もう竜王戦も始まってしまって機を逸した感はありますが、つい先日終わった王座戦の話です。
昨年の悔しいリベンジを果たすべく、羽生二冠が挑戦者に名乗りを上げました。
そして行われた第60期王座戦五番勝負。
つい先日の第四局、千日手指し直しの末、深夜二時までの激闘を制し、羽生二冠が3勝1敗でタイトルを奪取しました。
これで三冠、そして通算20期目の王座獲得となり、同一タイトル獲得記録で歴代1位の大山十五世名人に並んだということです。
羽生さん、本当におめでとうございました
先日、羽生世代の時代という記事を書きましたが、これで羽生世代のタイトルは6冠になり、さらに強力な世代力、アラフォーパワーを発揮しそうな展開になりました。
この王座戦、棋界を代表するこの二人の対戦、今後の棋界勢力図を占う重要な一戦ということで僕も含めて全国の将棋ファンはかなりの盛り上がりを見せました。
関連ブログを紹介させてもらいます。
棋界ブログの巨匠、shogitygooさんはこの王座戦についても毎局相変わらず素晴らしい記事を連発しています。
(王座戦だけでもたくさんありすぎて載せきれないです。)
羽生ファンの英さんは、やったぁ!、王座復位、王座戦第4局の二つの記事。
渡辺ファンのssayさんの記事は第60期王座戦五番勝負第4局千日手指し直し局は羽生二冠が勝ち、王座に復位。
このssayさんの記事を一部紹介させてもらいます。
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今回の五番勝負、ターニングポイントは第2局だったような気がする。
あそこでもし、あきら竜王が勝っていたら、羽生三冠に苦手意識が刷り込まれていた可能性はあったと思う。
苦手意識と言っても、そんなに意識的なものではなく、無意識のうちに何となく嫌に感じる程度のものであろうが。
だって、「将棋力」では、羽生三冠の方が明らかに上だもの。
あの勝負、外野が言うほど、あきら竜王が勝ちやすい将棋だったとは思えない。
(控え室の検討の先生方、偉そうに申し訳ございません。)
と言いますか、究極のオールラウンダーですよね、しかし。
模様として、居飛車穴熊の方が勝ちやすいというのは定説だし、そりゃそうだろう。
しかし、イビ穴の急所を知り尽くしているというような攻略法。
イビ穴に対して、あれだけ見事な指し回しの出来る振り飛車党の人もいないでしょう。
それが、珍しくというか久しぶりに飛車を振ったと思ったら、あの指し回しですもの。
あれ、将棋連盟のどの棋士が居飛車側を持っても、負けますよ。
更にショックだったのが、序盤作戦に角交換振り飛車を持ってきたこと。
ぼくが述べるまでもなく、おそらく藤井九段との王位戦で、手応えというか可能性を感じたのでしょう。
なんという、なんというお方でしょう。
この第2局以降、一気に流れは羽生二冠へ。
そしてたった1期で王座に復位。
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内容的に第2局がターニングポイントだったというssayさんの主張、完全同意します。
第一局の展開を見ていて、羽生さんにとっては、どうもこれは厳しいかな、やはり他の棋士はともかく、渡辺竜王だけは一筋縄ではいかないのかな、という印象でした。
実は王座戦第二局の対局前日、たまたま横浜に行っていました。
対局のあった横浜ロイヤルパークホテルのすぐそば、横浜美術館です。
ご覧の通り、多少暑かったものの最高の天気です。
妻が前から行きたいと言っていたので、奈良美智展を二人で見に行きました。
そして見終わって美術館からランドマークの方に向かってぶらぶら戻ろうとした時、向こうから見たことある人が歩いてきました。
目を疑いましたが、そういえばここに現れても不思議ではない、ということはこれは真実であり夢ではない、と思い返しました。
羽生さんが一人でこちらに向かって歩いてきていたのです。
半袖白ワイシャツにノーネクタイ、そして、手ぶらです。
えっ。マジ?
とっさに、さあ、次の一手は?と自分に問いかけましたが、これはもうノータイムでこの一手。
『あっ、羽生さん。』と話しかけてしまいました。
就位式その他で一度ならずお話させてもらったことはあると言えばある。
が、覚えてくれていようがいまいがこの際どっちでもいい。
しばしお話させてもらいました。
ちょうど検分前の空き時間だったらしく、横浜は久しぶりだったのでちょっと散歩に、ということで。
なんという偶然。
タイトル戦対局前日、ホテルにチェックインした後、緊張感が高まる環境で直接サシでお話しできるとは・・・。
こんな夢のようなことってあるんでしょうか。
明日、がんばってください!と力強く目をしっかり見つつ伝えて別れた後、歩き始めてから、あっ、写真撮ればよかった、と思ったけど今さらまた戻るわけにもいかない。
ってことで、振り返って撮った写真がこれ。
ゆったりと、ゆうゆうと、淡々と、明るい日差しを浴びながら、ほんのひとときの自由を楽しんでいる羽生さんです。
明るい日差しを、海からの風を、周りを歩いている人たちや風景を眺めながらゆったり自然体で楽しんでいる。
みなとみらいの澄んだ空気感をゆっくり味わっている。
ほんの短時間の充実したひとときなのだけど、それを気持ちの中にしっかり取り込んで、自分のエネルギーにしている。
そんな感じがしました。
“玲瓏”という言葉がぴったりの姿。
神々しい感じさえしました。
実はその時妻も一緒にいたのですけど、僕よりほんのちょっと前を歩いていました。
興奮しつつ、『つい、今、羽生さんと会っちゃったよ。』と言ったら、『えー、ずるい、私も会いたかったのに!何で呼んでくれなかったの?あなたが離れて歩いてるからいけないんでしょ!こんなチャンスはもう一生ないじゃない!』と責められる責められる。
ま、家庭内のことはともかく、僕にとって一生忘れられない写真、そして思い出になりました。
そして、このロイヤルパークホテルで行われた王座戦第二局。
翌日の対局ではどれだけ必死で応援したことか。
渡辺王座がしっかり穴熊に囲って態勢を整えつつあるのに一人千日手を繰り返している羽生さんを見て、これで大丈夫なのかな、とわからないながらも心配し、こんな応援したことないくらい祈るように精一杯の念を送り続けました。
対局前に気持ちを落ち着けるために散歩に出たら、能天気なオヤジファンに話しかけられて、そのために対局も調子が狂った、なんてことになったら大変ですもの。(そんなことないか?!)
で、これが効いたんですね。間違いないです。
この第二局勝利がターニングポイントになり見事王座復位を果たした。
めでたくも間違いなく僕が勝利の女神なわけです。
はい、言い過ぎかつ勘違いなことは重々承知なのですが、そう思いたいんです。
そう思ったら自分がハッピーです。
誰も人に迷惑かけてないし。
自分さえよければいいんです。(笑)
ということでこの光の中に天から舞い降りたかのような写真。
すごく気に入ってます。
最近知ったのだけど、《神瞰》って言葉があります。
大局的な観点の《鳥瞰》と小局的な観点の《虫瞰》だけでなく、同じ平面上では解決がつかない虚空の彼方から見下ろしてみる視点のことで、要は状況によって視点を自由に動かして見られることです。
ここにきてまた強くなった感のある羽生さんの大局観は、単に上空から全体を見渡せるという領域を超えて、神瞰的になっているのではないかと思えます。
見事王座復位で三冠になった羽生さん。
王将戦、棋王戦、名人戦と続くこれからの道も、この散歩のような雰囲気で、自由に、ゆったりと、澄み切った気持ちで、楽しみながら淡々と勝ち抜いていくのではないかと期待しています。
昨年の悔しいリベンジを果たすべく、羽生二冠が挑戦者に名乗りを上げました。
そして行われた第60期王座戦五番勝負。
つい先日の第四局、千日手指し直しの末、深夜二時までの激闘を制し、羽生二冠が3勝1敗でタイトルを奪取しました。
これで三冠、そして通算20期目の王座獲得となり、同一タイトル獲得記録で歴代1位の大山十五世名人に並んだということです。
羽生さん、本当におめでとうございました
先日、羽生世代の時代という記事を書きましたが、これで羽生世代のタイトルは6冠になり、さらに強力な世代力、アラフォーパワーを発揮しそうな展開になりました。
この王座戦、棋界を代表するこの二人の対戦、今後の棋界勢力図を占う重要な一戦ということで僕も含めて全国の将棋ファンはかなりの盛り上がりを見せました。
関連ブログを紹介させてもらいます。
棋界ブログの巨匠、shogitygooさんはこの王座戦についても毎局相変わらず素晴らしい記事を連発しています。
(王座戦だけでもたくさんありすぎて載せきれないです。)
羽生ファンの英さんは、やったぁ!、王座復位、王座戦第4局の二つの記事。
渡辺ファンのssayさんの記事は第60期王座戦五番勝負第4局千日手指し直し局は羽生二冠が勝ち、王座に復位。
このssayさんの記事を一部紹介させてもらいます。
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今回の五番勝負、ターニングポイントは第2局だったような気がする。
あそこでもし、あきら竜王が勝っていたら、羽生三冠に苦手意識が刷り込まれていた可能性はあったと思う。
苦手意識と言っても、そんなに意識的なものではなく、無意識のうちに何となく嫌に感じる程度のものであろうが。
だって、「将棋力」では、羽生三冠の方が明らかに上だもの。
あの勝負、外野が言うほど、あきら竜王が勝ちやすい将棋だったとは思えない。
(控え室の検討の先生方、偉そうに申し訳ございません。)
と言いますか、究極のオールラウンダーですよね、しかし。
模様として、居飛車穴熊の方が勝ちやすいというのは定説だし、そりゃそうだろう。
しかし、イビ穴の急所を知り尽くしているというような攻略法。
イビ穴に対して、あれだけ見事な指し回しの出来る振り飛車党の人もいないでしょう。
それが、珍しくというか久しぶりに飛車を振ったと思ったら、あの指し回しですもの。
あれ、将棋連盟のどの棋士が居飛車側を持っても、負けますよ。
更にショックだったのが、序盤作戦に角交換振り飛車を持ってきたこと。
ぼくが述べるまでもなく、おそらく藤井九段との王位戦で、手応えというか可能性を感じたのでしょう。
なんという、なんというお方でしょう。
この第2局以降、一気に流れは羽生二冠へ。
そしてたった1期で王座に復位。
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内容的に第2局がターニングポイントだったというssayさんの主張、完全同意します。
第一局の展開を見ていて、羽生さんにとっては、どうもこれは厳しいかな、やはり他の棋士はともかく、渡辺竜王だけは一筋縄ではいかないのかな、という印象でした。
実は王座戦第二局の対局前日、たまたま横浜に行っていました。
対局のあった横浜ロイヤルパークホテルのすぐそば、横浜美術館です。
ご覧の通り、多少暑かったものの最高の天気です。
妻が前から行きたいと言っていたので、奈良美智展を二人で見に行きました。
そして見終わって美術館からランドマークの方に向かってぶらぶら戻ろうとした時、向こうから見たことある人が歩いてきました。
目を疑いましたが、そういえばここに現れても不思議ではない、ということはこれは真実であり夢ではない、と思い返しました。
羽生さんが一人でこちらに向かって歩いてきていたのです。
半袖白ワイシャツにノーネクタイ、そして、手ぶらです。
えっ。マジ?
とっさに、さあ、次の一手は?と自分に問いかけましたが、これはもうノータイムでこの一手。
『あっ、羽生さん。』と話しかけてしまいました。
就位式その他で一度ならずお話させてもらったことはあると言えばある。
が、覚えてくれていようがいまいがこの際どっちでもいい。
しばしお話させてもらいました。
ちょうど検分前の空き時間だったらしく、横浜は久しぶりだったのでちょっと散歩に、ということで。
なんという偶然。
タイトル戦対局前日、ホテルにチェックインした後、緊張感が高まる環境で直接サシでお話しできるとは・・・。
こんな夢のようなことってあるんでしょうか。
明日、がんばってください!と力強く目をしっかり見つつ伝えて別れた後、歩き始めてから、あっ、写真撮ればよかった、と思ったけど今さらまた戻るわけにもいかない。
ってことで、振り返って撮った写真がこれ。
ゆったりと、ゆうゆうと、淡々と、明るい日差しを浴びながら、ほんのひとときの自由を楽しんでいる羽生さんです。
明るい日差しを、海からの風を、周りを歩いている人たちや風景を眺めながらゆったり自然体で楽しんでいる。
みなとみらいの澄んだ空気感をゆっくり味わっている。
ほんの短時間の充実したひとときなのだけど、それを気持ちの中にしっかり取り込んで、自分のエネルギーにしている。
そんな感じがしました。
“玲瓏”という言葉がぴったりの姿。
神々しい感じさえしました。
実はその時妻も一緒にいたのですけど、僕よりほんのちょっと前を歩いていました。
興奮しつつ、『つい、今、羽生さんと会っちゃったよ。』と言ったら、『えー、ずるい、私も会いたかったのに!何で呼んでくれなかったの?あなたが離れて歩いてるからいけないんでしょ!こんなチャンスはもう一生ないじゃない!』と責められる責められる。
ま、家庭内のことはともかく、僕にとって一生忘れられない写真、そして思い出になりました。
そして、このロイヤルパークホテルで行われた王座戦第二局。
翌日の対局ではどれだけ必死で応援したことか。
渡辺王座がしっかり穴熊に囲って態勢を整えつつあるのに一人千日手を繰り返している羽生さんを見て、これで大丈夫なのかな、とわからないながらも心配し、こんな応援したことないくらい祈るように精一杯の念を送り続けました。
対局前に気持ちを落ち着けるために散歩に出たら、能天気なオヤジファンに話しかけられて、そのために対局も調子が狂った、なんてことになったら大変ですもの。(そんなことないか?!)
で、これが効いたんですね。間違いないです。
この第二局勝利がターニングポイントになり見事王座復位を果たした。
めでたくも間違いなく僕が勝利の女神なわけです。
はい、言い過ぎかつ勘違いなことは重々承知なのですが、そう思いたいんです。
そう思ったら自分がハッピーです。
誰も人に迷惑かけてないし。
自分さえよければいいんです。(笑)
ということでこの光の中に天から舞い降りたかのような写真。
すごく気に入ってます。
最近知ったのだけど、《神瞰》って言葉があります。
大局的な観点の《鳥瞰》と小局的な観点の《虫瞰》だけでなく、同じ平面上では解決がつかない虚空の彼方から見下ろしてみる視点のことで、要は状況によって視点を自由に動かして見られることです。
ここにきてまた強くなった感のある羽生さんの大局観は、単に上空から全体を見渡せるという領域を超えて、神瞰的になっているのではないかと思えます。
見事王座復位で三冠になった羽生さん。
王将戦、棋王戦、名人戦と続くこれからの道も、この散歩のような雰囲気で、自由に、ゆったりと、澄み切った気持ちで、楽しみながら淡々と勝ち抜いていくのではないかと期待しています。
オファー、ありがとうございます。
上野先生とは以前二人だけで飲んだことがありぜひとも参加したいのですけど、その日は予定があって無理なんです。すみません。また別の機会に一杯やれればと思います。よろしくお伝えください。
そのときに、上野先生を呼んで出版記念を祝おうとしてるわけ。
5時に数寄屋橋公園集合なんだけど、都合がよければいらしてください。
すっかりご無沙汰です。
>天孫降臨・・・神・・・
いや、マジにそんな気がしてきますね。
ぜひ一杯やりつつそんな話もしたいので、近々の解説会でお目にかかりましょう。
>羽生さんのひとり千日手(作戦失敗)は、前日に変なおじさんに話しかけられたからということが判明しました。納得、納得(笑)
どこかの観戦記に真実はこういうことだった、なんて告発、じゃない、真相解明したりしてないのかな。確か、矢内さんでしたよね、この観戦記は。
>羽生さんのあの頑張りも、苦しい時にnanaponさんの顔が浮かんで気を取り直したからかもしれませんね。
はい、それに違いないです。あんな変なオヤジに話しかけられたことで負けるなんて、そんなバカバカしい結末にはしたくない、と必死に頑張ったからです。(笑)
>写真も素晴らしい。悠々とそして清廉な空気が、羽生さんから放射されているかのように感じます。
はい、ただこの機を逃したくないと必死にシャッター押しただけなんですけどね。偶然の名作。
>そうなんです。私も同様なイメージを持ちました。天子が地上に舞い降りてきて散歩しているんじゃないかと思わせる羽生さんの後姿。いいです。(これは、引用したnanaponさんの文章を読む前に感じました)
皆、この写真見たらそう思いますよね。
>将棋を構築しているという感じがします。棋王戦、王将戦、順位戦(名人)と棋界制覇の道が続きますが、それよりも純粋に郷田棋王、佐藤王将、森内名人との将棋を見たいと思っています。もちろん、勝ち将棋。
この3つとも行けそうな気がします、マジで。
そうなるとあとは来年の竜王戦で七冠+永世七冠ですよ。どうしましょう、えらいこっちゃ。
羽生さんのひとり千日手(作戦失敗)は、前日に変なおじさんに話しかけられたからということが判明しました。納得、納得(笑)
なんて、うらやましい!
羽生さんと、しかも、タイトル戦の前日の羽生さんと話が出来るなんて。
羽生さんのあの頑張りも、苦しい時にnanaponさんの顔が浮かんで気を取り直したからかもしれませんね。
写真も素晴らしい。
悠々とそして清廉な空気が、羽生さんから放射されているかのように感じます。
>ということでこの光の中に天から舞い降りたかのような写真。
そうなんです。私も同様なイメージを持ちました。
天子が地上に舞い降りてきて散歩しているんじゃないかと思わせる羽生さんの後姿。いいです。(これは、引用したnanaponさんの文章を読む前に感じました)
>ここにきてまた強くなった感のある羽生さんの大局観は、単に上空から全体を見渡せるという領域を超えて、神瞰的になっているのではないかと思えます。
これも同感です。
将棋を構築しているという感じがします。棋王戦、王将戦、順位戦(名人)と棋界制覇の道が続きますが、それよりも純粋に郷田棋王、佐藤王将、森内名人との将棋を見たいと思っています。もちろん、勝ち将棋。