梅雨も終盤となる季節、ジメジメとして気温が上がると、今年もハスの開花の便りが届きはじめました。
そこで奈良の唐招提寺までハスの花を見にいってきましたのでご紹介しましょう。
中国ではハスの花を蓮花(蓮華)又は芙蓉と呼び、王侯貴族の館の障壁画に必ず描かれ、庭園にも必ず植えられたようです。
「小学館の園芸植物大事典」によれば、アオイ目の芙蓉(フヨウ)は、スイレン目のハスと区別するために、木芙蓉と呼ぶのが正しいようです。
ハスの原産地はインド亜大陸とその周辺で、仏伝によれば釈迦が生まれると大地から蓮華が咲きだし、釈迦はこの蓮華の中央に立って「天上天下唯我独尊」と言ったといいます。
キバス(黄蓮)
従って釈迦如来像の台座は、その蓮華をかたどった蓮華座であり、また厨子の扉の内側にも蓮華の彫刻を施したものが多く見られます。
また寺院では、仏前に「常花」と呼ばれる金色木製の蓮華が置かれていて、東大寺大仏殿には巨大な「常花」があることで有名です。
仏典に登場する蓮華の種類は、白蓮華、赤蓮華、青蓮華、黄蓮華とありますが、そのうち後2者はハスに見ることができないのでスイレンを指しているようです。
4種とも泥水の中からその汚れを受けることなく清らかに咲き出し、仏の智慧や慈悲の象徴とされ、「菩薩の菩提心は蓮華の如し」とも例えられています。
また蓮華は、曼陀羅華(マンダラゲ=デイゴの花、チョウセンアサガオでは無い)、曼珠沙華(マンジュシャゲ=ヒガンバナ)などと仏の国土を飾る花とされています。
釈迦は、祇園精舎において弟子達に「極楽には7種の宝石で造られた蓮池があり、その中に車輪ほどの大きさの蓮華が咲き、たとえようもない芳香が漂っている」と話しています。
また死後に極楽浄土に往生し、同じ蓮花の上に生まれ変わって身を託すという思想があり、「一蓮托生」という言葉の語源になっているようです。
参考文献:小学館「園芸植物大事典」