岩波文庫のコーナーを眺めていたらゲーテの「ファウスト」が目に留まった。ずいぶん前から友人がゲーテを持ち上げている。文学に晩生だから、ゲーテは遠い存在だった。それでも彼の影響で数10年前に「ファウスト」を読みかかったことがある。難解さに辟易として読み通すのを断念した。
今回は、いきなり本屋での立ち読みから入った。表紙の解説によれば、ゲーテはこの大作を24歳から書き始めて82歳で書き終えて、83歳で没した。完成までに殆ど全生涯を費やしたことになる。休日の前夜に飲まなかったら読書、と決めている。ファウストとメフィストーフェレスの掛け合いに魅かれて2時間ほどで第一部を読み終えた。
粗い読み方になった。読み通してみると前半の中身が濃く、後半のマルガリータとの恋物語は内容が冗長な感じがする。わたしの興味は前半部にある。頭でっかちで尻すぼみとの印象を受けた。第1部では、ファウストは味気ない学問研究の世界から、倦怠感を抱いたまま恋の遊戯世界に急降下する。
文節ごとに改行されるのでページ数の割に文字数は少ない。表現は凝縮されて無駄がない。わたし好みの文体だ。愛読書のうちの一冊になりそうな予感がする。古典的手法の典型のような戯曲だ。読み方がいまだに至らない可能性を残したまま第二部を読み始めた。