パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

オンリー・ザ・ブレイブ★★★・5

2018年06月25日 | アクション映画ーア行

全米中に衝撃と悲しみをもたらした2013年の悲劇の実話を「ノーカントリー」「ヘイル、シーザー!」のジョシュ・ブローリン主演で映画化した実録スペクタクル・ドラマ。2013年にアリゾナ州で発生した大規模森林火災に立ち向かう森林消防の精鋭部隊“ホットショット”の男たち20人の絆と運命を描く。共演はマイルズ・テラー、ジェフ・ブリッジス、ジェニファー・コネリー。監督は「トロン:レガシー」「オブリビオン」のジョセフ・コシンスキー。

あらすじ:アリゾナ州プレスコット市の森林消防隊員を率いるマーシュは、過酷な任務に耐えられるよう、日々隊員たちを厳しく鍛え上げていた。ある日その森林消防隊に、薬物中毒の過去があり、おまけに窃盗罪で保護観察中の若者マクドナウが入隊を希望する。“娘が生まれたのを機に心を入れ替えたい”という彼を、マーシュは周囲の反対を押し切り採用する。そしてマクドナウはその言葉通り、過酷な訓練に必死で食らいつき、次第に他の隊員たちの信頼を勝ち取っていく。そんな中、現場での裁量権を持つべく、地方自治体の消防隊としては前例のない、特別な精鋭チームにのみ与えられる“ホットショット”の認定を受けようと考えるマーシュだったが…。

<感想>森林火災消防隊のエリート「ホットショット」が、2013年のアリゾナで、巨大な山火事に立ち向かったときの実話に基づき、真面目でキメ細かい演出。スペクタルな最終場面までは、隊員の地味で過酷な訓練を丁寧に見せている。始めは、エリート集団の「ホットショット」に入れずに悩んでいた隊長のジョシュ・ブローリン。彼がホットショットの指揮官になるまでに、費やした努力の大きさに感動しました。

森林火災の鎮火は通常の建物火災と違って、「水」を使って行うものではないことが分かります。冒頭では「消防界のネイビーシールズ」と言われる精鋭部隊“ホットショット”がクワを手に、迫り来る炎を食い止めるための溝を一心不乱に掘る姿がとらえられ、火のついた油をまいて、進んでくる炎が燃やそうとする木々を「先に燃やして失くしてしまう」作戦が映し出される。

勢いを増して進んでいく消防士たちの炎は、やがて火事の炎にぶつかり、その行く手を封じ込める。巨大な炎を前にしながらも、ここから先には行かせないという男たちの勇姿にも引き込まれる内容でありました。

アメリカの森林消防隊についての知識が事前にあればもっと面白いのかもしれないが、訓練の実際や、アリゾナはこんな暮らしがあるのか等々。地味な展開の中で見るものすべて新鮮で、じわじわと嬉しくなってしまう。

そして男性的な世界観と、家族の原理の相容れなさが、話の軸の一つかと思いきや、ことはもっと複雑だと分かって来る。つまり「海猿」とか危険を伴う仕事に就く夫の留守を預かる妻として、子供を育てることはもちろんのこと、消防隊員の家族とも仲良くし、寝ている時に連絡が入ればすぐにでも飛んでいく仕事、その後、夫が無事に帰って来るかと安否が気遣われて、妻たるもの気丈に振舞わなければ心が持たない。

だから、クライマックスの突然の壮絶さに、隊員19人の死亡確認の知らせが入ると、20人いるのだから独り生きているのは誰か?と気にかかるのはもちろんのことで、続いて喚起される感情の奔走の流れに、あっという間に押し流されてしまうのだ。この場面では、つい胸が詰まって涙がこらえられなかった。

隊長のジョシュ・ブローリンと妻のジェニファー・コネリーの、仲睦まじい日常生活の描き方が巧く、子供は作らないという夫の申し出を、後になって妻は夫にもしものことがあれば、子供と共に生きていけるということで後悔しているのが気の毒に思った。

「セッション」「ビニー 信じる男」のマイルズ・テラーが、元ドラッグ中毒だが、娘が生まれたことを機に人生を変えようと消防隊の門を叩くマイルズ・テラーと、彼を鍛え抜く隊長のジョシュ・ブローリンとの“師弟愛”が熱い。一人前の隊員として成長し、築かれていく固い絆が胸を打つ。

主人公マクドナウの成長や、仲間との絆をめぐるドラマも、森林消防隊のわりには、弱火チョロチョロという感じで始終盛り上がらず仕舞い。メンツが面子だけにもったいない演出でした。何故にマクドナウ一人が助かるのかいという悔しさ。

映画で熱く燃える要素のひとつは、猛威を振るう強大な自然の力に、ちっぽけな……だが、強い意志を持った人間が命を懸けて立ち向かう姿に熱くなる。巨大な炎はどの方向に、どれだけのスピードで進んでくるのか。それを決めるのは風速、風向き、そして気温や湿度だ。優秀なプロを名乗るなら、気象情報を読み解く能力は最重要。火事の進路を読み取り、先回りせよ。

隊員たちのじょうだん交じりの消防士生活に感情が移入してしまい、クライマックスの凄まじい森林火災に、空からの消火ミスがうらめしく思ってしまった。

今回の相手は、巨大な炎。山を覆い町に迫り来る火事との、人知を尽したバトルが描かれる。まるで高い温度がそのまま伝わってくるかのような、本作で描かれる大規模火災は、撮影用に構築した森に実際に火を放って捉えられた実写映像。VFX全盛の現代において、あえてリアルな炎にこだわっただけあって、その迫力はすさまじい。

森林消防隊の働きや山林火災がいかなるものかを、真摯に捉えようとしているのだが、一番派手な場面が火だるまになって突っ走る熊を見たという、ジョシュ・ブローリンの想い出話なのは寂しすぎる。愛する者を守るため、すべてを焼き尽くそうとする未曽有の山火事に立ち向かう20人の男たちを描くスペクタクル・ドラマ。

それが、ラストで山火事の恐ろしさが、本当になってしまったということが残念でならない。隊長の号令ひとつで防火テントを取り出し、いつでもどこでも退避行動に突入!しかし、防火テントが役に立たないくらいの、風と共に襲い掛かる森林火災の猛火。消防隊員たちの、命の尊さの重みがずっしりと手ごたえがありました。

018年劇場鑑賞作品・・・120アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/29895588