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空飛ぶタイヤ★★★・5

2018年06月24日 | アクション映画ーサ行

WOWOW製作の連続ドラマ版も好評を博した池井戸潤の傑作企業小説を長瀬智也主演で映画化した社会派ヒューマン・サスペンス大作。ひとつのリコール隠し事件を題材に、事故原因が自社の整備不良だと疑われ窮地に陥った弱小運送会社社長が、その汚名をそそぐべくたった一人で真相究明に奔走する中で、やがて思いも寄らぬ大企業の巨大な闇に直面していくさまを豪華俳優陣の共演で描き出す。共演はディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、笹野高史、岸部一徳。監督は「超高速!参勤交代」の本木克英。

あらすじ:ある日、1台のトレーラーが脱輪事故を起こし、歩道を歩いていた子連れの母親が外れたタイヤの直撃を受け死亡する。製造元のホープ自動車は、事故原因を所有者である赤松運送の整備不良と決めつける。社長の赤松徳郎は世間やマスコミの激しいバッシングを受け、取引先を次々と失った上、銀行にも冷たくあしらわれ会社は倒産寸前に。それでも自社の整備担当者を信じて独自に調査を進め、ついに車両自体に欠陥があった可能性に辿り着く赤松だったが…。

<感想>池井戸潤のベストセラー小説の映画化であり、死者を出したトラック脱輪事故の責任を問われた運送会社社長が、巨悪を暴く闘いに挑む本作では、大企業と中小企業、組織と個人、理想と現実の相克を描く池井戸お得意の群像劇であり、某自動車メーカーの実際のリコール隠し事件を下敷きにした、ノン・フィクションの意味合いも持つ一作であった。

社会派のメッセージを含んだエンターテインメント大作でもあり、これまで数々の映画やテレビドラマで多彩な役柄を演じてきた永瀬智也だが、過去の作品歴を見渡してもこの種の作品は決して多くはない。中小企業の社長という役柄というのも、年齢相応とはいえ、これまでの彼には珍しい役どころだ。

脱輪事故そのものに、そして巨大企業の組織ぐるみの隠ぺい工作によって、赤松社長と彼の運送会社は翻弄され、絶体絶命のピンチにまで追い詰められていく。大きな組織に戦いを挑みはするが、赤松の活躍は決してスーパーヒーローのそれではないのだ。

実際に運送会社社長は、メーカー側に事故原因の再調査を依頼し、同様の事故を起こした会社を社長が訪ねて、と足を使って次第に事の真相に近づいてゆくのであって、その様子はまるでリアリズム刑事小説の刑事のようでした。

一方のディーン・フジオカが演じる沢田は、自らが属する組織の中での立場と、リコール隠しという不祥事を知ってしまったことによる倫理観との板挟みになって葛藤する難しい役どころでもある。

沢田は、根は真面目で優しい人だと思うんですよ。決して悪人ではない。でも組織の中で責任ある立場になった時に、真面目であるがゆえに非情にもなってしまう。組織の一員である以上は当然、出世欲もあるあるだろうし、でも、そこでの駆け引きも鈍感ではないから、組織の倫理として、それは人としてどうなんだと、というところの間を揺れ動いている。とても人間らしいキャラクターだと思いますね。

揺れ動き、変化するキャラクターだからこそ、その存在は作品そのもののテーマを体現することにもなり得る。明確な正義の人でも明確な悪役でもない沢田は、ある意味でこの映画の核となる部分を象徴しているとも言えるでしょう。大手自動車会社の社員による内部告発の下りもスリリングでありました。

今度は犯人側から、いつその犯罪が露見するかのサスペンスを主眼とするミステリになるわけであります。そのいつ明らかに、というスリルは、悪評で仕事を減らされ、取引銀行(これも財閥系)からも資金を引き上げられようとして資金難に陥る運送会社の財政的体力の消耗と絡み合い、時間との戦いとして相乗効果を挙げることになる。

上々たるキャストが勢揃いする社会派群像劇は、その重厚さゆえに物語のはこびが書き割りに陥りがちだが、本作がユニークなのは、むしろその弱点を徹底的に突き詰め、物語の説得力に転じているあたりだろう。

登場人物の心理描写、苦悩や怒りといったその感情の機微に、中途半端に目配りする代わりに、彼らの行動そのものにストーリーティングを集約しているとでも言うべきか。そこには永瀬智也やディーン・フジオカ、高橋一生ら役者陣への信頼関係を前提としてあるからだろう。

本作のカメラは時には、眼となって、人や柱が被写体を遮り、手持ち撮影に切り替わることで、視覚的な不安を無意識に訴求させているのだ。

互いの正義を似て対峙し、反発し、認め合う彼らのその後を、背中越しのアングルでとらえるカメラワークは、これは彼らが演じている様子ではなく、「生きている」現場なのだと訴えかけてくる。

現実である以上に本作が、普遍的な人の人生の物語として響くのは、それゆえなのだからと思う。

 

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