雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

「折」される人々・上

2014-10-17 11:50:48 | Weblog
写真は昆明市呈貢県の一角。ちょうど、煉瓦づくりの建物が重機で壊されているところに遭遇。すぐ隣が農地。雲南では建物が壊されると土の色の「赤色」が目に付くようになる。(2010年撮影)

★別の話題を用意していたのですが、NHK-BS1をみていたら、昆明のニュースが飛び込んできたので、今回はこの話に。
(雲南の話だけを読まれる方は、前文が長いので最初の段は読み飛ばして、次の段の【開発の波頭】からお読みください。)

【事実・物流センター建設で死者】
昆明市晋寧県晋城鎮富有村に建設中の物流倉庫・晋城汎亜工業品商貿物流センターで地元住民の立ち退き料が低いためにトラブルとなっていたところ、14日(火)に建設再開のため建設作業員らがトラック数台で乗り込んできたため小競り合いとなり、8人が死亡(内訳は地元住民側2人、建設側6人)、10数人がケガを負いました。
(京華時報2014年10月16日http://epaper.jinghua.cn/html/2014-10/16/content_135024.htm。時事通信社http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2014101600682)

 何度も小競り合いがあったところ、とうとう死者が出てしまったため日本でも小さいながらも報道されたのでしょう。
村人側が撮った写真をみると企業側がトラック数台にヘルメット姿に棍棒、そして黒服で無表情の若者をびっしりと、隙間なく立った姿勢で分乗させて村に入ってきた。村人によると、その数1000人以上。警察、という文字も見えたとか。規模といい、見るからに、異様で圧迫感のある光景です。

 彼らが道路に立ちふさがる住民に向かって次々と石を投げつけ始めたため、村人100人あまりが手に棍棒や鍬を持って応戦。混戦の中、火炎瓶を投げつけたものもいて、企業側は2人焼死、他は殴打により死亡したのでした。

 一家上げて道路に座り込んだ村人のなかには、夫は殴打により死亡、妻と娘は腰などを打たれて重傷の人も。村人側も建設側8人を捕らえて手足を縛り、ガソリンをかけたということです。

【開発の波頭】
 晋寧県は昆明市中心部から滇池(琵琶湖の半分程度の大きさの湖)をはさんで南側にあり、池真南の昆陽鎮は、アフリカ遠征を明の時代に指揮した鄭和のふるさととして知られています。静かな農村です。この県境の北は呈貢県に接しています。呈貢県は市中心部の南に接していて昆明市が膨張して6年ほど前より雲南大学など主要施設が呈貢県に建設されて引っ越しが行われるなど大規模な開発が進みました。

 そして、呈貢県境近くの晋寧県富有村に市中心部から遅れること10年で開発の大波がやってきたのです。市中心部からは距離にしておよそ30㎞、まっすぐ南下する高速道路のすぐそばにあり、都市計画をつくる側からすればまさに倉庫をつくるのにうってつけの場所だった、というわけです。
 日本でも東京中心から30㎞ほどのところにある埼玉県春日部市や千葉県野田市などは、森を伐採したところに、巨大石けん箱のような物流倉庫が立ち並んでいます。

 ご存じのように中国では土地には所有権はなく、期限付きの使用権のみ。そのため政府が必要とあれば面倒な手続きなしに土地は簡単に召し上げることができるのです。
(中国の人が日本も含めて外国に不動産物件を所有したがるのはそのためもある。)

 富有村の農民は中心部の発展を支えるために農地や自宅を数千元の補償金で手放すように勧告され、3年前より家々が次々に取り壊されて建設がはじまってしまった。地元公務員の一般的な月収が一人3000元なので、その程度のお金で仕事場も含めて全財産と職を投げ出せ、と言われたわけです。これでは土地を離れるわけにもいきません。
 
10年前に昆明中心部に住んでいたときもいたるところに「折(チャイ)」とペンキが書かれた建物がいたるところにありました。書かれると近々取り壊されるため、デモや反対運動が起こってニュースにもなっていました。でも昆明の人はよほど追い込まれないと、暴力にまで行きません。暴力事件はたいてい外部の人が引き起こすものでした。

 さて、「折」は中国全土で日々、起こっています。これが90年代から四半世紀、続いているのです。かつてはお国の発展のため、と、農民も納得する理由があったのですが、もはやメッキも剥げてしまった。

 儲かっているのは、お役人と開発業者だけだと誰もがわかってしまった。でも、どうにも止まらないのです。日本の公共事業やバブル時期の地上げ屋と同じです。      (つづく)
コメント
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