マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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山田町杵築神社宵宮でんでらこ

2011年11月04日 06時42分31秒 | 大和郡山市へ
「でんでらこ」と呼ばれる奇妙な名称の祭りが行われている大和郡山市山田町の杵築神社。

二の鳥居の傍らには明暦二年(1656)に寄進された石燈籠がある。

それには牛頭大王の刻印も見られるだけに素戔嗚尊を祭神とされるのであろう。

「でんでらこ」の言葉は未だに判っていないが、村の人たちは宵宮祭典の最後に火を点けられる大きなとんどのことだという。

村の人たちが本殿の前に並んで行われる宵宮の神事。

そこには松尾寺の住職も立つ。

玉串奉奠の際にも村の人たちに続いて奉られる。

提灯の明かりが暗い境内や人々を照らす。



その神事を済ませると宮司と共に一段高い席に座った住職。

座られた神社建物の様式も珍しいのではないだろうか。

座の人たちといえば拝殿の両座に分かれて円座を組んでいる。

山田町は62軒。

13年ごとに回ってくる年番のトーヤ(当家)4人が忙しく動き回る。

ちなみに昨年のトーヤ(当家)はアトトーヤと呼びその8人がでんでらこの祭典を勤めている。

その人たちがこの日の朝から7時間ほどかけて設えたでんでらこの大松明。

心棒の丸太にマダケで組んだ。

その周囲を囲むのは稲藁。

昨年から取り揃えていた30束のシバを中に入れているそうだ。

両座には草鞋をはいて法被を着た子供たちがいる。

平成15年の祭典ではその姿ではなく普段着に裸足だった。

その後において祭典らしく衣装を揃えられたのだろう。

この子たちは円座に座った大人たちに酒を注いでいく役だ。

座の席に置かれた膳にはマメとコンブだ。

それはソラマメを煮たものと乾燥ワカメだそうだ。



ソラマメは一昼夜漬けてふやかした。

それを砂糖で味漬けしたと婦人は話す。

カワラケを手にした大人たち。

酒をいっぱい順繰りに注いでいく。

長老となったSさんは83歳。

いつも元気で美味しく一杯をいただく。



座は本殿に向かう間側に座るのは年長者。

その歳の順で並ぶから反対側は若い人。

右と左の座は同じように年齢順の席となっているようだ。

宮司と住職は建物で待っている。

しばらくするとトーヤ(当家)の人が酒を注ぎにやってくる。

酒を注ぐ年長者は宮司でトモと呼ばれる人は住職となっているそうだ。



マメとワカメを肴にお酒をいただく。

それは繰り返すこと5回。

その間も座でも同じように5回注がれる。

その2回目のときにはトーヤ(当家)が「オイワイデゴザイマス」と挨拶の向上を述べる。

参拝に来られた村人たちはその様子を見守っている。

およそ30分経過した頃のことだ。

直会だと思われる場は振る舞い酒を飲み終えて膳を方付けられた。

そうして始まった樫の木の引っ張り合い。

子供が手にした樫の木の葉っぱ側を大人が持つ。

両者はお互いに力強く引っぱる。



すると大人は掴んでいた木を放す。

子供は勢い余ってひっくり返ることもあるが勝負がついたという。

一人一人、大人は替って何度もする作法。

酔った大人が負けて子供が勝ったという。

子供が演じていたのはスサノオノミコト(素戔嗚尊)。

大人はヤマタノオロチ(八岐大蛇)だという。

ヤマタノオロチに酒をたっぷりと飲ませて酔わしてしまうスサノオノミコト。

そして樫の木を引っぱり合いで勝ったのだ。

八岐大蛇伝承を彷彿させる作法である。

そのあとが「でんでらこ」の松明火となる。

素襖衣装に着替えた4人のトーヤ(当家)。

本殿に進み提灯の火からオヒカリを貰って小松明に点ける。



その直後には境内に駆けだした4人。

足元を見れば素足である。

こうしてでんでらこと呼ばれる大きなとんどに火を移した。

唸り声をあげたかどうか聞こえはしないが火はまたたくまに広がる。



熱く焼けていくとんどの火熱に参拝者も後ろへ下がる。

火を点けたトーヤたちもそれを見守る。

その後はスサノオノミコトが火を点けられた草むらを剣で野火の難を払いのけていったのかも知れない「山田のでんでらこ」はとんどの火が消えて祭りを終えた。

(H23.10. 8 EOS40D撮影)


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