指図堂はひっそり佇んでいます。
東大寺二月堂の裏参道を散策したあと、少し時間があったので戒壇院方面に行ってみることにしました。すると途中で正倉院の案内板が目に留まりました。折角なので外観だけでもと思い、行こうとすると、警備の方が「正倉院は、ただ今工事中のため平成26年まで見れませんよ」と申し訳なさそうに言われました。外観だけでも、といったのですが、「外観も工事中で見ることができません」とのことでした。しかたなく、大仏殿をぐるりと回り込み、戒壇院方面を少し下ったところに、こじんまりしたお堂がありました。その回廊の端にちょこんと木彫の僧侶の像があり、何となく気になりました。そしてお堂の中を遠目に覗きこむと、花入れに生けられた花がありました。
すると、奥の方から女性の方が、「どうぞご遠慮なくお上がりください。」と声を掛けていただきました。それではと靴を脱ぎ、階段を上がって部屋に入ると、部屋の隅に女性の姿がありました。「ようこそお出でくださいました。」といわれ、撮影が目的の私には少し場違いな感じがしましたが、「どうぞご遠慮なく写真を撮ってください。」ということばに遠慮なく撮らせていただきました。宗派をお聞きすると浄土宗ということだったので、宗祖法然の誕生寺(岡山)のことや大本山が知恩院のことで、いろいろお話をさせていただきました。今日はとにかく歩き回ったので、畳が心地よい感じがします。
このお堂は、いつも開けているわけではなく、週末や予約が入ったときだけ開けるのだだそうです。お堂は「指図堂」といい、もともと大仏殿を再建するときその計画図面(指図)を展示するため建てられたもので、指図堂という名称は、このことに由来しています。その後、大風で倒壊していましたが、1852年頃、完成したのが現在の指図堂だそうです。いろいろお話を聞いたあと、駐車場に戻ると、ちょうどいい時間になっていました。
次は、お楽しみの昼食です。東大寺を出発して、バスは昼食場所の「なら和み館」に向かいました。こちらは、いわゆる団体客専用の食事処で、1階が土産物売り場、2階が食堂になっています。予算も予算なので特別、豪華ということもありませんが、食事を一番に済ますと、道路の向かいの大乗院庭園と奈良ホテル(外観のみ見学)を見に出かけました。通行量が多くてなかなか横断歩道を横切ることができません。大乗院庭園は平成20年に来たときにはまだ工事中でしたが、工事も終わり赤い橋や青々とした芝生がとてもきれいでした。
奈良ホテルは、明治の時代、あの鹿鳴館の倍の費用をかけて建てられた豪華なホテルです。あのチャップリンや、オードリーヘップバーン、鄧小平も宿泊したそうです。当日は結婚式があったようで、黒塗りのタクシーが玄関先に何台も停まり、幸せそうな和装の新婚カップルの姿が見えました。今日は日が良かったのでしょうか。そろそろ時間となったので、バスまで戻ることにしました。次の訪問先は興福寺です。あの阿修羅像に会えると思うと、気分も高まります。(つづく)