即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

電王戦の行方

2014年09月15日 00時20分11秒 | 将棋
このタイトル、別に電王戦に行方八段が出るということではないです。(いや、出るかも?)
次回の電王戦の発表もあり、これから電王戦はどうなっていくのか、ということで電王戦の今後の行方を考えてみます。

2015年春「将棋電王戦FINAL」開催、2016年「電王戦タッグマッチ」の本格開催が決定

さて、今まで電王戦についての記事をどれだけ書いたことでしょうか。

今年の電王戦関連記事はこちら。
<作戦間違い@電王戦>
<その2>
<その3>
<その4>
<その5>
<その6>
<その7>
<その8>
もしも羽生さんよりも数倍強いコンピュータソフトができたら
電王戦その後
羽生さんとコンピュータ将棋
人間に残されたもの
棋界における機械の機会

昨年の記事はこちら。
電王戦考察
電王戦考察・その2
電王戦考察・その3
電王戦考察・その4
電王戦考察・その5
電王戦考察・その6

もうおなかいっぱいです。
これだけいろいろ書いてしまった背景には、僕らの好きな将棋がどうにかなってしまわないだろうかという危機感とか不安が大きく渦巻いていることが原因です。
一ファンとして、プロ棋士を凌いでどんどん強くなっている将棋ソフトとの付き合い方を間違えた時のリスクを想定し、心配で心配で眠れない夜を過ごしています。

さて、今回の発表で、来春行われる(えっ、まだやんの?)恒例の5対5の団体戦はいよいよこれでお終いになるとのことです。
もう興味ないのでどうでもいいですけど。

そして、団体戦が成立しなくなったので、代わりに人とコンピュータがタッグを組む電王戦タッグマッチという苦肉の策を編み出したようです。
対決から共存の路線です。
共存と言えばかっこいいけど、なんだか指し手がおかしくないですか。

棋士が一生懸命自力で考えていて、ひとたび難しい局面になるとタッグを組んだコンピュータに指し手を聞く。頼りにする。

タッグマッチって、まるでカンニングじゃないの。

一目筋が悪い。味が悪い。
直感的に読みから外すような指し手に見えます。

何が何でも、筋が悪くても、どうしても続けたいんですね。
しかも多額の賞金付きだって。

本気でやるの?

棋士も含めいろいろな人の意見を聞いたり、本当に議論しつくした末の結論なのでしょうか。
これをやった時のリスク、デメリット、などしっかりシミュレーションして考え抜いた末の最善手、と自信を持って思っているのでしょうか。

あー、またいろいろ言いたくなってきた。

と思ってたら、先日棋界関係者からやっと心強い意見が発信されました。
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橋本八段のtweet。

言いたいことがあり過ぎるな

この棋戦?の趣旨は何なんでしょう、スポンサーの意向?話題性?プロはコンピューターに勝てないので、異なる形で電王戦存続しましょうってこと?意味わからん

事情が何かは知らんが、プロがソフト指し推進しちゃアカンでしょ。恥を知りなはれ

あまりにもバカげた企画で、怒りを通り越して呆れちゃったね。ごく一部でも、こういうのを面白いと勘違いしている奴が同じ棋士にいると思うと情けない。大半の棋士はまっとうな感覚を持った良識ある人間だと信じたいっす

将棋の素晴らしさを伝え、棋士って格好いいなとファンに夢を与えるのが我々の仕事です。これからは自分の仕事は自分で守っていかないと、人生をかけてやってきた将棋というゲームは金稼ぎの道具かオモチャになり下がりますね。この件については、私は反対運動を起こします。


そして、観戦記者の小暮克洋さんの連続tweet。

いささか悪ふざけが過ぎ、冷静さを欠いているのではないか。2016年から非公式戦として開始されると発表された非公式戦「電王戦タッグマッチ」のことである。棋士とコンピュータソフトがペアを組み、ソフトが示す指し手を棋士が取捨選択しながら対局を進めるというルールで巨額賞金を争う。

週刊将棋の報道によれば「竜王戦、名人戦に次ぐ賞金を用意しています」とある。日本将棋連盟の理事サイドとしては、先行きが不透明なこのご時世で、破格の契約金を引っ張ってくることができたのは喜ばしく、会員にも手放しで、よくやった、と言われたい、という意識が根底にあることだろう。

だが、本当に、いいのか。将棋界の末端にいる私のような人間がはなはだ僭越ではあるのだが、私が愛してきた将棋界の将来を考えた場合、ここはちゃんと自らの意見を表明すべきという結論に達した。棋士の魂は? 誇りは? 使命感は? 矜持は? 気高さは? 本当にこれでいいのか? と。

一企業としてのスポンサーサイドに立てば、面白おかしく世間の注目を集め、将棋ファンの皆が楽しんでくれれば本望という理屈はわかる。だから、ドワンゴさんには、私は何のうらみも文句もない。だが、プロ集団の日本将棋連盟はどうか。今回のルールは「カンニングを正当化する棋戦」なのが問題だ。

こんな安易で楽チンな棋戦を認めちゃいけない、と私は思う。もちろん、理事の皆さんも一生懸命に将棋界のことを考えた末の結論には違いない。だが、いくらお金を引っ張ってきても、物事にはやっていいこととやっていけないことがあるはずだ。

日本相撲協会に新たなスポンサーが現れて、巨額の契約金と引き換えに、グローブの着用もOKということになっても誰も喜ばないし、暴動が起こることだろう。それと同じレベルの愚挙に日本将棋連盟は走ろうとしているように、私には思える。

私は、やっていいこととやっていけないことがある、と書いた。理事側の論理でいえば、私とは少々基準が違い、この程度はやっていいことと考えていることになる。非公式戦の遊びで何億も頂戴できるなんて、望外の喜び。しかも、この程度は許容される範囲内であるという認識なのだろう。

だが、本当にそうか。将棋のプロとしてのモラルの問題もさることながら、金さえもらえばカンニングもOKという判断の危うさ以外にも、直観的にやばいな、と感じる論点はいろいろある。

まず、公益に資することを成り立ちの条件とする公益社団法人としての存立に関わるリスクだ。優勝賞金が何千万かはわからないが、こんな遊びで不相応なお金をばらまくことが許されるのか。公益に反する行為を日常的に行っているとすれば、認可の取り消しも危惧しなくてはいけないのではないか。

加えて、一部の棋士だけに特権的に参加が許され、一攫千金が果たせる射幸性の高さが危うい。はっきり言ってソフトの意見に従えば、クレヨンしんちゃんだって羽生名人に勝てるチャンスが生まれる。それをプロ中のプロの日本将棋連盟に所属する棋士のみが努力もなしに、莫大な利益を享受できるのだ。

もとより棋士という職業は盤上でどれだけ苦しくとも、歯を食いしばって頑張って頑張り抜いて、全責任をたった一人で受け入れるところに世の中の人たちから尊敬を浴びる存在理由が生まれる。難関の奨励会を潜り抜け、その先に待っているのが賭博的な要素の強い「おいしい地位」というのでは悲しい。

いままで側面から支えてくれている、新聞社等のスポンサーサイドからすればどうだろうか。地道に真面目に戦う棋士たちを、全面的にバックアップしてくれた大切な彼らの存在をも、真正面から裏切ることになるまいか。この浮かれた遊びが序列第3位の賞金額というのでは、つらい仕打ちではないか。

日本将棋連盟が、この十数年、力を入れている、将棋普及を通じた少年少女への教育問題の影響はどうだろうか。真面目に努力する姿なしに、憧れの棋士たちが安直な大金を手にして満面の笑顔を浮かべるのを目の当たりにして、彼ら、彼女たちはどう思うだろうか。

私が、あまりに拝金主義に心を奪われ、やってはいけない禁じ手と考えるこの棋戦についても、もちろん賛否両論はあるだろう。私は自分と意見の違う人たちを軽蔑もしないし、異論の存在は認める。それぞれの立場の違いからくる苦悩の末の判断の相違も、おそらくあるだろうから。

しかし、一万歩譲っても、これだけの将棋界に大変革をもたらすような棋戦成立について、あまりにも物事があっさりと順調に進みすぎていることが、私は何より怖い。上から降ろされて、反対意見は封殺されながら、報告レベルで淡々と意思決定がなされているようなプロセスが、私は怖い。

棋士の存在価値が問われるような大問題を、内外の意見を聞きながら皆が喜ぶ形で推進していこうという雰囲気になっていないことを、私は憂える。ドワンゴさんだって、いくらお祭りが好きといったって、冷静に棋士の論理をぶつければ何かいい解決方法、落としどころが見つかる可能性は大いにあろう。

そういう危機感をともに共有しながら、互いに意見をぶつけ合いながら、慎重に新棋戦の導入を検討してきたとは、私には思えない。棋士の一人ひとりの意見が違うことは、私はこの団体の誇るべき財産のひとつと常々思っている。そして各自がそれぞれを尊重しあう。当たり前のようで、難しいことだ。

しかし、何となくこの数年、異論を徹底的に抑える方向にこの組織が少しずつ変わってきているように見えるのを、私はとても残念に思う。下位の者が上位の者に頭が上がらず、面従する傾向が強いのもこの団体特有の特徴ではあるのだが。

部外者で何の力もなく、いままで政治的な意見表明はことごとく避けてきた私だが、今回は、後世の歴史家の評価にまで思いをはせつつ、どうしても、いてもたってもいられなくなった。どうか棋士の皆さん全員で、この問題についてはしっかりと議論を尽くしていただきたいと、心から願うばかりである。
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それにしても小暮さんの意見は僕と違って冷静沈着だし、客観的だし、多角的に検証されているし、いわゆる業界のいろんなことを知っている賢人なので納得できるし共感できる。

小暮さんの言われるようにもちろん違う意見もあってもいいけど、今回の理事会の判断にはどうには納得がいかないし、スポンサーを大事にすることを優先させた密室政治のような匂いもしてしまう。
ファンの意見、そして、将棋を愛する有識者の意見も含め、意見交換会などオープンに議論できるような場を作るとか、開かれた棋界となって、よりファンが喜ぶ次の一手を考えるべきではなかったのだろうか。

まずやることは、5年後、10年後の将棋はどうなっていたいのか、のビジョンを明確にすることだと思う。
当然コンピュータとの関係性のことも含め、よりファンに愛される将棋、棋界、というものをどう作っていけばいいのかをいろんな人を巻き込んで議論していくことだと思う。

棋士が困った時、難解な局面でコンピュータに考えてもらう、コンピュータを頼りにする。
棋士よりも年々加速度的に強くなっていくコンピュータとそのような付き合い方を進めて行ったらこの先どうなっていくのだろう。

過去の名局とされたタイトル戦などの将棋も、何でもわかるコンピュータに諮ったら全然違う答えが出るのかもしれない。
ファンを感動させた歴史的なあの新手や驚愕の一手が、実は大したことはない、他にもっと有力な手があった、などという結論になってしまうのかもしれない。

衆知を集めた最大限の想像力を働かせ、この先コンピュータとどのように付き合っていくのか、大局観をもとに冷静に次の一手を指してほしいと願っています。
そして今回の判断が悪手、敗因の一手にならないことを心から祈っています。
コメント (6)
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