「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ主演のビターな青春ドラマ。父を亡くし、叔母の家に預けられた少年が、大麻の売人とのふとした出会いから危険な恋と犯罪に手を染めていく無軌道な青春の顛末をほろ苦いタッチで綴る。共演にマイカ・モンロー、アレックス・ロー。監督は長編デビューのイライジャ・バイナム。
あらすじ:1991年、アメリカ。高校を卒業したばかりのダニエル・ミドルトンは、少し前に父を亡くし、その大きな喪失感から抜け出せずにいた。そんなダニエルを心配した母親は、気分転換になればと、夏のあいだ彼を海辺の小さなリゾート地ケープコッドに住む叔母のもとに預ける。しかし結局誰とも馴染めず、自分の居場所を見つけられずにいたダニエル。そんな時、地元で札付きのワルとして知られていたハンター・ストロベリーと出会い、意外にも意気投合する。やがて大麻の売人をしていたハンターの仕事を手伝い才覚を発揮するダニエル。その一方で、彼から絶対手を出すなと警告されていた妹マッケイラとも秘かに付き合い始めるが…。
<感想>忘れられない夏がくる。休暇に遠い街へ行く、地元の魅力的なワルと出会い、つるむようになっていく。恋愛あり、犯罪ありなど、いろいろあってどっちも破滅という定番の物語。アメリカ東海岸を過去最大級のハリケーンが襲った1991年の夏、海辺の町ケープコッドでは「伝説」となった、ダニエル・ミドルトンの物語。
父親を亡くしたショックで家に引きこもっている息子のダニエルを、母親がケープコッドの叔母のところへ預ける。ダニエルは地元で有名なワル、ハンターと仲良くなり、彼の仕事である大麻のディーラーを手伝うようになる。それがお金が楽に儲かるし、世間知らずの彼はいい気になって、大麻からコカインにまで手を広げようとする。
確かに金にはなるが、ハンターは、それはつまりマフィアがらみになるので、儲けの金が自分たちには入らなくなり、ただ働きになるかもしれないと疑心暗鬼になる。それでも、お坊ちゃん育ちのダニエルは、コカインのことも良く知らないし、コカインをやったこともないのに金を楽に稼げると乗りきになる。
ところが、町一番の美人であるマッケイラと知り合い、恋に落ちるが、彼女はハンターの妹だった。兄貴のハンターは、妹を可愛がり、「絶対に俺の妹とは付き合うな」と脅し、「もし付き合ったら殺してやる」とまで言われるも、ダニエルの心はもう、彼女に首ったけでどうしようもなかった。
青春感が満載であり享楽的なのに、個々のキャラクターがそれぞれに事情を背負っているが故に、やるせなさや、切なさや、いかんともしがたさが、常にべったりと貼りついているのだ。
物語全体に、そこがどうしようもなく、ただただ苦く割り切り方が微妙。それに、最大級のハリケーンの襲来と歩調を合わせて、不穏な雰囲気が画面から漂い始めるし、真面目な青年から悪に染まって、転落していくダニエルがどうしようもない。
ダニエル役は「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメなので、期待して鑑賞したが、いまいち乗り切れない恋愛も、友達も、仕事も、大人に成り切れなく成長が止まっているようだった。
アメリカの青春映画にあるような、ハーモニー・コリンもこの形の「スプリング・ブレイカーズ」(2013)を撮ったように、ただし「これって、解りやすいから」だけじゃなくて、「アメリカではリアルだから」というのも大きいのだなぁと、その定番の最新作である本作を観て、しみじみと思いました。
2019年劇場鑑賞作品・・・125 アクション・アドベンチャーランキング
「映画に夢中」
トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ
トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30760426