普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

成果主義の導入について

2006-12-29 16:13:14 | 企業経営

とうとうホワイトカラーへの「労働時間規制除外」導入が決まりそうだ。
もしこれが決まったら会社はどの様に対処するだろう考えているうちに現役の頃のことを思いだした。

<<大会社の経営者>>
私の経験を聞いて頂きたい。
当時、メンテナンス関係の係長に過ぎなかった私にとっては、業界のトップの会社の経営者などは遠い存在だったが、私の海外派遣が決まって、ようやく彼らがほんの少し近い存在になった。
海外派遣者は、出発前に担当重役に挨拶することになっているらしく、副社長室に連れて行かれた。
絨毯を敷きつめた広い廊下の両側に締め切った部屋がずらり。
防犯の為らしく、部外者はどこに行ってよいか、判らぬようにしてあると言う、何の標示も何もなく部屋の厚いドア
こんなことで、階下の部下達や全国に散らばった工場とのコミュニケーションをどうしてとるのか、首を捻っていたことを思い出した。
多分、分厚いレポートを出させてそれで判断しているのだろう。                                       

海外に出て、しばらくして大きな事故があった。
悪い事にその日に、日本から重役が到着するとかで、本社から派遣されていた取締役が迎えに行くことになっていたが、あいにくそのプロセスの開発者である彼以外に、新設プラントの詳しい技術者がいなかったので、何でも代理の人を迎えに出したそうだ
後日、本社からの彼への非難が現地に繰り返し届いて来た。
彼の昇進はそこでストップしてしまったことは言うまでない。

もう一人いた。彼は私たちの会社ではエリート・コースとされている、某一流大学出身で、社運をかけた巨大プロゼクトの中でも、基幹の工場の建設を完遂させて、本社に栄転したのだが、結局は平のままで、定年で退職してしまった。
何でも海外出張する前に担当重役の所に挨拶に行かなかったのが重役になれなかった原因だそうだ。

私も永年お世話になった会社の名誉のために言うのだが、会社は当時から今までも一度もいま流行の「記者会見でお詫びの報道」されたこともない、社会的にも一応の評価を得ている会社だ。

少し皮肉に言えば、私の上司で本社の意向など無視してばりばり仕事を進めて万人が認める大きな業績を上げた人が、子会社の平の取締役で終わり、もう一人の可もなく不可もなく無難に勤めていた上司がその同じ会社の常務取締役までになったと言う、サラリーマンの常識で言えば、ごく普通の会社だった。

<<成果主義の会社の経営者>>
私も他の人達と同じように、定年前に関連会社に何年間か出向になった。
その会社は創業者が、一代で上場会社にまでにしたのだが、そこは私のもといた会社とは完全に反対の社風の今盛んに言われている「成果主義」の会社だった。
驚いたのは、それで自分が優れていることを示す為でだろうか、上司が部下の悪口を言う事だった。
一番ひどかったのは、海外視察で私たちの現場に来た、社の最高幹部を送る車の中で、お客さんの会社から出向して来た私の前で、彼自ら部下の悪口を言い始めたことだ。
これでは私から送って貰った車から降りた彼が、私のことをどう言っただろうかなど想像することなど難しくない。
部下に間違った指示を出した叩き上げの重役自分のいったことをたな上げて、指示に従った仕事をした部下を叱っているのを何度か立ち会ったことがある。
もう一つ驚いたのは、海外の宿舎で一緒になった社の若い人たちとの雑談で、会社の幹部の話しになると、必ずと言って良い程、若い人からその人から自分の功績を奪われたとか、自分のミスを部下の所為にしたとか言って、絶対にその人の下になりたくないと言うのだ。
その会社の徹底した「成果主義」が、中堅社員の不満が蓄積していたのかも知れない。

<<成果主義を導入した会社のすること>>
私のごく小さな経験から全てを判断するのは、少し無茶と思うし、個人プレーが中心となる業態の会社では成果主義もある程度、成功するかもしれない。
然し、チーム・プレイで動くような大多数の会社で、一流の大学を出てエリート・コースを無難に勤め上げ、二三十年の間にトップまで登り詰めた人が「成果主義」をどの様に運用して行くのか。
また私の経験した程に極端なことにはならないと思うが、「成果主義」を導入した結果、会社がどのような状況になるのかは、ほぼ想像出来るようなに気がする。

参照
成果主義で日本は立って行けるのか、企業の責任は?

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