九時前、届けられた花は、夏椿の一輪であった。花の傍に蕾もひとつついている。(写真)
私は、この花の名こそ知っていたが、花に会うのは初めてで、そのなんとも言いあらわしようのない清楚な美しさに心を打たれた。
一輪を届けてくださった方の心ばせも嬉しく、私の心に、ほのぼのと灯がともった。幸せとは、こんな心の在りようをいうのだろう。
幸せは小さくともよし沙羅の花 (自作。俳句のまねごと。)
歳時記には、「沙羅(しゃら)の花」で出ている。別に、「夏椿の花」、「姫沙羅」、「さらの花」などの言い方もあるようだ。
<一日花>との説明を読み、美しく咲く花のはかなさを思った。
花瓶に挿した「夏椿の花」を書棚の上において、終日眺めた。
先刻、ポトッと、音がした。
音の方を見ると、今日一日を咲いて、夏椿の花が床に落ちていた。
6時45分の終焉であった。
私は、容器に水を入れ、落ち椿の一輪を水に浮かせた。花はやや凋んだ形で、水に浮かんでいる。