マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
すべての写真、文は著作権がありますので無断転載はお断りします。

北白木の先祖さん迎え

2015年03月13日 19時02分56秒 | 桜井市へ
マツリトーヤを勤められた桜井市北白木の当主家。

門口にあった送り火の痕跡をヨミヤの際に見つけた。

お聞きしたところ8月13日の午後4時ころに迎え火をすると話していた。

その様子を拝見したく伺った当家は不在だった。

1時間ほど待った時間帯。

畑から戻ってきたご主人が帰宅された。

「ようそんなこと覚えているな」と云われた当主。

昨年末のことである。

天理市にあるザ・ビッグエクストラ店で買い物中にばったり出合ったのだ。

そのときにも是非取材させてもらおうとお願いしていたが、すっかり忘れておられたようだ。

栽培しているキュウリ畑に水やりを済ませてからと伝えられてしばらくは待ち状態。

その間は前庭に咲いていたお花や蜜を吸う蝶を撮っていた。

お庭の花を観察していた時間帯。

「そろそろ始めようか」と云われた当主は納屋にあった稲藁を持ってきた。

それを二つ折りにして藁で括る。

先端を斜め切りにしたシンダケに被せるようにして挿した藁束。

藁束を笠のように被せた当家。

「他家では束をぼっと挿すようだ」と云う。

家によってはそれぞれの在り方なのであろう。

迎え火の場には2本の藁束を挿した。

かつては麦藁だったと話す当主。



ライターで火を点けられたが、下の方からだった。

「そのほうが燃えやすい」と云うが、湿り気があることからすぐには火が点かない。

ぱっと燃えないのだ。



燃え上がれば小さな鉦を打つ。

燃え上がっている最中はずっとひも付きの鉦を打ち続ける。

「かえらっしゃい かえらっしゃいと云いますねん」と話していたが、鉦の音で声は聞こえなかった。

どうやら心のなかで唱えていたようだ。

線香もローソク移しもなく、家に戻っていった当主。

「北白木では各家とも同じような仕方で鉦を打っている音が聞こえてくる」と話していた。

しばらくすれば付近の家から鉦を打つ音が聞こえてきた。

それぞれの家がお迎えを始められたのだ。

座敷に位牌を並べた机。

小さなドロイモ(4年前まではハス)の葉に供えたキュウリ・プチトマト・ピーマン・ナスビ。



当主はローソクに火を点ける。

線香にも火を点けてくゆらし、大きな器にお茶をも盛られた。

廊下の下に設えた棚がある。

2本のシンダケを両脇に立てた棚はいわゆるガキンドサンの棚。

一つは花立てで、ヒマワリ・ミソハギ・ヤナギハナガサを飾っていた。

もう一つのシンダケは線香立てだ。

迎え火をされたご主人が線香を灯された。

ガキンドサンの棚のお供えは小さなドロイモの葉に盛ったオクラ・ピーマン・ナスビ・プチトマトだ。

そのころ仕事を終えて戻ってきた奥さん。



前庭にある柿の木の葉を摘み取ってきた。

これはオニギリを供える皿にするのである。



ガキンドサンの棚に数膳の箸を置く。

箸は細く切ったシンダケとミソハギの茎の2本。

それで一膳の箸とする。



先祖さんの御供も同じく一膳の箸だ。

先代から継いできた迎えの在り方は「昔のまんまや」と云うが、なぜにシンダケとミソハギなのかは伝わっていない。

平成23年8月14日に取材した奈良市南田原町の民家の在り方。



ミソハギの花を玄関前に飾っていた。

これもまたガキンドサンであるが、箸はミソハギの軸枝であった。

2本ともミソハギの軸枝なのだ。

北白木当家特有の在り方であろうか。

先祖さん、ガキンドサンともカキの葉を置いて手作りのオニギリを供える。

この年は「オハギを作る時間もなかったから今年はとりやめです」と申しわけなさそうに話す奥さん。

オハギを供える際には「ガキンドサンにおましたお茶を撒いていた」と云う。

廊下の下はコンクリート打ち。

この場にお茶を撒けば、跡方が残ってしまう。

だから、今では撒かなくなった。

土の時代だったころはそうしていたと云うのである。



「先祖さんの棚も撮ってや」と云われて記録させてもらった当家の先祖さん迎え。

松明の火は消えたが煙が立ちのぼっていた。



翌朝の14日はオカユ、昼はソーメン、晩は白ご飯を供える。

昔はスイカやマッカも供えていた。

先祖さんに盛った御供をたばって食べていた。

シンダケとミソハギの茎で作った箸でオニギリも食べたと云うのだ。

15日の昼、供えものは近くの川に流す。

流すといっても放り投げるような感じだと云う。

晩は送り火をする。

夜遅く、寝る前に迎え火と同じように松明に火を点け、鉦を打ちながら先祖さんを送る。

「遅いほうがええんじゃ」と云う送り火の際には「いなっしゃれ いなっしゃれ」と云いながら送るそうだ。

(H26. 8.13 EOS40D撮影)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。