普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

NHKと「35歳を救え あすの日本」

2009-05-07 15:35:09 | 政策、社会情勢

 最近、NHKは大きな問題をまきおこしたJAPANデビューの「アジアの一等国」、同「天皇と憲法」、「憲法9条と安全保障」など野心的な報道をしており、その度に私の感想を書いてきましたが、昨夜久しぶりに前向きで公平な放送を見ました。
 それはNHKスペシャル「35歳を救え あすの日本 未来からの提言」
です。

[30歳台の人達の抱えている問題点]
 その概要は番組案内によると、
 日本は今、非正規社員に加えて正社員もいつ失業するか分からない、「大失業時代」に突入しようとしている。
 将来どうなるのか。今後20年に渡って社会の中核を担う35歳1万人にアンケートを行い、「20年後の日本」をシミュレーションしたところ、中間層の崩壊が急加速することが明らかになった。これからの日本を支える今の30代が安定した収入を得られず、家庭や子供を持てないと、税収や消費が落ち込む一方で福祉コストが嵩む超コスト負担社会になり、日本は衰退を免れない。

  ここでは今の30代の人達が定年を迎える20年後には、経済の成長率は現在の数字の横ばいか低下、年金額が今より約20%減、消費税18%、社会福祉のサービス減少、今の30代の人達の出生率が0.8%しか無いことから想像される超小子化時代の到来が予測がされていました。

[問題点解決の対策]
 国内外の取材で見えてきたのは、雇用の流動化を前提にしたセーフティーネットやスキルアップ支援などの雇用対策に加え、子育てや教育、住宅支援などを合わせた総合的な新しい社会システムの構築が不可欠ということだ。こうした人に投資する具体的な対策をすぐに行えば、中間層の崩壊は食い止められ、超コスト負担社会を回避できることが未来シミュレーションでも裏付けられた。「大失業時代を」をどう乗り越え、将来に希望が持てる日本を創るか、徹底取材を元に解決への道を探る。
 その生活支援の例として岡山県の山村を取り上げ、格安の家賃の住宅と木工細工や山林の整備など職業の提供で都会から多くの若いカップルを受け入れ村の活性化に繋がった例を挙げていました。
 その提案後、「アジアの一等国」担当者の主張に沿う様に「編集」したのと違って、NHKの提案についての専門家の「これは地方の山村だからできることで、首都圏近農村などでは当てはまらないと言う」番組の批判とも取れる意見を放送していました。
 スキルアップ支援の支援の例では、イギリスの例を取り上げ、民間団体に離職者の訓練から、入社活動の支援まで出来高制で請け負わせることでインセンティブを与えていることで上手くいっていることを放送していました。
 その一方で正直にイギリスの失業率は日本のそれより悪いという注釈も入れていました。 
 そして全体的な種の対策を進めたあとの、シュミレーションの結果によると、日本経済は政府の予測のような成長率を維持し、数々の問題も解決できるだろうと説明していました。
 この結果に付いても、専門家の「日本の場合は実際的に提案を上手く昨日させるには、かなりの予算処置が伴うだろう」とやや批判的な意見も放送していました。

 [私の意見]
・職業訓練を受けた人が正社員になるとは限らない?
 全体的には非常に良心的な放送で評価すべきだと思いますが少し問題点もあるようです。
 例えば、職業訓練によりスキルをアップすれば、全てが正社員になると言う前提でシュミレーションしている様です。
 しかし、労働者派遣法という麻薬を与えられた後の、企業経営者の動きから見ているとなかなかそうは行かないような気がします。
 今回のリストラ問題で悪名を轟かせた、経団連会長でキャノンの社長の御手洗冨士夫さんを始めとする企業の幹部が、途中入社希望の人達がいくら技術を持っていても、全て正規社員にするとは限らないと言うより、その可能性のほうが少ないと思います。
 何故なら中国に加えてインドなどの台頭で競争がなお厳しくなり、低賃金でいつでも首の切れる非正規社員の採用という麻薬の魅力から脱却出来そうにもないからです。
 非正規社員の雇用には、同一労働同一賃金、正規社員と変わらない福祉関係の保険適用、非正規社員に対するセーフティーネットへの企業からの資金の提出とうの義務化が欠かせないと思います。
 それには当然に企業の競争力の低下の問題がありますが、低賃金での年金受給者への雇用、子育ての済んだ専業主婦を文字通りのパートタイマーへとして雇用などで、余裕が出来た分、社会のために正規社員を雇うことがが考えられますが、今の企業経営者が、社会のことを考えたり、人事管理の複雑さを避けたがる企業がそこまでやるかどうかは判りません。
 これらについては政府も指導をしているようですが、ある程度の強制力が無ければ、企業は動かないような気がします。

・極限までの人員の合理化の問題点
 それと全体のテーマからずれているような気がしましたが、子供を持つ女性店長のためユニクロで土日休み・残業無しの制度を取ったために、その人が休む間の代行者が店長の仕事を覚えるなど人材育成に役立ったと放送していました。
 ギリギリまでの合理化には、病欠や緊急時の特定の人に余計な負担がかかること以外に、従来からの日本得意の自主管理、改善活動がおろそかななり、技術の伝承が出来ないなど問題があり、ある程度の余裕を持った合理化の必要性まで触れれば良かったと思います。

・「35歳を救え」の評価
 NHKの提案には上記のような難点もあるような気がしますが、「物より人への投資」の主張、人への投資が廻り廻って国の収入の増加になると言う考え方、人を大切にしその能力を活かすと言う考え方は大賛成です。
 それと台湾問題の報道と違って、NHKの主張に批判的な解説を入れたことは、高く評価しても良いと想います。
 それで仮に点を付けるとすると、担当者の主張に添って「編集」してしまった「アジアの一等国」は0~30点前向きの提案が無かった「天皇と憲法」は50点前後前向きの提案と公平な報道だった「35歳を救え」は75点前後になると思います。
 この差の出た原因は色々あると思いますが、NHKも公共放送の立場を自覚して、視聴者におもねる必要はないですが、もっと前向きで建設的、公平、公正を念頭に置いた放送をして貰いたいものです。

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