北海道新聞みなみ風の「立待岬」
3月4日掲載のタイトルは「心酔する作家の隣で眠る」
「苦役列車」で芥川賞を受賞した西村賢太さんの虚飾無き日々を記録した「一私小説書きの日乗」には編集者との確執などが綴られているが、毎日の飲み食いについては健康を嘲笑うかのように痛烈だ。
ある日はネギチャーシュー麺を食べてから、家でサワー1本と日本酒5合。ハンバーグとお好み焼き、焼きおにぎり4個を食べる。1日に百本のタバコも吸っていた。
小学生の時に父親が性犯罪で逮捕され、中学卒業後に家を出て肉体労働で生計を立てる。買淫や女性への一方的な暴言・暴行の一方で、こみ上げてくる怒りや愚かさをほとばしる筆致で言語化した文章は、癖になるほど身体に染みついた。
西村さんの楽しみの一つは古本を読みあさること。特に大正から昭和の初期にかけて作品を発表した私小説作家の藤澤清造に心酔。藤澤の月命日には墓のある石川県七尾市の寺に墓参を欠かさず、藤澤の墓の隣に生前墓も建立した。「瘡瘢旅行」では古書即売展の目録に藤澤の名が記されているのに目が釘付けにとなり、岐阜の古書店へ女と一緒に出かけていく。相変わらずの暴言・暴力があるこの短編が好きだ。
肉体的にも精神的にも穏やかな日はあったのだろうか。2月4日にタクシーの中で意識を失い、54歳で逝去。今は藤澤の墓の隣で安らかに眠っているはずだ。(メディカルはこだて発行人・編集人)
3月4日掲載のタイトルは「心酔する作家の隣で眠る」
「苦役列車」で芥川賞を受賞した西村賢太さんの虚飾無き日々を記録した「一私小説書きの日乗」には編集者との確執などが綴られているが、毎日の飲み食いについては健康を嘲笑うかのように痛烈だ。
ある日はネギチャーシュー麺を食べてから、家でサワー1本と日本酒5合。ハンバーグとお好み焼き、焼きおにぎり4個を食べる。1日に百本のタバコも吸っていた。
小学生の時に父親が性犯罪で逮捕され、中学卒業後に家を出て肉体労働で生計を立てる。買淫や女性への一方的な暴言・暴行の一方で、こみ上げてくる怒りや愚かさをほとばしる筆致で言語化した文章は、癖になるほど身体に染みついた。
西村さんの楽しみの一つは古本を読みあさること。特に大正から昭和の初期にかけて作品を発表した私小説作家の藤澤清造に心酔。藤澤の月命日には墓のある石川県七尾市の寺に墓参を欠かさず、藤澤の墓の隣に生前墓も建立した。「瘡瘢旅行」では古書即売展の目録に藤澤の名が記されているのに目が釘付けにとなり、岐阜の古書店へ女と一緒に出かけていく。相変わらずの暴言・暴力があるこの短編が好きだ。
肉体的にも精神的にも穏やかな日はあったのだろうか。2月4日にタクシーの中で意識を失い、54歳で逝去。今は藤澤の墓の隣で安らかに眠っているはずだ。(メディカルはこだて発行人・編集人)