「展望なき『脱原発』と決別を」と題する社説が読売新聞(9月7日・朝刊)
に掲載された。これは国民の健康と環境汚染を無視した電力会社の代弁に過
ぎない。公器としての新聞の役割をわきまえない暴論である。
①「原発を再稼動しなければ、来春にはゼロとなる。・・・そうなれば電力
不足は全国平均で9%になる」と説いている。本当であろうか。本欄で何度
も紹介しているように、国際エネルギ-機関(IEA)は、「日本は原子力発電
の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している」、
との見解を示している。世界から公認されている機関が嘘を云うはずがな
い。また、テレビで原発がなくても、十分電力を供給できる」と堂々と主
張するコメンテ-タ-もいる。したがって、IEAなどの見解が本当かどうか、
まず検証する必要がある。
②「不足分を火力発電で補うために必要な燃料費は3兆円を超え、料金に転嫁
すると家庭で約2割、産業では4割近く値上がりするとの試算もある」、と社
説は主張している。一方IEAは、「60テラワット時の不足分すべてを石油火
力発電で補った場合、日量約20万バレル増加する見通し」、と云っている。
いずれにしても、この点も検証する必要がある。注(テラ=兆)
③「野田首相は就任記者会見で、原発新設を『現実的に困難』とし、寿命が
きた原子炉は廃炉にすると述べた。これについて鉢呂経済産業相は、将来
は基本的に『原発ゼロ』になるとの見通しを示した。・・・代替電源を
確保する展望があるわけではないのに、原発新設の可能性を全否定するか
のような見解を示すのは早すぎる」と社説は主張している。これは①の検
証をすれば、どちらが正論なのか、おのずと答えは出るはずである。
④「ストレステスト(耐性検査)を着実に実施し、原発の運転再開を実現する
ことが欠かせない」、と社説は云っている。しかし、ストレステストの具
体的な内容が明確でない。今回の津波による事故は、格納容器に送るポン
プが流されたのが第一の原因である。屋外にボルトとナットで止めただけ
にしていたから流されたのである。コンリ-ト造りの頑丈な建物の中に設置
しておけば、事故は防げたのである。また、電線は地中に埋設して建屋に
引き、臨時の発電機を津波に負けないだけの頑丈なコンクリ-ト造りの建物
の中に設置しておけば、今回の事故は防げたはずである。ストレステスト
や高度の技術以前の怠慢以外の何ものでもない。
④「首相は脱原発を示唆する一方、新興国などに原発の輸出を続け、原子力
技術を蓄積する必要性を強調している。だが、原発の建設をやめた国から
原発を輸入する国があるとは思えない」、と論説は説いている。この主張
は一理ある。しかし、首相は現時点の話をしているのであって、脱原発化
が進めば、反比例するかのように、太陽光、風力、地熱などの発電技術が
進めば、それらの技術を輸出することになるはずである。矛盾することで
はないと考える。
⑤「蓄積した高い技術と原発事故の教訓を、より安全な原子炉の開発などに
活用していくことこそ、日本の責務といえよう」、とも社説は主張してい
る。しかし、除染は思うように行かず、汚染土をどこに、どう処分してい
いのかも分からないような現状で、高い技術に達している、とは云えない。
また、原発事故の教訓は何一つ得ていない。第一、東電をはじめとする電
力会社は、今回の事故を真摯に反省しているような姿勢が見えない。反省し
ているかのようなパフォ-マンスにしか見えない。
⑥「中国やインドなど新興国は原発の大幅な増設を計画している。日本が原
発を輸出し、安全操業の技術も供与することは、原発事故のリスク低減に
役立つはずだ」、と説いている。どこかの国のように、新幹線の高度の技
術を提供しても、使用する国側の論理が優先され、国民の安全など眼中に
ないかのようなお国柄である。原発事故を起こす可能性は大きいのではな
かろうか。
⑦「日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約体制の強化に努め、核
兵器の材料になり得るプルトニュ-ムの利用が認められている。こうした現
状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ」、
とも社説は主張している。第一、原発が国策として利用されてきたのは、
原爆を持ちたい、という自民党の一部の人たちの思惑があってのことであ
ろう。現在のわが国は、「非核三原則」と「武器を輸出せず」、という平
和主義に徹してきたから他国との戦争を避けられたのである。社説は、
「日本は原水爆を持つべきだ」、と聞こえるような気がするのは野僧だけ
であろうか。
⑧国民投票制度を法制化すべきである。脱原発、原発推進も国民投票制度で
国民の意思を確認すべきである。すでに欧州では国民投票を実施している。
日本も制度化すべき時期にきていると思われる。「原発難民」、「ホット
スポット」、「除染問題」、「放射性物質による癌不安」、等々問題は山
積している。第一、雷一つで福島第一原発が爆発しないとも限らない現状
である。また、現在、外部から注水中の水を止めれば、何時間もたたない
うちに爆発するであろう。もしもそうなれば、日本中どこにも避難する場
所はなくなるであろう。高度な技術以前の問題と考える。
問題の本質は、人類の幸福、平和を目的とするのか、利益追求を第一とす
る世界とするのかという根本問題である。野僧は、自分の子や孫を守ってや
りたいという一心で云っているだけである。宮沢賢治は云っている。「世界
全体が幸福にならなければ、個人の幸福はありえない」、と。
に掲載された。これは国民の健康と環境汚染を無視した電力会社の代弁に過
ぎない。公器としての新聞の役割をわきまえない暴論である。
①「原発を再稼動しなければ、来春にはゼロとなる。・・・そうなれば電力
不足は全国平均で9%になる」と説いている。本当であろうか。本欄で何度
も紹介しているように、国際エネルギ-機関(IEA)は、「日本は原子力発電
の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している」、
との見解を示している。世界から公認されている機関が嘘を云うはずがな
い。また、テレビで原発がなくても、十分電力を供給できる」と堂々と主
張するコメンテ-タ-もいる。したがって、IEAなどの見解が本当かどうか、
まず検証する必要がある。
②「不足分を火力発電で補うために必要な燃料費は3兆円を超え、料金に転嫁
すると家庭で約2割、産業では4割近く値上がりするとの試算もある」、と社
説は主張している。一方IEAは、「60テラワット時の不足分すべてを石油火
力発電で補った場合、日量約20万バレル増加する見通し」、と云っている。
いずれにしても、この点も検証する必要がある。注(テラ=兆)
③「野田首相は就任記者会見で、原発新設を『現実的に困難』とし、寿命が
きた原子炉は廃炉にすると述べた。これについて鉢呂経済産業相は、将来
は基本的に『原発ゼロ』になるとの見通しを示した。・・・代替電源を
確保する展望があるわけではないのに、原発新設の可能性を全否定するか
のような見解を示すのは早すぎる」と社説は主張している。これは①の検
証をすれば、どちらが正論なのか、おのずと答えは出るはずである。
④「ストレステスト(耐性検査)を着実に実施し、原発の運転再開を実現する
ことが欠かせない」、と社説は云っている。しかし、ストレステストの具
体的な内容が明確でない。今回の津波による事故は、格納容器に送るポン
プが流されたのが第一の原因である。屋外にボルトとナットで止めただけ
にしていたから流されたのである。コンリ-ト造りの頑丈な建物の中に設置
しておけば、事故は防げたのである。また、電線は地中に埋設して建屋に
引き、臨時の発電機を津波に負けないだけの頑丈なコンクリ-ト造りの建物
の中に設置しておけば、今回の事故は防げたはずである。ストレステスト
や高度の技術以前の怠慢以外の何ものでもない。
④「首相は脱原発を示唆する一方、新興国などに原発の輸出を続け、原子力
技術を蓄積する必要性を強調している。だが、原発の建設をやめた国から
原発を輸入する国があるとは思えない」、と論説は説いている。この主張
は一理ある。しかし、首相は現時点の話をしているのであって、脱原発化
が進めば、反比例するかのように、太陽光、風力、地熱などの発電技術が
進めば、それらの技術を輸出することになるはずである。矛盾することで
はないと考える。
⑤「蓄積した高い技術と原発事故の教訓を、より安全な原子炉の開発などに
活用していくことこそ、日本の責務といえよう」、とも社説は主張してい
る。しかし、除染は思うように行かず、汚染土をどこに、どう処分してい
いのかも分からないような現状で、高い技術に達している、とは云えない。
また、原発事故の教訓は何一つ得ていない。第一、東電をはじめとする電
力会社は、今回の事故を真摯に反省しているような姿勢が見えない。反省し
ているかのようなパフォ-マンスにしか見えない。
⑥「中国やインドなど新興国は原発の大幅な増設を計画している。日本が原
発を輸出し、安全操業の技術も供与することは、原発事故のリスク低減に
役立つはずだ」、と説いている。どこかの国のように、新幹線の高度の技
術を提供しても、使用する国側の論理が優先され、国民の安全など眼中に
ないかのようなお国柄である。原発事故を起こす可能性は大きいのではな
かろうか。
⑦「日本は原子力の平和利用を通じて核拡散防止条約体制の強化に努め、核
兵器の材料になり得るプルトニュ-ムの利用が認められている。こうした現
状が、外交的には、潜在的な核抑止力として機能していることも事実だ」、
とも社説は主張している。第一、原発が国策として利用されてきたのは、
原爆を持ちたい、という自民党の一部の人たちの思惑があってのことであ
ろう。現在のわが国は、「非核三原則」と「武器を輸出せず」、という平
和主義に徹してきたから他国との戦争を避けられたのである。社説は、
「日本は原水爆を持つべきだ」、と聞こえるような気がするのは野僧だけ
であろうか。
⑧国民投票制度を法制化すべきである。脱原発、原発推進も国民投票制度で
国民の意思を確認すべきである。すでに欧州では国民投票を実施している。
日本も制度化すべき時期にきていると思われる。「原発難民」、「ホット
スポット」、「除染問題」、「放射性物質による癌不安」、等々問題は山
積している。第一、雷一つで福島第一原発が爆発しないとも限らない現状
である。また、現在、外部から注水中の水を止めれば、何時間もたたない
うちに爆発するであろう。もしもそうなれば、日本中どこにも避難する場
所はなくなるであろう。高度な技術以前の問題と考える。
問題の本質は、人類の幸福、平和を目的とするのか、利益追求を第一とす
る世界とするのかという根本問題である。野僧は、自分の子や孫を守ってや
りたいという一心で云っているだけである。宮沢賢治は云っている。「世界
全体が幸福にならなければ、個人の幸福はありえない」、と。