広瀬六段が新王位に 23歳で初タイトル、七段に昇格
初のタイトル挑戦。初の二日制。まさかの2局連続千日手。
などなどいろいろあった中で、得意の振り飛車穴熊戦法を連発し、深浦王位との死闘を制しました。
久々の若きタイトル保持者の誕生です。
終局後インタビューを見ても、自分の力を信じて、出し切った、というさわやかさに溢れているし、飄々とした中に大物感も漂っているような気もします。
先日の第68期名人就位式で少しだけお話させてもらったのだけど、本当に礼儀正しいちょっとシャイな普通の青年という感じでした。
どちらにしても30代がずっと中心にいた棋界勢力図に於いて、若手といえば渡辺竜王だけが一人踏ん張っていた構図だったけど、この新王位の誕生でまたちょっと様相が変化しました。
深浦王位もこのままでは終わらないだろうし、またこれに刺激を受けた若手もどんどん殴りこみをかけてくるはず。
直近の王座戦、竜王戦ももちろん楽しみではあるけれど、年間とか、ここ2、3年という大きなスパンで、戦型ということも含めどのように棋界全体が動いていくのか、それもまた注目していきたいと思います。
8月26日の朝日新聞の記事に広瀬六段(当時)のことが出ていたので紹介します。
覆るか「相穴熊なら居飛車」 広瀬六段、王位挑む活躍で注目
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「相穴熊は居飛車有利」とされてきた将棋界の常識が、「四間飛車穴熊」が得意の広瀬章人六段の活躍で、覆るかもしれない。広瀬六段が挑戦中の王位戦の結果次第で、有力戦法と認められる可能性があり、多くの棋士がその戦いに注目している。
「広瀬穴熊」の特徴について、兄弟子の森内俊之九段は「金2枚を玉側に寄せる、守りの手を保留して、より攻撃面に手を回している」と分析する。
研究家で知られる戸辺誠六段も「チャンスがあれば自分もやってみたい」と言う。「漠然とぶつかると居飛車側がよくなると思うが、広瀬さんは序盤で工夫し、さりげなくポイントを稼いでいる。戦い方がうまい」
昔から四間飛車党は、居飛車穴熊対策が課題だった。ここ10年は「藤井システム」がその代表格だったが、現在は下火だ。新たな戦術が待望される中で、広瀬六段が道を切り開けるか。藤井猛九段は「王位戦での広瀬君の頑張りで、形が決まった狭い範囲の定跡では四間飛車側もやれるという見方になりつつある。彼は定跡を確立しているのかもしれない」と話す。
懐疑的な見方もある。振り飛車党の代表格、久保利明二冠は「居飛車穴熊は金銀4枚に角までくっついていて非常に固い。どの振り飛車にも言えるが、相穴熊なら、やはり居飛車が有利では。広瀬六段が羽生名人に勝って注目されたが、王位戦で結果を残せるかどうか」と言う。
居飛車党ながら最近は四間飛車穴熊を試みる丸山忠久九段は「未開分野なので将来性はあると思うが、振り飛車側が有利になるわけでもない。互角か形勢不明のような状態から、経験がものを言う展開がいいところ。居飛車側に対抗策が一つでもあると、振り飛車側は苦しい」。
広瀬六段自身はどう考えるのか。「プロは従来あまり指さない戦型なので、指す人が増えて研究が進むとどうなるか分からない。ただ、左桂が使える形など、展開次第である程度戦えるんじゃないでしょうか」
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今回の王位戦は、フレッシュな新挑戦者を迎えたというだけでなく、「四間飛車穴熊」という戦型の戦いでもあったわけだ。
「相穴熊は居飛車有利」とされてきた将棋界の常識に対する敢然たる挑戦でもあったわけだ。
この新王位の誕生というのは、二つの大きな意味を持つ。
広瀬章人という棋士、人間にフォーカスする意味と、もうひとつは、四間飛車穴熊がタイトルを獲ったという事実。
現代将棋にまた新たな一石が投じられた記念すべきタイトル戦、ということになるのではないだろうか。
この結果をもって、すぐに「相穴熊は居飛車有利」という常識が覆るということはないだろうけど、寄ってたかって総がかりで研究の題材にされるだろうから近いうちに一つの結論ではないけど、方向性が見えてくることになるのであろう。
時代時代に於ける将棋の有力極まりない戦型というものの流れ、その背景。
例えば、藤井システムのように、ある時期爆発的に流行する戦型が生まれる。
そしてその対策がまた講じられ、やがてその流行は終わっていく。
やがては勝又教授のこういう本で取り上げられることになるのだろうか。
梅田望夫さんの言葉を借りれば、
現代の棋士たち(特にトップクラスの若手棋士たち)が、「将棋というゲーム」の真理の探求を総がかりで行う、
ということになる。
それを踏まえて、また新たな現代将棋の歴史が作られていく。
この一局、この一手の凄さ、醍醐味というのももちろんあるけれど、
そんな将棋の大きな蠕動を間近で観戦していられることの幸せ。
広瀬新王位誕生に際して、いろいろな期待が膨らんできてしまいました。
更なる活躍を期待してやみません。
本当におめでとうございました!
初のタイトル挑戦。初の二日制。まさかの2局連続千日手。
などなどいろいろあった中で、得意の振り飛車穴熊戦法を連発し、深浦王位との死闘を制しました。
久々の若きタイトル保持者の誕生です。
終局後インタビューを見ても、自分の力を信じて、出し切った、というさわやかさに溢れているし、飄々とした中に大物感も漂っているような気もします。
先日の第68期名人就位式で少しだけお話させてもらったのだけど、本当に礼儀正しいちょっとシャイな普通の青年という感じでした。
どちらにしても30代がずっと中心にいた棋界勢力図に於いて、若手といえば渡辺竜王だけが一人踏ん張っていた構図だったけど、この新王位の誕生でまたちょっと様相が変化しました。
深浦王位もこのままでは終わらないだろうし、またこれに刺激を受けた若手もどんどん殴りこみをかけてくるはず。
直近の王座戦、竜王戦ももちろん楽しみではあるけれど、年間とか、ここ2、3年という大きなスパンで、戦型ということも含めどのように棋界全体が動いていくのか、それもまた注目していきたいと思います。
8月26日の朝日新聞の記事に広瀬六段(当時)のことが出ていたので紹介します。
覆るか「相穴熊なら居飛車」 広瀬六段、王位挑む活躍で注目
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「相穴熊は居飛車有利」とされてきた将棋界の常識が、「四間飛車穴熊」が得意の広瀬章人六段の活躍で、覆るかもしれない。広瀬六段が挑戦中の王位戦の結果次第で、有力戦法と認められる可能性があり、多くの棋士がその戦いに注目している。
「広瀬穴熊」の特徴について、兄弟子の森内俊之九段は「金2枚を玉側に寄せる、守りの手を保留して、より攻撃面に手を回している」と分析する。
研究家で知られる戸辺誠六段も「チャンスがあれば自分もやってみたい」と言う。「漠然とぶつかると居飛車側がよくなると思うが、広瀬さんは序盤で工夫し、さりげなくポイントを稼いでいる。戦い方がうまい」
昔から四間飛車党は、居飛車穴熊対策が課題だった。ここ10年は「藤井システム」がその代表格だったが、現在は下火だ。新たな戦術が待望される中で、広瀬六段が道を切り開けるか。藤井猛九段は「王位戦での広瀬君の頑張りで、形が決まった狭い範囲の定跡では四間飛車側もやれるという見方になりつつある。彼は定跡を確立しているのかもしれない」と話す。
懐疑的な見方もある。振り飛車党の代表格、久保利明二冠は「居飛車穴熊は金銀4枚に角までくっついていて非常に固い。どの振り飛車にも言えるが、相穴熊なら、やはり居飛車が有利では。広瀬六段が羽生名人に勝って注目されたが、王位戦で結果を残せるかどうか」と言う。
居飛車党ながら最近は四間飛車穴熊を試みる丸山忠久九段は「未開分野なので将来性はあると思うが、振り飛車側が有利になるわけでもない。互角か形勢不明のような状態から、経験がものを言う展開がいいところ。居飛車側に対抗策が一つでもあると、振り飛車側は苦しい」。
広瀬六段自身はどう考えるのか。「プロは従来あまり指さない戦型なので、指す人が増えて研究が進むとどうなるか分からない。ただ、左桂が使える形など、展開次第である程度戦えるんじゃないでしょうか」
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今回の王位戦は、フレッシュな新挑戦者を迎えたというだけでなく、「四間飛車穴熊」という戦型の戦いでもあったわけだ。
「相穴熊は居飛車有利」とされてきた将棋界の常識に対する敢然たる挑戦でもあったわけだ。
この新王位の誕生というのは、二つの大きな意味を持つ。
広瀬章人という棋士、人間にフォーカスする意味と、もうひとつは、四間飛車穴熊がタイトルを獲ったという事実。
現代将棋にまた新たな一石が投じられた記念すべきタイトル戦、ということになるのではないだろうか。
この結果をもって、すぐに「相穴熊は居飛車有利」という常識が覆るということはないだろうけど、寄ってたかって総がかりで研究の題材にされるだろうから近いうちに一つの結論ではないけど、方向性が見えてくることになるのであろう。
時代時代に於ける将棋の有力極まりない戦型というものの流れ、その背景。
例えば、藤井システムのように、ある時期爆発的に流行する戦型が生まれる。
そしてその対策がまた講じられ、やがてその流行は終わっていく。
やがては勝又教授のこういう本で取り上げられることになるのだろうか。
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梅田望夫さんの言葉を借りれば、
現代の棋士たち(特にトップクラスの若手棋士たち)が、「将棋というゲーム」の真理の探求を総がかりで行う、
ということになる。
それを踏まえて、また新たな現代将棋の歴史が作られていく。
この一局、この一手の凄さ、醍醐味というのももちろんあるけれど、
そんな将棋の大きな蠕動を間近で観戦していられることの幸せ。
広瀬新王位誕生に際して、いろいろな期待が膨らんできてしまいました。
更なる活躍を期待してやみません。
本当におめでとうございました!
もともと棋士仲間の評価は低く、王位だけならいいけど、二冠以上穫るのはちょっといやだね……と公言する棋士もいたほどです。
来年度はB2も有りではと思ってます。
実際、羽生や渡辺がその前に敗れ去っているわけですから
そんなことを言うと、渡辺竜王は竜王だけ男、森内十八世名人は名人だけ男になってしまいますけれどね。
>残念ながら深浦九段はもう終わったのではないでしょうか?
このままもう表舞台には現れないのかどうか。
いや、かなりしぶといというか、まだまだ活躍すると思います。
羽生さん相手の王位戦でのあの戦い方を見てると、このまま下降していくとは思えません。
☆くっち~さん、こんばんは。
>この七番勝負まで深浦九段は8勝9敗、決して絶不調ではありませんでした。
実際、羽生や渡辺がその前に敗れ去っているわけですから
そうですね。
不調といえば、順位戦だけですものね。
どちらにしても、これからの深浦さんの戦いぶりが楽しみです。