マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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滝倉に聞き取るカラスノモチ

2022年12月03日 07時36分05秒 | 桜井市へ
O婦人の出里は奈良市旧都祁村の大字来迎寺。

大字の白石、南之庄住民が、話してくれたカラスのモチの記憶証言。

繰ったネットに見つかった論文『都祁村の民俗と社会(その二)―甲岡・来迎寺調査報告―』(シオン短期大学都祁村調査班森謙二)の114頁にカラスのモチの記載があった。

「カラスは琴平神社の金比羅さんの使いとされている。藁の中に12個の餅を詰め、ススキの先につけて、“カラスこい”と言って、金比羅さんにお供えする。その後に、火打ちをする」とある。

正月4日の行先は、桜井市滝倉。

カラスノモチを10数年前に県文化財記録収録した、と写真家のKさんが伝えてくれたその件。

奈良県教育委員会が、調査し、発刊した『奈良県の祭り・行事』調査報告書に記載していた。

行事名は、正月頭家(※オコナイ)。記録日は平成21年2月1日から6日。

カラスノモチは、「一臼目に搗く餅は、5cmほどの平たい餅。二臼目はマイダマ(※繭玉)を搗き、三臼目がカラスノモチ(※烏の餅)とセンゴクマンゴク(※千石万石)。カラスノモチは、長さが45cmほどの藁ヅトにビー玉大の小餅を12個。旧暦閏年の場合は13個。このカラスノモチを藁ヅトに収める。そして社務所裏に樹勢する適当な木に括りつける。なお、カラスノモチは、なくなるまでずっと吊るしておく。(※筆者要約しカラスノモチ記とした)」

実は、私もその正月頭家行事を取材していた。

但し、平成18年の2月5日行事だけだったが・・・

だが、カラスノモチは、5日でなく別の日に行われていたようだ。

今頃になって知った、桜井市滝倉のカラスノモチ習俗。

平成18年の初取材行事。

当時、行事の情報は主たる行事しか知らず・・・今さら遅いが、悔やんでも仕方ない。

滝倉はその後も度々訪問取材してきたが、六人衆の高齢化、死去により若手加入もしてきたが、頭家をする家もないほどに村の戸数が激変した。

この日、お会いした当時二老だった現在88歳のOさん他は、座員の死亡。

長らく勤めておられた一老兼神職宮司のIさんも昨年の5月に亡くなった、と聞き、寂しくなった。

平成28年の8月1日。

華参り行事が最後のIさんの姿を収めていた。

いずれ、その先の村の戸数は3軒になるやろなって、云ってた。

そんな状況であるが、かつてされていたカラスノモチは回顧談の記録に、と思って訪問した。

さて、報告書記載にあるカラスノモチである。

「行事の一環に千本杵で餅を搗く。マイダマ(※繭玉とも)にカラスノモチ、センゴクマンゴク(※千石万石)と称する餅をつくり、それぞれの儀礼に用いた習わしだった」、と伝えている。

習わしの有様を詳しく述べる。

「マイダマはシダの木の枝にくっつけるようにした餅。カラスノモチは、藁ヅトに小玉大の餅を12個、閏年は13個詰め、社務所裏に育つ樹木に吊るしておく。やがて鳥獣がやってきて啄む餅。これをカラスのモチという」

実は、平成18年取材に社務所で行われていた千本杵餅搗きも、藁敷きに搗いた餅並べもオコナイの華つくりも拝見していたのに、カラスノモチのことは、まったく触れず。

あぁーーー振り返っても仕方ない。

当時の私の聞き取り力は、まだまだだった実力不足。

残念な思いは、今後の取材に力を注げばいい。

そう思うことの方が大事だろう。

その話題に思い出してくれたO家のカラスノモチ。

他の地区と同様、12月28日若しくは30日に搗く正月の餅の日であるが、卯の日は搗かないそうだ。

カラウスで餅を搗いていた時代にしていたカラスノモチ。

何十年も前の体験談。

「カーカー鳴きよるから、8個、8個入れよ」、と云われて庭にあった柿の木に吊った。

屋敷内にもあった柿にも吊るした。
柿の木に吊るす行為は、この正月の2日に伺った天理市長滝・Y家のあり方と同じである。

奥さんも思い出された出里のカラスノモチ。

出身は奈良市旧都祁村の白石近くになる大字都祁来迎寺地区。

実家でしていたカラスノモチは船の形に折り曲げた藁ズト、左右の藁にそれぞれ餅を8個ずつ入れていた、と話す。

その形、都祁白石に商店を営むT夫妻が、話してくれた形と同じである。

個数の違いはあるが・・・

今では見ることもない、カラスノモチ民俗が次々と繋がっていくのに驚き、また、すごく感銘したここ数日間に亘って調査した天理市上仁興長滝、奈良市都祁白石に桜井市滝倉。

地域ぐるみの行事もあるが、民家の民俗調査が、今いちばんの喫緊の調査課題であろう。

お年寄りの体験・記憶が後継者に継がれることなく消えていく民家の民俗行事。

情報を得たら、直ちに行動をとらなければならない。

ところでOさんは88歳。

これまでいくつもの滝倉の年中行事を話してくださった。

村が米寿の祝いをしてくれる。

場は瀧蔵神社。

例年は、石垣の上からゴクモチを投げるのが常であるが、今年はコロナ禍。

袋に詰めた御供餅をもってゴクマキをするか、それとも手渡し、或は個々に配るか、区長も悩んでいるらしい。

是非、来てや、と云われる歳祝い行事は、この月の31日。

躊躇いなく、スケジュールを入れた。

(R3. 1. 4 EOS7D撮影)


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