○今週はずっと猛暑日が続いた。週末から週明けも作業が続くと思う。今日は来客もあり。
休暇をとる前にすることがあるので、まあぼちぼち行きましょう。
(再び郊外の田園地帯を行くキイロイトリ)
本日のBGM
The Game-End Credits / Daniel Pemberton (「The Game BBC Soundtrack theme 」)(AXNミステリー、8/6 22:00~)
BBCの「ザ・ゲーム」(2014)のテーマ。続けて見るとほんとに渋い映画のようなミステリーサスペンスドラマだ。6日が第5回「戦場の英雄」と第6回の最終回「動く星々」である。最初から全員がほどほどに地味で(突出して派手な人がいなくて)、かつそれぞれが個性的で能力に優れつつも、どこか灰汁のえぐみがあるというか秘密を持ってそうで怪しい(ジョナサン・アリスやポール・リッターなどが配されているから最初から不審な)上に、さらに途中のエピソードでいろんな怪しい人をゲストに盛り込みすぎなくらいなため、暗殺的な殺人事件がからみ出す中でミスディレクションの具の多い五目中華そば状態。そしてダニエル・ペンバートンのテーマ曲が毎度くりかえし流れ、否応なくひそやかに不安感がかきたてられる。
KGBが仕掛けてくるガラス作戦とは何を意味し、内通している「もぐら」は誰なのか。第5回あたりでようやく容疑者がわかってくる(誰が有利か、と考えると確かにそうか)のだが、だからといってすぐ解決するはずもなく逆に反撃も始まり、それじゃどーなるんだよ!?なサスペンスが迫り、そしてラストまで「もやもや」と微妙なグレーさを残して終わるあたりが、よくできている。なにせトム・ヒューズの主人公ジョー・ラムも能面チックで「何考えてるのかわかんない」感じで、過去の経緯からしても不審なため、十分容疑者になりうるポジションなところがミソである。それぞれのプライバシー、恋人や夫婦の話もせつない。それぞれの立場と状況が最後まで分かった上で、もう一度第1回から見ると伏線がわかって複雑な気分になりそう。だから、国家や政治の理念の話というよりは、その理念に観念が囚われがちな人間の心理の陥穽だの、仕事に関わっている人間が抱く疑念とか不信から崩れる関係だの、その中で問われる職業倫理的なものや、人間の心の機微が鍵になっているようなドラマである。
Tinker Talor Soldier Spyの時もそうだったが、1970年代の冷戦時のロンドンの風景のくすみ方が妙にファッショナブルな扱いをされているようだ。エージェントたちが地味に、しかし熟練した手技できびきびと処理の作業に入るデスク周りとか、また仲間同士でお互いに辛辣な英国人的冗談口をたたく場所とか、確かに色調や調度類もかっこいいけど。画面の配色や雰囲気なんかジャン=ピエール・メルヴィルの「サムライ」(1967)のアラン・ドロンの部屋とか街並みみたいな「冷たい」感じを思い出した。
翻って2015年の日本では連日閣僚や国会議員の失言の報道が続き、それが日を追って改善されるどころかますます悪化していくのは、何かの症状が急速に進行しているのだろうかとすら思う。意図的に作られたカタストロフィーのドラマの展開の脚本によく出てくる、戯画的かつ典型的な悪役のわざとらしい台詞のようでもある。しかもそれが虚構のドラマでもなく、現職の人間が不注意にか放つ現実の虚栄的にして酷薄な発言だという点が非常に末世的だ。(20150807)