2004年に刊行されて以来、全世界で発行部数400万部を突破しているパスカル・メルシエのベストセラー「リスボンへの夜行列車」(早川書房刊)を、ジェレミー・アイアンズ主演、「ペレ」「愛の風景」の名匠ビレ・アウグスト監督により映画化。スイスの古典文献学教師ライムント・グレゴリウスは、妻と別れて以降、ひとり暮らしの単調な毎日を過ごしていたが、そんな日々に特に不満も疑問も抱いていなかった。しかしある日、一冊のポルトガルの古書を手に入れたライムントは、その本に魅了され、アマデウ・デ・プラドという謎の著者について知るため、衝動的にポルトガルのリスボンへ旅立つ。旅先でアマデウの家族や友人を訪ね歩き、徐々に明らかになっていくその素顔や人生を知ることで、ライムントもまた、自らの人生と向き合っていく。メラニー・ロラン、シャーロット・ランプリング、ブルーノ・ガンツ、クリストファー・リーら豪華キャストが出演。(映画.comより)
こちらも録画鑑賞。公開はこの映画の方が先だったのですが、その後に公開された「ある天文学者の恋文」や「奇蹟がくれた数式」などを見てしまったため、ジェレミー・アイアンズがずっと大学教授。「ある天文学者・・・」では早々に亡くなったのでシリーズものの印象はないものの、なんだかイメージ固定しそうです。いや、この映画では高校教師なんですが、知性と教養にあふれた初老の男なんです。
そんな彼は「退屈な男」だということで、5年くらい前に離婚されてある模様。で、今日もいつも通りに学校へ行こうとしたところ、今にも川に投身自殺しそうな若い女性を見つけ、助けます。自分の授業に連れて行くも、途中で姿をくらましてしまいます。そんな彼女が残していったコートには「言葉の金細工師」という本と、リスボン行きのチケットが入っていたのです。慌ててリスボン駅まで彼女を追いかけるジェレミー。しかし、そこに彼女の姿はなく、思わず目の前の列車に飛び乗ってしまいます。そして長い列車旅の中で、かの「言葉の・・・」を読み進め、すっかり虜になってしまうのです。「こんな素晴らしい本を書く人はどんなひとなんだろう」そう思った先生は、作者のアマデウ(独裁政権下で反体制運動に身を投じた活動家。元は裕福な出)の人生をたどる旅を始めるのです。
原作の「リスボンへの夜行列車」は、ベストセラーらしいのですが、ちょっと待って。少し無理のある設定だと思いませんか(笑)。孤独な初老男が、自殺しようとしている若い美人を偶然助ける?私も相当な年月を生きていますが、自殺する場面には遭遇したことありませんし、私の周りでもそんな人いません。まぁ起きるときは起きるんでしょうけど。しかも、なぜに若い美人?おじさんやおばさんじゃダメなのね・・・。おばさんは悩まないってわけか。
で、得体のしれないおじさんから逃げた女性の行動は理解できるとして、なんでコートを忘れる?なんで本とチケットを残す?もう~やめて欲しいわ(笑)。さらに、分別のある大人の男が、突然何もかもを放り出して目の前の列車に乗り込む?人のチケットで(笑)。もちろん、どの大人も「現状」を投げ捨ててどこかに行きたい、という願望は持っているでしょう。もう一度人生をリセットしたい、とは誰もが願うこと。しかし、現実にはねぇ。ま、先生は離婚してるからしがらみがなかったのかもしれませんし、生活の心配もないほど余裕があったのかもね。
ともかく、職場の上司に連絡もなく雲隠れするわけです。そして、若い女性が残していった本を道々読むうち、過去の活動家アマデウのことを知り「自分は無為に生きているが、彼は本当の人生を生きた。彼について知りたい」と強く思ったのですね。そこから、彼の”アマチュア探偵”ごっこが始まります。
原作ではどうなのか知らないのですが、彼は地道にアマデウのことを調べます。で、街がもともと小さな街だったのかなぁ、簡単に知り合いにたどり着きます。例えば、滞在しているホテルの前で自転車に当てられて転倒し、メガネが割れたため眼科へ行くのですが、そこの女医さんの叔父がかつての活動仲間だったり。またこの女医さんが、若くはないのですが魅力的な女性。なんでこんな女性が独身なんでしょうね。筋書き通り、ジェレミーと仲良しに。
アマデウの生家(立派なお屋敷!)には彼の妹さんが女中さんと一緒に住んでいます。彼女はなぜか「兄は出かけています」というのですが、その実アマデウは亡くなっているのです。このミステリアスな妹を演じるのがシャーロット・ランプリング。大好きです、この女優さん。カッコいい!作品を選ぶ目も確かだと思う。ともかく、裕福ながら活動に身を投じたアマデウ(医師)、労働者階級出身の親友ジョルジュ、その彼女のエステファニア(同士の名前、その他のデータをすべて記憶している。演じるはメラニー・ロラン)、同じ仲間のジョアン(彼が例の女医さんの叔父になります)たちのレジスタンス活動と、現在のジェレミーが並行して描かれ、当時のことを知るにつれジェレミーの感慨は深まってゆきます。
この作品は、主人公の目を通して、あまり知られていないポルトガルの独裁政権の歴史を紐解くものだと思います。例えばスペインのフランコ政権の独裁政治なんかは、よく映画にも描かれることもあって知っていても、ポルトガルにも同様の歴史があったということは、私も今まで知らないものでした。ポルトガルに行ったことがあるというのに(笑)。ポルトガルは1926年から1974年までアントニオ・デ・オリベイラ・サラザールという独裁政権が続いていたんだそうです。その後、「カーネーション革命」が起きて4月25日は「自由の日」という祝日になっているそうです。
おもしろいですね。人生は発奮あるのみですね!そして素敵な女性にも出会えるし。やっぱり映画はみなの憧れでなきゃ、ですね。