

2019年04月20日 | アクション映画ータ行

「木枯し紋次郎」シリーズ、「極道の妻たち」シリーズなどの大ベテラン中島貞夫監督が、京都撮影所の伝統を次世代に伝えるべく20年ぶりに劇映画の監督を務め、自身初のちゃんばらに挑戦し撮り上げた時代劇。主演は「横道世之介」「悼む人」の高良健吾。共演に多部未華子、寺島進。

あらすじ:時は幕末。かつては長州で名うての剣士だった清川多十郎。とある事情で脱藩した今は、京都の貧乏長屋で小料理屋女将のおとよに世話を焼かれながら無為な日々を送っていた。そんなある日、故郷から腹違いの弟・数馬がやって来る。一方、浪人の取り締まりを強化していた京都見廻組にその存在を嗅ぎつけられてしまう多十郎だったが…。

<感想>“巨匠”中島貞夫監督20年ぶりの最新作。59年の映画人生を次世代に受け継いだ、日本映画史に残る新しい「ちゃんばら映画」が誕生した。中島監督の優れたチャンバラ映画の中の短篇時代劇を見た時から、次なる展開を期待していただけに、堂々たる長篇として実現したのは素直に嬉しかった。

しかも配役も豪華だし、中でも主演の高良健吾扮する剣の達人が、幕末のご時世、腕の立つのに人を斬る気が無いという設定も気が利いている。監督はフィルムで撮りたかったらしいが、映画館にはフィルムの映写機がない時代なので、仕方なくデジタル撮影をされたということだった。

中でも清川多十郎が住んでいた京都の貧乏長屋の人たちの関西弁のやりとりがユーモラスでとても魅力的でしたね。彼に惹かれるおとよが、なにくれとなく世話をやく長屋の住居と、その周囲の路地を捉えた画面もよかった。全部セットなのだが、それを映すショットがいかにもうらぶれた街の一角という、空気を醸し出しているのだ。

それに小料理屋女将のおとよに多部未華子が扮していて、店の用心棒の役目もしているし、恋仲の様子が伺われた。自分の弟が故郷から京都に住んでいる兄の清川多十郎を訪ねてくるも、取り方たちに囲まれて目を斬られてしまい、おとよに頼んで医者にみせて、逃げるようにと指示をする。

おとよが、自分の故郷の高雄へ逃げる途中で、取り方たちに囲まれてしまい、もう逃げきれないことを悟る。

始めは、多十郎ものんびりと着物の柄を描く仕事をしていたが、食い扶ちにも困り果て、故郷長州藩から来ていた伊藤様から、多十郎の剣の腕を見込んで、京都にいる長州藩の侍たちの後継人として京都見廻組の相手をしてくれないかと頼まれる。

見せ場は、迫りくる竹林での、大勢の京都見廻組の取り方たちを切り捨てながら、逃げる高良健吾が人を斬るということに慣れていないので、どうしても躊躇してしまう場面もある。弟に言う言葉も「生きて、生きて、生きて、この世の中を見定めてくれ」という多十郎のセリフがある。

これは、多十郎の立ち廻りが「人を斬る」ためのものではなく、愛する女性と弟の数馬を逃がすための時間稼ぎのチャンバラだというのだ。

以前に観た、熊切和嘉監督が手掛けた「武曲 MUKOKU」も、人を斬るのが嫌だという侍がいたが、この作品もそのような感じであり、最後までバッタバッタと人を斬り捨てるというシーンは無かった。だから、取り押さえられて終わりである。取り方には、吉本興業の芸人たちの力を借りたそうです。そういえば、観たことのある取り方もいた。

ただし、問題は弟を護る為の殺陣、というコンセプトが何か煮え切らないのだ。凶暴さに欠けるというか。せめて騒動の発端となった2名のザコ町人役人はどうにかして懲らしめて欲しかった。音響も無音のところのあったが、時代劇に相応しい感じで中々良かった。

京都見廻組の取り方の親分として、寺島進が扮していたが、多十郎との一対一の闘いも迫力があってよいのだが、多十郎の勝利で良かったのではないかと思えた。

つい、時代劇で見慣れたと言えば、その季節のバックの景色と相まって、岡田准一の「散り椿」殺陣の見事さに見惚れてしまうのに、高良健吾の時代劇「多十郎殉愛記」、これはちょっと惜しい気もしました。

 

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