パピとママ映画のblog

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愛しのアイリーン★★★

2018年09月21日 | アクション映画ーア行

嫁不足の農村で悶々とした人生を送り続けた40過ぎのダメ男を主人公に、人間の剥き出しの愛と業を力強い筆致で描ききった新井英樹のカルト的傑作漫画を「ヒメアノ~ル」「犬猿」の吉田恵輔監督が実写映画化した衝撃のバイオレンス・ラブストーリー。気弱な主人公がフィリピン妻を連れ帰ったことで様々なトラブルが吹き上がる中、次第に暴走していく愛と欲望の行方を妥協のない過激さで描き出す。主演は「俳優 亀岡拓次」「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」の安田顕、共演にナッツ・シトイ、伊勢谷友介、木野花。

あらすじ:42歳になる農家の息子・宍戸岩男。いまだ独身の彼は、年老いた母と認知症の父と暮らしながら、パチンコ店で働いていた。女性とまるで縁のなかった岩男は、同僚のシングルマザーを相手に手痛い大失恋を味わったのをきっかけに、コツコツ貯めた300万円をはたいてフィリピンでの嫁探しツアーに参加することを決意する。やがて岩男がそこで見つけたアイリーンを連れて帰郷してみると、父はすでに亡くなっていて、実家はその葬儀の真っ只中だった。母のツルは溺愛していた息子がいきなりフィリピン人を嫁にしたことが我慢ならず、激しい怒りの矛先をアイリーンへと向けるのだったが…。

<感想>二人で歩む、地獄のバージン・ロード。1995年から1996年まで『ビッグコミックスピリッツ』で連載された『愛しのアイリーン』は、吹き溜まりのような寒村に突如現れた外国人妻アイリーンと彼女を取り巻く人々の欲望を描いた新井英樹の作品。映画版では42歳まで恋愛を知らずに生きてきた主人公の宍戸岩男役を安田顕、岩男の母・ツル役を木野花、父親の品川徹、アイリーンを連れ去ろうとするヤクザの男・塩沢役を伊勢谷友介が演じている。メガホンを取ったのは『銀の匙 Silver Spoon』『ヒメアノ~ル』などを実写映画化した吉田恵輔。

日本の嫁探しの遠征ツアーは、高度経済成長期に流行し始めたものであり、少し前の東北の農村では嫁のきてがなく、特にフィリピンは人気国だったことで知られていた。バブル崩壊後、間もない頃に描かれた原作の漫画において、この設定は「満たされない日本人が金という武力でセックスをむさぼる3度目の侵略」という経済大国ニッポンを引きずったものだった。

あれから20年経った今、さすがに今でもあるのかどうかは知りませんが、人身売買というほどではなく、嫁不足で困ってフィリピンでまで行くわけで、やはりお金に困っている子だくさんで貧困の国へと、お金を出して嫁を貰うということになる。

しかし、映画が展開するにつれて、次第に印象が変わっていくわけで、特に岩男とフィリピーナのアイリーンが、愛のあるセックスに至ってから以降は、地獄めぐりがまさに壮絶にして圧巻であった。文字通り暴発の連鎖が止まらない主演の安田顕は、さすがの憑依演技で圧倒させるが、驚くのは、通常のどかな感じの母親役の木野花が、歪んだ母性のお化けを怪演することになるとは。父親の品川徹は、ボケているようで、母親とは対照的な存在感がある。

岩男がフィリピンまで嫁探しに行っていることを知らない両親は、そこで父親が脳梗塞で突然亡くなるし、岩男がアイリーンを連れて帰って来ると、父親の葬式の真っ最中であったわけで、母親がフィリピーナの嫁を連れてきたことで激怒をして猟銃を片手に追い出す始末。

岩男の母親を怪演する木野花の演技の凄まじさといったら、愛する息子を奪った花嫁アイリーンを、露骨に罵倒しながら、ライフル片手に村(ロケ地新潟)を彷徨う殺気だった鬼の形相が凄い。

そこからが、岩男が母親を説得するのだが、肝心の嫁であるアイリーンとの初夜も上手くいかずに手つかずの間柄。妻に娶られるても18歳の彼女には、「好きな相手と結ばれたい」の一点張りで、岩男を受け付けないのだ。

日本語も話せないし、それでもアイリーンは、毎日のようにパチンコ店に一緒に付いて行き、付き纏い、車の中で寝てしまう。夜になると、フィリッピンパブへ行っては同じ故郷の女と遊ぶのだ。そこの女性に日本語を教えて貰い、辞書も貸してもらい、何とかカタコトの日本語を話せるようになる。

岩男もその内に、アイリーンとのセックスも巧くいくと思っていたのだが、働いているパチンコ店の熟女人妻の河井青葉が、エロい演技で場をさらってしまう。岩男と浮気をしてしまい、そのままずるずると続くのであった。それが、吉岡愛子の夫にバレてしまい、その後は相手にしてもらえない。

母親の方は、近所の人に頼んで何とか岩男の嫁探しをするのだが、そこへヤクザの伊勢谷友介がやってきて、アイリーンを金で買い上げてよそへ売り払おうという計画を持ちかけるのだった。

岩男がそのことを聞き、駆けつけてアイリーンを助けて、挙句にヤクザの伊勢谷友介をライフルで撃ち殺してしまう。死体を林の奥に穴を掘り埋めて隠してしまうも、ヤクザが身内の伊勢谷友介を捜しに来るのだが、知らぬ存ぜぬを決める岩男。

ヤクザも岩男に目を付けて、嫌がらせをして「人殺し」の貼り紙やスプレーで落書きをして脅しにかかる。

岩男がアイリーンと身体を交わるのは、何か月も後になるが、ヤクザを殺してくれた後で2人は激しく結ばれるわけ。しかし、アイリーンがお寺の坊さんに、殺した男の弔い方、お経を教えて貰いにお寺に通うようになるも、それが不倫をしていると噂になってしまう。

岩男は、自分も浮気をしているのに、アイリーンを愛するようになり、嫉妬のあまりお寺の裏の林の杉の木に、「アイリーン」とナイフで名前を切り刻み込み、その後謝って転落して死んでしまうのだった。

アイリーンが、岩男を捜しにお寺まで来て、岩男の死体を見つけ、家から布団を持ち出して岩男の上に掛けてやる優しさもある。

最後には、母親が岩男を捜し歩いて衰弱し、アイリーンがお寺の裏まで母親を連れて行くと、息子の亡骸を見て卒倒して倒れ込んでしまう。家へ連れて帰るも、狂った母親は、岩男の傍で自分も死にたいと思ったのか、よろよろと衰弱した体で岩男の亡骸の元へと執念で辿り着くも、アイリーンがその時に「お腹に岩男の子供がいる」と母親に教えると、嬉しそうにアイリーンの背中におぶされて家に帰ろうと心変りをする、その道中に亡くなってしまうのだが。

この母親の回想があまりにも過酷な人生を歩んできたようで、目の前の悲惨な出来事に対する比較対象の度合いが、穏やかな人生を歩んできた人間とは明らかに異なるのだ。本作での冒頭から積み重ねられるように描かれる“過酷さ”は、子を想う<鬼>と化してゆく木野花の入魂の役作りは賞賛に値すると思う。

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