リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

ハーフの国籍選択問題も難しい

2019年03月04日 | 日々の風の吹くまま
3月4日(月曜日)。晴れ。春らしくなって来た。クィーンズパーク地区を歩いて来たら、いたるところにクロッカスとスノードロップ。雪が溶けた歩道の芝生の上にころんと落ちていた枝の切れ端、年輪がきれいでつい拾って来ちゃったけど、さて、どうしようか。何か飾りを作ってみようかなあ。
   

ゆうべのお客さん一家とのディナーはほんとに楽しかった。実際はリタイアしたからもう「お客さん」じゃなくて、先生と奥さんとハーフのお嬢さんの家族付き合いの友だち。去年スキー旅行でウィスラーに来たときは帰国前に我が家に泊まって行ったし、私たちが日本に行った秋には泊りがけで遊びに行ったけど、今年のスキー旅行はお嬢さんも一緒なのでホテル泊まり。カレシが作ったマティニが病みつきになったそうで、奥さんとお嬢さんのショッピングが終わるまで、ホテルに近いBacchusラウンジで落ち合ってマティニを一杯。全員揃ったところで、私たちのお気に入りレストランを2つおススメとして紹介して、先生が選んだBlue Water Caféへ。

魚料理をおいしいと喜んでくれて、話が弾むことしきり。一人娘のお嬢さんに初めて会ったのは中学生になりたての頃。高校時代にはファッションモデルをしていた、竹久夢二の大正ロマンの美人画を思わせる美人。アメリカの大学を卒業してそのまま落ち着くのかと思っていたら、日本に行ったボーイフレンドを追いかけて戻って来たとか。日米の二重国籍で、選択する年齢を過ぎたけどまだ決められない。今までは放っておいて何ともなかったのが、最近は日本政府がうるさくなって来ているらしく、その時になったらアメリカを選ぶだろうと思うけど、日本国籍を取り上げられるのは自分の根っこを引き抜かれる感じがすると。うん、ワタシのように大人になって移住した国の国籍になったのと違って、アメリカ国籍のパパと日本国籍のママの間に生まれたんだもの、どっちも自分の国なんだよねえ。

土曜の夜の集まりで芸術監督のアシュリーと話をしていて、「日本に先住民族がいるなんて知らなかったわ」と言ったとき、ああ、日本は単一民族国家ということになっていて、それが日本の「顔」だからねえと答えたけど、生まれつきの二重国籍を認めないのも、同じ思考が根底にあるのかもしれないな。彼女のようなケースに限って両親の国籍を受け継いで保持することを認めてやればいいのにと思うんだけど、「半日本人」は困るってことなのかな。

文化的なアイデンティティの問題

2019年03月04日 | 日々の風の吹くまま
3月3日(日曜日)。晴れ!まぶしい日差し。この先はもう雪が降ることはなさそうだな。たぶん。今日は長年仕事で引き立ててもらった日本のお客さん一家がスキー休暇で滞在していたウィスラーから下りて来て一緒に食事することになっていて、夕方にダウンタウンへ電車で出かけるので坂道ウォークは休み。今回はお嬢さんも一緒で、アメリカの大学に行く前に会ったきりだから久しぶり。

ゆうべはひとりでArts Clubの集まりに参加。テーマは州内陸のオカナガン地方ケローナのインド系移民の農家に生まれた若い作家がチェホフの『桜の園』をベースにして書いた『Orchard』。集まったのはほとんどが若い演劇人で、民族や文化の枠を超える翻案について活発な質疑応答があって、ワタシにも勉強になった。先住民や収容所から解放されてオカナガンに留まった日系人も出て来て、日本語のせりふは日本人の翻訳者が「日系人」の性別、年齢、生活環境などに適した日本語のせりふに翻訳したということだった。うん、法律文書には法律文書の、学術論文には学術論文の、宣伝広告には宣伝広告の「言語」があるように、文芸作品では登場人物それぞれが持っている異なる人生や環境、経歴に基づく「言語」がその人の性格を語るんだから、一律に「標準日本語」に訳したら物語は生きて来ないと思う。

終わっての帰りがけに芸術監督のアシュリーが感想を聞いて来たので、個人的には自分のカナダ人としてのアイデンティティと、芝居や短編を書き始めてからずっと感じて来た「日本人として日本のこと書けば?」という微妙な圧力の間で、どんどん迷路の奥に入って行くような気がしていると言ったら、「あなたにはあなた独特の文化があるんだから、そこから書き出せばいいのよ」。ワタシ独特の文化って、44年の間どっぷり浸かっているカレシとその家族の「典型的労働階級のカナダ人」の文化が基盤のような気がする。つまり、ワタシが芝居に書きたいと思っている「普通のカナダ人」の文化。まあ、普通のカナダ人はいても、人種を超越した「普遍的なカナダ人」はまだ存在しないってことなのかもしれない。

考えることが増えちゃったけど、アシュリーがワタシがぶち上げた先住民文化交流プロジェクトに興味を持ってくれたので、今日は勢いづいて「吉良平治郎」の脚本を読み易いように横書きに打ち直す作業を開始。うん、ワタシの「母なる地」である北海道のことなら書けそうだという気がして来た。