公務が身につきはじめる一方で30有余年かけて培った民間技能が失われてゆく。公務の場合は職務の範囲が明確だから、時の経過とともに専門性が高まる。経験がものをいう世界だから、居心地もよくなってゆく。もともと3度の飯よりも活字が好きだ。法律から要領に至る膨大な文書を読んで飽きることがない。民間から公務員の世界に転職した当初は、環境の激変にめまいがした。歯を食いしばっているうちに身体と心が慣れ、最近では、あれほど惚れ込んでいた前職の企業文化が疎ましい。「保険を売る哲学者」転じて「期間業務職員」に化けて2年余り、人間は環境の産物だということを身をもって知った。