リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2008年10月~その2

2008年10月31日 | 昔語り(2006~2013)
ああ、僅差、僅差

10月16日。いや、くたびれた~。午前中に起きて、朝食が済んだらすぐ仕事。期限は日本ではお昼にあたる今日の午後8時。微妙というよりもちょっとやばい量が残っている。火曜日は選挙があったし、きのうは銀行の用事があったし、その間、間に納品した仕事にケチをつけるやつがいたし・・・。ケチがついたと言っても、元の原稿から肝心要の情報が抜け落ちているんだから、水晶玉を持っていないこっちは困る。そりゃあ書いた本人にしてみれば自分がよく知っている「ジョーシキ」なもんで、誰でも知っているはずと思って、ぽろりと失念してしまうんだろうけど、そんなことちっともご存じないこっちはほんっとに困るんだよなあ。まあ、こういうことはどこの誰にでもよくあるものなんで、しょうがないけど・・・

トイレの時間も惜しんで必死。日本人が作成したワープロ文書の常なんだけど、フォーマットはどんどん崩れていく。なにしろ一貫していない。頭を揃えるのにタブを使ったり、スペースを入れたり。項目番号を自動で入れたり、手動で入れたり。とにかく「はちゃめちゃ」。まあ、タイプライター文化がなかったところなんだからしょうがないとしても、細かいところまできちんと整っていないと気になる潔癖症の日本人のイメージとはずいぶん大きなギャップがあるのがおもしろい。おそらくは、見た目が整っていればそれで満足なんだろうと思うけど、こっちは肩がこってしまうんだよなあ・・・

疾走するF1カーのごとくエンジン全開で仕事をしているうちに、今日はカレシの英語教室の日だということに気が。早めに夕食をして、送り出さなければならない。いやあ、えらいこっちゃ。とっても間に合いそうにない。だけど、カレシが出かけてからまたぶっ飛ばせばいいか。ラッキーなことにまだ月曜日の七面鳥が残っているから、玉ねぎとピーマンとマッシュルームとでソテーにして、生クリームとスパイスを絡めて、ペンネと混ぜ合わせて、できあがり。所要時間30分足らず。これがけっこうこってりしておいしい。こらない料理ほど感激するほどおいしかったりするから、人間の味覚は不思議。

おとといの選挙。うちの選挙区は現職が僅差で勝利。う~ん、残念!と思ったら、最終得票は次点との差がなんと、なんと、たったの32票。共に16000票台で32票の差。ワタシもカレシも次点だった候補(というよりは政党)に投票したから、うわ~、惜しかったなあ、と慰めあって?いたら、選挙法の規定で自動的に再集計されるという。ふ~ん、32票ねえ。どうかなあ。逆転勝利ってことにならないかなあ。

結局、仕事は期限の30秒前に送信ボタンをクリック。ああ、くたびれた。こっちも鼻の差どころか、首の皮一枚ってところ。ふむ、ベガスでちょっとスロットマシンでもいじってみようか。バカあたり、するかな?

2、4、6で数えるお金

10月17日。おや、雨模様。まあ、10月も半分を過ぎたし、これが普通のバンクーバーの秋ってところだけど。ミニの休暇の前だし、日本はすでに土曜日だから、仕事もどうやら一段落で、おおむね「用足しの日」・・・。

まずは銀行へ行って、開設したばかりのアメリカドル建て口座からラスベガスでの軍資金?をおろす。近頃のアメリカのお札は、昔からずっとどれもこれも同じ緑色(それで俗称「greenback」)だったのが、最近のお札を見ると、緑が基調なのは変わらないけれども額面ごとに違う色がほんのりと入っている。なぜなのかよくわからないけど、カナダでもアメリカでも一番よく使われるのは「20ドル札」。カナダでは1ドルも2ドルもかなり前にお札からコインに変わっているけど、アメリカではどちらもまだお札。小銭の感覚でおつりをもらっていると財布が1ドル札で分厚くなってしまう。でも、2ドル札はまれにしかお目にかからない。去年はサンフランシスコでたまたまおつりに混じっていたけど、アメリカ人は縁起が悪いと言っていやがるらしい。まあ、日本でも、話に聞く2千円札にはついぞお目にかからなかったなあ。

カナダの2ドルはお札だった頃も、白と金の二色のコインになってからも、日常生活で普通に使われている。最近は金色の1ドルコインよりも多く出回っている感じがするくらいで、こんなところにも長期的な物価の上昇が反映されているのかもしれないけど、1ドルコインの通称「loonie」が良くないということも考えられるかなあ。裏のデザインが北極圏の水鳥loon(アビ)なんだけど、これをloonieとやると俗語で「きちがい、とんま」。なぜ、そういう通称がつきやすいデザインを選んだのかというと、元々公募で当選したのはvoyageurという、かって先住民との交易で川や湖を往来した小船の船頭のデザイン。金型ができあがって、さて鋳造開始ということで、クーリアで造幣所へ送ったら、なぜか行方不明。それで急遽デザインが今の「アビ」に変わった。まあ、小額とはいえ一国の通貨。そんなんでいいのかなあと思ったけど、大臣が引責辞任したとか、担当者が解雇されたという話は聞かなかったし、紛失した金型は数年してクーリアの倉庫で見つかった。のんびりさがカナダのいいところでもあるけど、過ぎたるは何とかというよなあ。

補助通貨にしても、カナダでもアメリカでも、1セント、5セント、10セントというところまではいいとしても、その次にクォーター(4分の1)と呼ばれる25セントが来る。日常で一番良く使われるのが25セント硬貨、2ドル硬貨、20ドル札なんだけど、硬貨やお札の組み合わせの基本が「1」と「5」の日本人にとっては、この「2」のつくお金が中途半端なものに映るらしい。だけど、偶数で2、4、6・・・というのはけっこう数えやすいんじゃないかなあ。銀行では、「お札の単位はどれがいいか」と聞くから20ドル札と指定したら、テラー君が20ドル札を、「2、4、6、8、100」と5枚数えてカウンターに置き、次に「2、4、6、8、200」、「2、4、6、8、300」というように、5枚ずつ100ドルごとに数えて渡してくれた。見ているこっちも思わず、「2、4、6、8・・・」と首をこくこく振りながら数えてしまうから、我ながらおかしくなる。ちなみに、ワタシは今でもお札を日本式に半折りにしてペリッ、ペリッと手前に数えている・・・と思っていたけど、いつのまにやら北米式に横へシュポッ、シュポッとさばいて数えることが多くなって来たらしい。お金の数え方もいろいろにお国ぶりが出るからおもしろいなあ。

大枚のお金を抱えて、次の用足しはヘアカット、その次は2日分の野菜の手当て。ああ、遊びに行くってどうしてこう忙しくせわしないんだろうなあ・・・

便利なはずなんだけど

10月18日。土曜日。世界の株式市場の、まるでバンジージャンピングを見るような上がり下がりも週末でひと休み。そうでなきゃあ、くたびれるだけでやってられないもんね。神様だって、天地創造に6日間もがんばって、7日目には休みをとったんだから。

カレシは明日のフライトのチェックインの作業。便利な世の中になったもので、オンラインでチェックインすると、出発時刻の2時間前に空港へ行かなくてもすむ。アメリカ行きは、バンクーバー空港で入国審査と通関手続きを済ませられるのはいいんだけど、チェックインしたらすぐに入国管理の方へ行けといわれる。それもそれでいいんだけど、国際線ターミナルの一角にあるアメリカ行き出発ラウンジにはろくな食べ物屋がない。ましな食べ物屋がある国際線のラウンジとは(事実上アメリカ入りしてしまったわけで)つながりがないから、へたをすると目的地に着くまで飲まず食わずになってしまう。でも、先にチェックインして搭乗券を印刷して行けば、入国管理に向かう前に出発ロビーでけっこうまともな食事ができる。出発時間が早いときはこれがほんとに天の助け・・・

ところが、何かがうまく行かないらしく、カレシはイライラ、カリカリ。やっとこさ座席指定のページに入ったら、「別々の席しか空いていない!」。きのうは通路側の座席を前後に取ったほうがいいかなんて聞いてたくせに、今度は席が別々になるとおかんむりって、どういうことかいな。まあ、画面をのぞいてみたら、窓際と真ん中のつながった席があるじゃないの。「ボクは通路側じゃないといや」と、だだをこねながらあれこれいじり回しているうちに前のページに戻れなくなってアウト。頭のてっぺんから立ち上る煙が見えるような・・・。

最初からやり直しで、こんどはまずチェックイン。「おい、パスポートの番号がいる」と。あわてて金庫からパスポートを出してきて渡す。チェックインの手続きが完了したところで、座席指定のページに入ったら、機内のエコノミーセクションの前の方に緑色の座席がひとかたまり表示されている。最初のときは表示されていなかったという。どうやらオンラインでチェックインしたら選ばせてもらえるらしい。ただし、1人10ドルの別料金とか。ふ~ん、燃料費の高騰で四苦八苦している航空会社の増収作戦というところか。ほとんどが空席のまま。二人で20ドルだし、ということでカレシの望み通り「通路側と中央」の席を指定。「チケット代は払ったし、チェックインして搭乗券も取ったから、どうやって10ドル取るんだろう」と、カレシ。「それは航空会社の問題」と、ワタシ。「おい、クレジットカード持って来てくれ!」と、カレシ。あわてて財布を取りに二階へ・・・前にも何度かやっているんだから、必要なものを揃えてから始めたらよさそうなものなのになあ・・・

それでもなんとか準便万端が整って、あとは簡単に荷物をまとめるだけ。やれやれ。すっかりホリデイモードになって来年のシンガポールとオーストラリアへの旅行の話を始めるカレシ。たった3時間の飛行でたった3日の旅行だというのにこのさわぎ。はたして大丈夫なのかなあ。まあ、あわてさせられたおかげで、金庫に入れてあるパスポートを忘れずに出せたし、去年サンフランシスコで使い残した150ドルも出したから、まあ、いっか。ついでに3年前に買ったUSドル建てのトラベラーズチェック200ドルも見つかった。でも、アメリカではいつでもATMから現金を引き出せるから、これは来年の「海外旅行」で使うことにしよう。

さ、「お出かけ前に」と飛び込んできた仕事をさっさと片付けて、デスクの上をちょっと整理整頓しよ・・・

ビバ!ラスベガス

10月22日。ああ、眠たいなあ。なにしろ午前9時の飛行機に乗るために朝の6時に起床。その前の二晩はあんまりよく眠っていないから、とにかく眠い。眠いけど、なんか眠れないような・・・。別にギャンブルにうつつを抜かしていたわけじゃないんだけど、ラスベガスと言うのはそんな「眠らない街、眠れない街」って感じのするところ。ま、あそこは大人がつかの間の白日夢をむさぼるテーマパークだもんね。

ラスベガスのマッカラン空港に到着して、登場ラウンジで待っている人たちを見回したら、ふむ、笑顔がない。み~んなくたびれた顔。そっかあ、大当たりした人はいないんだろうなあ。夢を見終わって現実に帰って行く。夢の何日間かがハッピーだったら、それはそれでいいと思うけど。

二度目のラスベガス。今回のホテルはべラジオ。踊る噴水のショーのあるところ。着いてすぐその夜のレストランを予約して、次の夜の予約をしに目当てのレストランのあるMGMグランドまで出かけるのに、ちょうど噴水の前を歩いていたら「ドドド~ン」。思わずカレシにしがみついてしまった。音楽にもよるけど、たまたまイントロの威勢のいいのにあたったらしい。いや、心臓が止まりそうなくらいびっくり。でも、まだ日があるから、あまり人は集まっていない。やっぱりライトアップした夜の方がスペクタクルだよなあ。クライマックスには水が一気に数十メートルも噴きあがって、一瞬止まったかと思うと、霧のようになってうっとりと落ちてくるのは、なんともセクシーな恍惚感・・・。

ラスベガスのホテル王スティーブ・ウィンが「向かいの競争相手(パリス)にショーを無料で提供した」と悔やんだとかで、新しく作った「ウィン」はホテルの前に人工の山を作ってしまった。もっとも、向かいのパリスに泊った義弟一家は、せっかくストリップに面した部屋があたったのに、目の前にエッフェル塔がでんと立ちふさがって、噴水ショーはよく見えなかったそうな。このエッフェル塔は実物の二分の一だという話なんだけど、やっぱりテーマパークなんだなあ。作り物っぽい感じがするけど、それもラスベガス。テーマパーク化を進めた張本人のウィンが今度はもっとエレガントな大人のリゾート化を目指しているらしい。この、常に変身しながら生きる魔法の生きものみたいなところもラスベガスの真髄かな。

ラスベガスは砂漠の中のオアシスだから、砂漠につきものの不思議な現象が起きる。その極め付きが距離感。高層ホテルがずらりと並んでいるせいか、どこへ行くにもつい「すぐそこ」という錯覚が起きる。ところが遠い。歩いても、歩いても「すぐそこ」は遠い。まさに砂漠の蜃気楼。ホテルの設計はだいだいどこも客室用エレベーターからロビーへ抜けるのにカジノの中を通らなければならないようになっているから、部屋を出て外に出るまでがこれまたやたらと遠い。そんなことを忘れていたもので、着いた午後にハイヒールのままでMGMグランドまで歩いて往復。おかげで前代未聞の靴ずれ大発生。翌日は靴を履き替えて歩いたけどすでに遅し。水ぶくれの数は8つ。夜のハイヒールでのレストランまでの往復はきつかったなあ。3日目はバンドエイドをべたべたと貼りまくってなんとかしのいだけど、踵の水ぶくれは破れてじくじく。どうもくるぶしまで炎症が起きているらしく、帰ってきてもまだびっこをひきひきの状態。っとに、極楽とんぼはしょうのないやっちゃ・・・。

それでも、連日目がくらくらするような30度近い熱気の中で、おいしいものをよく食べ、バーでよく飲み、シルクドゥソレイユのショーを観て、足の痛さも忘れて遊びモードを満喫したワタシはえらいよなあ。

一夜明けたら日常だった

10月23日。二人とも少々寝不足が続いていたから、早く寝ると意気込んでいたのに、我が家の眠りなれたベッドにもぐりこんだのは午前2時半。いつもよりは格段に早いんだけど、目が覚めてみたら午前11時半。まあ、三泊四日の旅が疲れる年になって来たのかもしれないけど、ラスベガスで買ってきた安眠の新兵器のおかげもありそう。久しぶりに良く眠った気分で目が覚めた。

もう15年ほど使ってきた安眠用のサウンドマシンが少々疲れて来たのか、ちょろちょろという湧き水のサウンドにかすかな玄関のチャイムのような音が混じるようになっていた。これでは心地よい眠りを誘うはずの脳波がかき乱されるばかり。そこでラスベガスのファッションモールで見つけたBrookstoneの店にあったのが新型のサウンドマシン。「リラックス」、「お休み」、「元気復活」みたいな感じの3種類のプログラムがあって、4つずついろんな音を出す。「お休み」で気に入ったのが「雨」。しとしと、ぴとぴと。これをベッドのそばにおいて一晩中かけておくわけ。家の中で聞く雨の音ってすご~く気持ちが安らぐから不思議。(古い機械はオフィスで使うことにした。「田舎の夕べ」なんてのもいいかなあ・・・)

ラスベガスではとうとう一度もギャンブルはしなかったけど、よく食べた。おしゃれな「おまかせ」コースのある日本食のYellowtail(べラジオ)、ランチで入ったPho(トレジャーアイランド)のベトナム料理のフォ、ニョッキがおいしいイタリア料理のFiamma(MGMグランド)、アイルランド風パブNine Fine Irishmen(ニューヨークニューヨーク)のアイリッシュシチュー、そしてラスベガス名物の「バフェ」(べラジオ)。どのホテルでもバフェは目玉。あっちのホテルのバフェ、こっちのホテルのバフェ、と食べ歩く人もいるくらい。

要するに食べ放題なんだけど、べラジオのが最高と言う評判になっているらしい。アリゾナ州あたりから来たらしい典型的なアメリカの郊外族と見える人たちが、カニの足やスモークサーモンといった、日常の食卓にはのぼらないものをおなかいっぱい食べている光景が見られる。まあ、カニの足といっても冷凍したものをアラスカから仕入れたらしいのを縦半分に割って出しているけど、塩気が強い上にいささか乾き気味で、お世辞にもおいしいとは言えない。それでもこれが目玉アイテムで、テーブルに殻を山と積み上げて一心不乱に食べている中年夫婦もいた。うん、これも非日常の楽しみなんだもんね。

ラスベガス最後の食事は空港で食べたメキシコ風の朝ごはん。典型的なボリューム過剰にはちょっぴり辟易するけど、食べきれなくてもトマトやチョリゾを使った味はけっこうおいしいと思う。早朝のことでまだ目が覚めきっていなかったらしいカレシ、30ドルちょっとの勘定に40ドルも払ってしまった。なんと30%のチップ。ふつうなら5ドルでたっぷりなのに・・・。「よく見えなかったんだよ~」と口をとんがらせるカレシ。まあ、アメリカのお札はどれも同じように見えるからしょうないよなあ。まあ、Fiammaでの予め胸のポケットに入れておいたのをど忘れして、財布を見て「クレジットカードがない!」と慌てたのに比べたら、チップを5ドル払いすぎたくらいで目くじら立てることもないか。アメリカ経済に貢献しとこ。

バンクーバーでアメリカの入国手続きを済ませたところで、やおら旅行バッグを床におろして、あっちのポケット、こっちのポケットを開けてごそごそとなにやら探し始めたカレシ。入国管理官がブースから身を乗りだして、「何やってんだ、怪しいぞ」みたいに見ていた。「ポケットが多すぎる」とは言うけどなあ。マルタの空港で同じことをやっていたら、いつの間にか自動小銃を持った警察官がそばに来て、じっと見下ろしていたっけ。ワタシが「亭主というものは」みたいな顔をしてひょいと肩をすくめて見せたらニヤニヤして行ってしまったけど、自動小銃なんて間近で見たことがないからドキンとした。カレシとの旅はある意味で珍道中になるから楽しいんだよなあ。

本の虫は金食い虫

10月24日。けっこうよく眠って、旅の疲れ?も順調に回復。一番被害のひどかったかかとの靴ずれもまだ濡れてはいるけれど、くるぶしの腫れが引いたから大事に至らず回復中かな。朝食を終えてすぐに不在通知の入っていた小包の引取りと野菜の買出し。かかとのないクログを突っかけてでかけた。

小包はイギリスはロンドンにある「Folio Society」という60年の歴史を持つ出版社からのもので、ほぼ1年分の注文本とおまけの本が詰まった段ボール箱がイギリス郵政公社の郵便袋に入っていて、口を閉めたところに大きな荷札をくくりつけてあった。まあ、イギリスの郵便袋なんてなんだかかっこいいから、捨てないでとっておこう。

Folio Societyはいろいろなジャンルの本を特注の挿絵と共に中性紙に印刷して、ハードカバーの特別装丁で出版しているけど、どっちかというとコレクター向けの本なのですごく高い。会員制で、毎年秋になると出版目録が送られて来るので、最低4冊注文して会員権を更新する。更新すると、注文した本の他に豪勢な本が何冊かとしゃれたダイアリーがおまけとして送られてくる。前に数年かけて豪華な本皮装丁の「名作百選」シリーズを買ったのがコレクター本に魅せられた始まり。皮装丁の本は開いたときに立ち上る匂いだけでもうっとりした心地になる。イギリスの大邸宅なんかにあるライブラリーを見るともうただただため息のため息。公爵さまのライブラリーの足元にも及ばないけど、いつも本に囲まれているワタシは幸せ者。カレシも時々これはというのを引っ張り出しては、通称「ライブラリー」というトイレでのんびりと読んでいる。ワタシも引退したらひねもす読書三昧なんていいかなあ・・・

ハロウィーンまで1週間。野菜を買いに行ったら、オレンジ色のかぼちゃの山。大きいすぎるなあと思いつつ店の中に入ったら「ジュニア」があった。赤ちゃんの頭くらいの大きさで、食べるんだったらこっちの方がずっとおいしい。お化けランタンを作るようなばかでかいものは水っぽくてまずいのだ。ジュニアは2個で3ドルなので4個買って来た。マジックで顔を書くくらいだったら、後で食べられるなあ。かぼちゃが出回るのは今だけだから、かぼちゃスープをどっさり作って、冬ごもりに備えなくちゃね。

世界経済のメルトダウンとかで、不況風が突風みたいに吹き始めたのだろうか、クリスマスカタログが毎日どさどさと届く。小売業界にとっては厳しいクリスマス商戦になりそうだなあ。26年前の大不況は若かった私たちにも厳しかったけど、デパートではクリスマスイブになってもレジに客の列がなかった。今年もそうなるんだろうか。経済は不況と好況を順繰りに繰り返すから「景気循環」という言葉がある。人生のどの段階で不況に遭遇するかはまったく運まかせ。生活基盤を構築中の若いときに大不況に遭ってしまうと一番きつい。老後の準備をしている時期もきつい。その点から考えたら、潤沢な年金をもらっているカレシは幸運なわけだけど、それでも長い人生で何度も不況と好況をくぐってきて今この段階で不況に出遭ったというだけの話。好況でインフレが昂進すれば年金生活は厳しくなるのだ。ある意味、景気循環は現世の「輪廻」のようなものだろう。まあ、USドルのクレジットカードも届いたし、できるところで少しは貢献しようね。

あまのじゃく経済学

10月26日。土曜日に出かけなかったからか、あまりそんな感じがしないけど、今日は日曜日。10月最後の日曜日。来週の日曜日には延々8ヵ月も続いた「夏時間」が終わる。めんどうだから12ヵ月ずっと夏時間にしてほしいんだけどなあ。それに、「夏」の間は午後5時だった日本の午前9時が標準時に戻ると午後4時になる。仕事が詰まっていたりするとこの1時間の「短縮」はすごく痛い。まあ、3月になるまでの束の間の「標準時間」なんだけど・・・

きのうからなんとなくだらんとしていたカレシ。のどが痛い、せきが出る、関節が痛い。熱を測ってみたら38度。あらまあ、風邪を引いてしまったらしい。ラスベガスで拾ってきたのか、翌日の英語教室で拾ってきたのかはわからないけど、かなり深い咳をしているなあ。去年の夏にアイルランドから激烈な風邪をおみやげに帰って来て以来だけど、ぐずりたいのをコントロールできているところはエライなあ。ふむ、ワタシも鼻のずうっと奥の方がなんだかむずむずする。どうも鼻血が出ているような感じだから、また副鼻腔炎かなあ。咳が出るのはタバコの煙が漂うカジノの中を何度も通ったせいかと思っていたんだけど・・・。

週末になってひと息ついた株式市場。月曜日はアジアから開ける。今週はどっちの方へ行くのかなあ。日本のバブルのときは株価のチャートを見て「右肩上がり」(向かい合っているから左肩じゃないのかと思ったんだけど)と呼んでいたけど、今は世界のどこも俗に言う「going south」、ひたすら南へ向かっている状態。こんなときに円高が一人歩きしていて、「日本はすごい、日本のひとり勝ち」と素直に喜んでいるボクちゃんたちもいるらしいけど、実際は日本経済が強いってわけじゃないんだよなあ。でもまあ、どうでもいいじゃん。せっかくの円高なんだから、留学でもワーホリでもいいからどんどんカナダに来て強い円をじゃんじゃん使ってよね。今がカナダ経済に貢献して「ど~だ、ニッポン人はすごいだろ~」と優越感にひたる絶好のチャンスだよ~。

お金はゼロサムゲームで天下を回る。不況のときはお金を持っている人にどんどん使ってもらえばいい。みんながお金を使わなくなってしまったら、誰もモノを作らなくなる。誰もモノを作らなくなったら、工場はいらないし、原料もいらないし、人手もいらない。もちろん、お金がなければ欲しいものを買えないことは確か。でも、住んでいる国には少なくとも国民を飢え死にさせないだけの社会福祉制度があるんだから、お金を持っている人間がいたら、ムカついていないで、煽て上げてでもそのお金を使ってもらった方が得策に思える。高級車も、ブランド品も、大邸宅や豪華マンションも、高級レストランでの食事も、何でもいいから、お金の流れが滞らないようにどんどん使ってもらえばいい。お金は使われてなんぼのもの。不況になってお金も器量もない人は「金があるからって偉そうにするな、自慢するな、(オレ/アタシを)見下すな」とうるさいかもしれないけど、そういうのは放っておけばいい。不況だからこそ、余分なお金があるなら遠慮せずにどんどん使わなくちゃ。でないと死に金になっちゃうよ。

とはいってもなあ、人間はどうしても周りを見てしまうし、見れば比べてしまうし、嫉妬深いし、おまけに欲張りときているし・・・

守護天使の掌のうちで

10月27日。10月最後の週、「夏時間」最後の週。月曜日の秋晴れのいい天気。(株式市場はどうもそうはいかないようだけど。)本格的に風邪を引いたカレシ、熱は下がったもののせきが取れないもんだからいたくご機嫌ななめ。パパにそっくりの悪態のつき方でおかしくなってくるけど、これでもご当人はぶっちぎれないようにがんばっているんだから、極楽とんぼ医院の女医さん兼看護婦さんはやさし~くにっこり。

今月末は四半期ごとの消費税の申告期限。またいつものように前回からさぼりっぱなしの帳簿処理が3ヵ月分。そんなにたくさん伝票があるわけではないけど、めんどくさいことには変わりがない。そういうときに限ってたて続けに仕事が入ってくるから、よけいにめんどくさい気分になる。しばらくごぶさたしていたところまで「お変わりありませんか」と来るから、どうなってんだろうなあ。まあ、この先どっちの方へ行くのかわからないご時世だから、仕事があるってことには感謝しなきゃ。なにしろフリーランス稼業は「no work, no money」。そういう「保証ゼロ」の稼業を20年近くもやっている間に、ドットコムバブルが膨らんでつぶれ、イラク戦争が始まり、SARS騒動がおき、円高が円安になってまた円高になり、カナダドル高になってまたアメリカドルの方が高くなり・・・地球はくるくる回っている。いちいちおたおたしたってしょうがない、怖いもへったくれもあるもんかという度胸みたいなものも付こうというもの。

もっとも、30年若かったら、そんなさもわかったような顔はしていられないだろうなあ。今から30年前は猛烈な二桁インフレで、ストが多発して賃上げも二桁。銀行の金利も二桁。毎年今頃売り出される貯蓄国債の金利はなんと年19%だった。おりしも不動産バブル。売りに出た家の前に行列ができて、買ったその場で行列の後ろの人に売ったとかいう、嘘かほんとかわからない話も聞いた。そんな過熱状態がいつまでも続くわけはなく、危ないと警鐘を鳴らす人も出てくるけど、そういうときの人間はめくらも同然。だから破綻は突如としてやってくる。

1980年代初めの不況は、そろって公務員だった私たちにとっても戦々恐々たる毎日だった。高金利のときにせっせと貯めたお金を頭金にしてバブル崩壊で暴落した家を買ったけど、公務員だからといって安泰という状況ではなかった。そんな状態でストが始まって二人とも無収入。たまったものではないと、ワタシが民間に転職して「経済基盤の多角化」。ワタシがいた職場で相当な人数がレイオフされたのはわずか半年後のことだった。(数年後には部局そのものが廃止されてしまった・・・。)転職先は日本でふくらみつつあったバブルのおかげで上司の羽振りが良かったから、秘書のワタシも割と厚遇された。その職場を見限ってフリーランスの看板を出したのは、その日本のバブルが崩壊し始めた頃・・・。

こうやって見ると、なんかいつも危ない橋が壊れる一歩手前を走って来たような感じがするなあ。でも、先の先が読めていたわけじゃないのだ。水晶玉なんか持っていないから、自分の目(経験値)で読める範囲より先はいつも五里霧中だもの。うん、ワタシにはすばらしい守護天使がついていて、宇宙のどこかでは幸運の星が瞬いているんだろう。だったらちょっとやそっとのことでへこたれることはないなあ。不平や不満を言ってもしょうがないか。明日の自分がどうなっているかわからないのに他人の一寸先が見えるわけがないから、人を羨むのも妬むのも骨折り損のくたびれもうけってことだなあ。ワタシはどうやら今日も守護天使の掌の間をのんきに飛び回っているらしい。シアワセなやっちゃなあ・・・

旅に出た~い

10月28日。おお、今日もいい天気だ。株式市場はど~んと跳ね上がって、円はすと~んと落下。なんだかだんだん見慣れてきたような感じがするけど、なんだかんだ言っても株も債券も持ってないから、ただの野次馬。明日はまた下がるんだろうなあ~と、のんきに考える。お隣のパットは株が下がって退職資金が目減りしてしまったとこぼしていた。とっくに退職してひとり暮らしだから、肩をすくめて「なんとかなるもんさ」と。そうだなあ。私たちの周りの同年代の友だちもみんなそんな感じ。たぶん、年の功ってやつかな・・・

けっこうご時世を反映するような金融関係の仕事がぽんぽんと飛び込んで来る。おいおい、不景気の予想を真に受けて、カレシの「増収」をあてにしてちょっぴりのんびりと息抜きするつもりだったんだけどなあ。今日の郵便に入っていたクルーズのちらし。北ヨーロッパ10日間なんてのがあって、二人で「いいなあ~」。デンマークのコペンハーゲンに始まって、スウェーデンやエストニア、ポーランド、ドイツ、ロシアのセントペテルブルグ。地中海のクルーズもいいけど、北欧は魅力的だなあ。往復の飛行機代を入れても二人で1万ドルくらい。そのくらいは何とかなるだろうなあ。だけど、スケジュールは来年の8月。2月に南半球への大旅行があるから、う~ん、しんどいね。ま、次の機会もあるだろうけど。

おりしも所属する協会から2011年の会議はシアトルかロサンゼルスに絞られてきたという発表。ふむ、ハワイじゃないのかあ。まあ、シアトルなら車で行けるから便利だよね。来年の秋はニューヨークだから、トロントでも遊べるかなあ。2010年は、春の会議は日本の宮崎。ちょうどワタシの誕生日。仲良しの友達を誘って、おばさんトリオで盛大に温泉にでも行けるかなあ。2011年の秋の会議はボストンということで、念願のニューイングランドは今から楽しみ。ニューイングランドからはかなりの「お雇い外人」が北海道開拓に来ていたから、いわば北海道文化のルーツのひとつのような親近感がある。いちどでいいから絶対に行ってみたい土地なのだ。あらまあ、これではいつまでたってもバルト海のクルーズなんて行けそうにないなあ・・・。

旅の話のときだけかな、もうちょっと若かったらと思うのは。ヨーロッパを歩いてみたかった。北米大陸を車で走破してみたかった。自ら選んだ「ワタシの国」を、西の端から東の端までつぶさに見て歩きたかった。もうちょっと若かったらなあ。だけど、道を歩いて近づいてくる森は美しいけど、その全容はわからない。森をぶじに通り抜けて、振り返って見て、やっとその大きさがわかるような気がする。若さだけでは見ることができないものも、きっとあるはず。なんだか、むしょうに旅に出たい気がして来た・・・。

ヒーロー君たちは今日も

10月29日。今日はちょっとばかり曇り空。この分だとハロウィンは雨かなあ。裏のワイリー家のいたずら盛り小僧のフィンレーとラクランが楽しみにしているハロウィン。窓にいかにも幼い子供らしいかぼちゃの絵を貼って、庭にはパパの作品らしいでっかいお化けかぼちゃと幽霊の飾り。ハロウィンが来て、いよいよ夏時間の終わり。一気に年の瀬に突進だなあ。

カレシの風邪は咳が落ち着いてきたと思ったら今度は鼻づまりだそうで、首がいたい、背中が凝る、胸の辺りが痛いと、まあ、細かな実況中継。だけど、見たところは元気がよさそう。うん、ぐちぐち言っていれば気分がよくなるらしい。元々ネガティブな人にはそれが一番の薬なのかもしれないなあ。もっともいつまでも続くとさすがのワタシも少々イラッチになってくるんだけど、ま、ポジティブを押しつけてもネガティブな人にはあんまり効果がないみたい。どうもネガティブな人はネガティブにぐちぐち、ぐだぐだやっている方がハッピーらしいからおもしろい。うん、ここは一発ユーモアでぼわ~んとかわしちゃお・・・

なんだかやたらと「ごぶさた」筋からの引き合いが続いて、おかげで11月はもう半分埋まってしまった。こっちはあまりねじり鉢巻モード歓迎とは言いがたいのに、それでも、商売っ気を出してOKを出しては自分の首を絞めているんだから何をかいわんや。ポジティブもすぎれば何とやら。おまけに日本語訳をやってみる気があるかなんていわれて、「考えてみます」。考えるもへったくれもあるのかなあ。ブログを読み返してみたかぎりでは、日本語がどうもという気がする。なにしろ、饒舌にして、冗長。まあ、原稿というものがあるから、むやみに長ったらしくはならないんだけど・・・。よく寝て考えてみよう。

アメリカの大統領選まであと1週間。カナダの連邦総選挙が終わってまだ2週間で、バンクーバーでは市長・市議会選挙まであと2週間。州議会補欠選挙もやっているけど、幸いどこかよその選挙区の話。もう、今年は選挙疲れだよなあ。カレシはテレビのニュースを相手に「論戦」。このあたりはパパにそっくりなんだけど、パパはむかっ腹を立てて毒づくだけなのに対して、カレシは「理論武装」して毒づいているからおもしろい。まあ、野次馬とんぼの観察によれば、世の男と言う男はみんなあらゆる問題を快刀乱麻に解決する策を持っているのに、政治家だけはなぜかまったくの無為無策なのもので、歯がゆくてイライラ。子供の頃にヒーローものの漫画を読みすぎたんじゃないのかなあ。ほんとに男っておもしろい動物・・・

素手で世界を破滅から救えるってのに、全国津々浦々のヒーロー君たちはケープをひるがえして打って出るでもなく、きっと今日もテレビの前でうつらうつら。おかげで、世界は今日もあっちこっちで勃発する問題に、もぐら叩きのごとく応戦にてんやわんや。んっとにしょうがないなあ。ここらでヒロインが総結集したらいいかもしれないけど、どっこい世界のヒロインたちはヒーローのケープの洗濯とタイツの繕いでそんな暇がないか。でなければ、家事と育児の分担をめぐって家庭戦線は風雲急とかで、千年一日のごとく、今日も時は流れる・・・。

『TIME』誌に金融危機が結婚にどんな影響をもたらすかという記事があった。ストレスに遭遇したとき、女はそれを語ることで対処するけど、男はひたすら逃避するんだそうで、浮気が増えるらしい。なるほど。だけど、心配はご無用。不況のなると男は「ぽっちゃり型」の女性にひかれるの対して、女はストレスになって大食いする傾向があるそうで、結果として互いの欲求がうまく一致するようになるから、めでたし、めでたし。やがてみんな夫婦円満で、経済危機と共に離婚の危機も去って・・・てなことになるとしたら、人間て、実にうま~くできているもんだと思うけど、はて・・・?

魔女の心のうち

10月30日。うひゃあ、月末が目の前。外はちょっぴり暗い雨模様。ま、秋だからしょうがないんだけど。午後のうちに納期の仕事を片付けて、夕食後は経理係の仕事。あしたは四半期の消費税の納付申告の期限だけど、帳簿の方は前回の6月末からまったくの手付かず。ま、これも相変わらずのことだから、あわてることもないか・・・。

カレシの風邪は順調に回復しているはずなのに、な~んとなく不機嫌。どうやら明日のお昼にある元の職場の仲間とのランチ/コーヒーの集まりにOKしたらしい。行くといったらそれで決定だろうと思うけど、どっこいほんとうのところはあまり行きたくないらしい。行きたくもないのに「イエス」と言っておいてぐだぐだと機嫌が悪くなるのがカレシだから、知らん顔で放っておいたら「何か機嫌でも悪いの」と来たもんだ。やれやれ、自分の不機嫌さを人に反映して、その人のせいで自分が不機嫌なのだという方へ誘導しようとするから始末が悪い。ま、カレシの場合は、メロディにも何もなっていない口笛を吹き出すと「赤信号」。さんざんいたい思いをしてそのあたりを会得したワタシは、「え、別に機嫌は悪くないけどなあ。月末でちょっときりきり舞いはしてるけど、いつものことだしぃ・・・」と、おとぼけ。

いやななら「ノー」と言えばいいだろうにと思うけど、カレシは他人にはすなおに「ノー」と言えない。はっきりノーといって嫌われたくないらしい。嫌われたくないというよりは、嫌われるのが怖いんだろうと思う。端的に言うなら、小町に書き込まれる切々とした悩みをカレシに重ねてみると、なんだかこの人は生まれるべきところを間違ったんじゃないかと思うほど日本人的な一面でもある。だからといって、日本で暮らしたって「水を得た魚」のようにはなれそうにない。そういうあたりは日本の挫折感を嫌ってカナダに来たのに、その「水」になじめないでイライラしているポストバブルっ子にも似ていなくはない。何もかも捨ててでも夢の国ニッポンへ行きたがっていたときに、「じゃ、行きなさい」と送り出していたら、今頃はどんなことになっているだろうと考えることが今でもときどきある。

もしも、あのとき・・・もしも。いや、東京でのカレシはきっと半年ももたなかっただろう。いくら白人はモテるといっても、当時ごまんといたらしい若い「ジャパ行き君」と50代半ばを過ぎようというおじさんがまともに競争できるはずがないでしょうが。だけども、だけども、今でも心のどこか隅っこで、あのときに好きなようにさせてやればよかったかなという気持があって、それは決して「やさしさ」なんかではない。むしろ、異国で夢破れて悶々とする姿に「ざまあみろ」と言ってやりたかった、我ながら怖くなるくらいのイジワルな気持なのだ。まあ、人の性格は治らないというから、カレシの「虫」がまたぞろむずむずし始めたら、そのときはきっと迷わず「いってらっしゃ~い。さいなら~」ってことになるかもしれないなあ。

と、あらまあ、なんだかこわ~いことを考えているワタシ。だって、魔女の出番のハロウィンなんだもん・・・

雨のハロウィン

10月31日。目覚ましが10時45分に鳴り出して、10月最後の日が始まった。朝から雨・・・

帳簿の整理が9月末日まで終わったのが真夜中のちょっと前。ちょっぴり気取って言うと、第3四半期は国内からの受注がゼロだったため、消費税(GST)の徴収額もゼロ。一方、インターネット接続料を始め、電話料金など毎月発生する経費について支払ったGSTは合計して約39ドルであった。申告書に収入、徴収税額(ゼロ)、経費関連の控除額(ITC)の額を書き込んで、後はマイナスがつく小計以外はゼロの羅列。最後に還付請求の欄に約39ドルの金額を書き込んで、申告準備完了。そこでちょうど真夜中。

ネット申告ができるから便利~と、思いきや、なんと24時間受付じゃないのだ。今どきネットでそんなのないでしょうが。そうはいっても、歳入庁のサイトには「運営時間を確認してください」なんて書いてある。クリックしてみたら、太平洋時間帯は「月曜日から土曜日までは午前2時30分から午後11時」となっている。てことは、午後11時から午前2時30分までの間はサイトをシャットダウンしちゃうってことなんだ。お役所仕事にもいろいろあるけど、1日に20時間30分しか稼動しない税務署サイトなんて、マジぃ?あきれながらも「午前2時32分」にログオンして申告。確認番号が表示されて、2分で完了。納付するにしたっていつもごく小額なんだから1年に1度にしてくれれば楽なのになあ。(でも、そうなったらなったで経理係のワタシちゃんは1年に1度、きっと徹夜で帳簿整理をやることになるんだろうなけど・・・。)

目覚ましで早起きして、朝食もそこそこにカレシとモールへ。元同僚の親睦会に出るカレシをレストランの外において、道路向かいの銀行へ。デビットカードをスワイプして暗証番号を入力すると、テラーの画面に口座情報が表示される。そこで、まずラスベガスで使い残してきた380ドルをUSドルの口座に入れ、翻訳料の小切手を貯蓄口座に入れ、小切手口座からキャッシュを出す。「他にご用は」と聞くから、「口座を全部回ったから今日はおしまい」と言ったら、3件分をまとめた長いレシートをプリントしている間に、おもちゃのバケツの中からハロウィンのミニチョコを1個選ばせてくれた。となりの窓口のテラーは魔女のコスチュームを着ていたけど、かわいくてちっとも怖くない。それにしても、ハロウィンが子供の伝統行事から大人の「お遊び」イベントになったのはいつからなんだろうなあ。

モールに戻ってクリニークのカウンターで前回買い忘れたローションを買う。チュイが「ほんとは75ドル以上だけど」と言いながら、銀色のちょっとかっこいいトートバッグをくれた。11月から2ヶ月もの休暇をとって、ふるさとのベトナムへ行くんだそうな。わあ、いいなあ。トートバッグの取っ手にぶら下がっている小さなポーチに携帯を入れて、カードショップへ。カレシは「20分くらいで終わる」といっていたのに、うんともすんとも言ってこない。まあ、いやいやながらでも、行ってしまえばいつもちゃんと楽しんでいるわけで、だったらぐちぐち言わずに最初からすなおに行けばいいと思うんだけど、そこんところが・・・。

クリスマスカードを二箱買って、ワタシ書箱の郵便物を引き取って、バッグが重くなったから、車においてくることにした。雨は本降り。車のトランクにバッグを入れて、電球がポッ。「トランクを開けるキーがあるなら、モールの駐車場へ車を移せるでしょうが」と。路上駐車になったのはそもそもがカレシのせっかちのせい。おかげでこっちはずぶ濡れとんぼ。カレシに知らせようと携帯を出してみたら、20分くらいのはずがもう1時間以上経っている。あはは、男同士の「お茶」だっておしゃべりは楽しいものなんだよね。それからまた30分近く経ったところで「終わったよ」と電話してきた。スーパーで落ち合ったカレシはご機嫌のいいこと。買い物をして家に帰ったら、やおら脚立を持ち出して来て、たまった落ち葉で雨水が溢れているポーチの屋根の雨どいの清掃。着替えもせずに始めたもので、新品のジーンズが・・・

ハロウィンの夜。雨だというのに家の外ではやたらと花火やかんしゃく玉の炸裂音がしている。去年の今ごろは空港で飛行機が搭乗ブリッジから離れなくなって、「誰かがトリートを忘れたから空港の魔女にいたずらされたんだよ~」なんてしゃれていたっけなあ。この週末はインド人の「ディワリ」のお祭だから、花火は続くんだろうなあ。


2008年10月~その1

2008年10月16日 | 昔語り(2006~2013)
くたびれてももうけもの

10月1日。やった、やった~。くたびれた。それでも、明日の午後いっぱいはかかりると思っていた仕事を寝る前に片付けてしまって、爽快感満点。日本側も朝一番にと思っていたのが退社前に届けば、きっとうれしいだろうし、遊ぶことばかり考えている不届きなワタシもうれしい。

コーヒーブレーク?にちょこっとのぞいた小町に『働く主婦の皆さん!仕事をしていて良かったことは?』と言うトピックがあって、けっこう盛り上がっているけど、そりゃあ、大人が2人いるなら、ひとりで稼ぐより2人で稼いだ方が実入りが良いし、いざと言うときの保険にもなるわけで、そうできるならそうした方が良いにこしたことはないと思う。まあ、これはそれぞれの家庭の事情にあわせて決めることなんだけど。「仕事をしていて良かったことは」と聞いているのに、「専業主婦になりたい」というとんちんかんな書き込みをする人もいるけど、それは「働かなくてもいい結婚」をすることがその人にとっての「女の幸せ」ということなんだろう。でも、みんなやっぱり「自由になるお金があるのがいい」という。同感、同感。お金で幸せを買うことはできないけれど、お金があるとすでにある幸せが何倍にもなるというしなあ。

終わってやれやれの仕事の原稿はWordの表がずらり。で、これもまたフォーマットがめっちゃくちゃ。日本の人って、ほんっとにタブを使ったフォーマットができない人が多いのだ。見た目の美醜にあれだけしつこくこだわる人たちなのになあ。ひょっとしたら、日本語のキーボードには「タブ」がないのかしらん?やっぱり原稿用紙思考が頭の芯まで染み付いていて(というかきっと遺伝子にまで組み込まれていて)、文字の頭をそろえるのにスペースバーをピコピコピン!とやるんだろうなあ。日本文字だったら、それで一応はきっちりそろって見えるからOKってことになるんだろうけど、融通が利かない。これはもう文化の違いなんだろうなあ。おかげでこっちは四苦八苦の七転八倒の苦労だけど、異文化の壁は高し・・・か。

それでも、ひと仕事終えたときはいつも爽快。ふむ、ワタシだったらどんなレスポンスを書くかなあ。お金に余裕があるのは確かにうれしいけど、家事が嫌いで主婦落第生のワタシはやっぱり「好きなことをしていられること」かなあ。女だからって誰もが専業主婦になれば幸せってことではないのだ。だけど、専業主婦礼賛派ほど「主婦業だって立派な仕事」という主張するような気がする。それは正論だろうと思うけど、なんとなくちょっぴり自己弁護的に聞こえるのはどうしてかな。日本には「主婦」という職業があるんだから、堂々とそれをキャリアにすればいいだろうに。よく「欧米では共働きがあたりまえ」と書き込む海外小町がいるけど、屁理屈を言わせてもらうと、「共働き」があたりまえなんじゃなくて、そもそも「主婦」という職業がないから、それぞれ働いている男女が出会って、恋をして、結婚するという構図になっているだけのこと。はて、「主婦」が妻のジョブタイトルなら、外で働く夫のタイトルは何だろうなあ。いっとき聞かれた「給料運搬人」?「働きバチ」?「どぶねずみ」?ん、ひょっとして「だんな」?はて・・・

今夜はテレビ盛りだくさん

10月2日。目が覚めてみたらなんだかあたりが暗い。早すぎたかなと夢うつつに思いながら、また眠ってしまって、起床はぎりぎりで正午。外は予報どおりの雨。だから最初に目が覚めたときに暗かったんだ・・・。まあ、また納期のきつい大きな仕事の引き合いがあるから、今日だけは1日ゆっくり。不景気だろうがなんだろうが、企業も人間も、存在する以上はたとえ犬かきでも泳がなきゃ沈没。亀の子のように甲羅の中に頭を引っ込めるわけにはいかない。国際化時代ならなおさらのことで、お金があるところにはあるように、仕事もあるところにはあるってこと(と、ワタシはたかをくくる・・・)。

今日は久しぶりに少しは早起きができるはずだったのが、事態は急転直下、180度の大転回。最後にするつもりで出かけた火曜日夜の英語教室。行ってみたら、高校生たちがロビーでうろうろ。教室には新顔の大人生徒が7人。どうやら休暇から戻ったばかりで事情を聞いた移民の生活支援プログラムの担当者が、夜の教室の希望者リストを作ってあったのに、午後に移動されては困ると、希望者を呼んで来て、高校生たちを一掃してしまったらしい。おかげで生徒数9人、アジア系と南米系の混成で、全員が昼間働いているという、カレシには願ってもないクラス構成になって、「午後への移行」は即、中止。生徒の意欲がどれだけ続くかにもよるけど、当面は週2回の夜の英語教室を継続することになった。

ということで、早めの夕食のしたくを始めるまでの午後の「ひととき」をのんべんだらりと過ごしていたら、行きつけのモールで撃ち合いがあったというニュース。おいおい、オークリッジで撃ちあいって、何だ?モールの地下駐車場でどうやらギャング抗争に絡んで狙われたらしい人が射殺されたという。待ち伏せした可能性もあるそうで、見つかった薬莢の数は10個以上。流れ弾でタイヤがパンクした車もあった。人間なくてよかったけど、事件発生が午後2時すぎと言うから、カレシと落ち合う日はワタシがモールに着いている頃。警察はギャング抗争に特有の事件で殺人鬼がうろついているわけではないから心配はいらないというけれど、いっそのこと、どうせドンパチやるんだったら、西部劇みたいにどっかの荒野に行って、「流れ者」気取りで決闘でもやりなっての。

さて、今夜はテレビが忙しい。アメリカでは副大統領候補の討論会。情報不足が懸念されるペイリンと、軽率発言癖では日本の閣僚に劣らないバイデンの対決。この日に向けて、どっちの候補もそれぞれに選挙参謀たちから弱点を克服する「特訓」を受けたそうだけど、はたしてどんな火花が散るのか・・・。

総選挙中のカナダでは、英語での党首討論会。先にフランス語の討論会があって、自由党のディオン党首は母語を駆使してすばらしく雄弁だったそうだけど、今夜は大の苦手の英語での討論。注目株は選挙資金疑惑で無所属になった議員を入党させて、議席を持っているんだからと討論会に押しかけたグリーン党のメイ党首かなあ。選挙戦のスターにでもなったつもりか、まるで高校生の女の子みたいにきゃっきゃっとはしゃいでいるから、あんがい、いつもは退屈な討論会を盛り上げてくれるかもしれない。とうてい政治家の器には見えないけど、流行のグリーンだからそれでいいのかも。

ホッケーのNHLは、来週からシーズンが始まる。ここのところ低迷していたバンクーバーカナックスは、ずっとキャプテンだったナスランドとベテランのモリソンがトレードで去り、背番号16番が永久欠番になるリンデンが引退して、チームは若返り。人気者のルオンゴがゴーリーとしては異例のキャプテンに決まり、一卵性双生児のセディン兄弟もそろそろキャリアがピークに達していい頃。シーズン前哨戦は好調な滑り出しだけど、なぜかクリスマス頃には尻すぼみになる悪い癖があるからなあ。

どれを見るか、チャンネルサーフィンをするか、厳しい選択だなあ・・・

笑う門には角立たず

10月3日。雨は一時休止。それっと遠い方のスーパーへ買い物に。別に昨日モールで殺人があったらじゃなくて、前回の大量買出しで10%割引のスタンプカードが満杯になって、明日がその有効期限。いつも肉類をまとめて買うところだし、割引の金額が大きい方が得したような気になるもので、少し値段の張るものを余分にどっさり買い込んでしまった。まあ、これでしばらくは「篭城」するか・・・。

仕事にどっぷりつかる前に、ちょっとだけ息抜き。gooのランキングに「恋人のここが好き!」というのがあって、カレシと比べてみた。その結果、第1位は「優しい」(そうかなあ)、第2位は「自分を大切にしてくれる」(さあ、どうかなあ)。第3位が「自分にないものを持っている」(!)で第4位「まじめ」(さあ)。第5位「すなお」(さあねえ)で、第6位は「家族を大切にしている」(う~ん)と「嘘をつかない」(うへ!)がタイ。第8位は「話を聞いてくれる」(ええ?)、第9位が「頭がいい」(だろうなあ)で、第10位に「頼れる」(さあ・・・)。だけど、ランキングの評価で「ありえな~い」が「おもしろい」とダントツのトップになっているところを見ると、「どこにそんな恋人がいるってのよぉ」と、なんとなく冷めた心も見えるような。ふ~ん、ワタシはカレシのどこが好きなんだろう。たぶん、良くも悪くも「カレシその人」だろうなあ。ワタシの恋は欲張りなもので、あばたもえくぼもみ~んなひっくるめて好きなんだもん。

もうひとつ、「男性から見てなぜ?と思う女性の行動」という愉快なランキングに茶々を入れてみるか。特におもしろいものを選んでみると、「ひとりがかわいいと言うと他のみんなもかわいいと言う」(自分で考えてないもん)、「みんなでトレイに行く」(金魚の何とかっていう心理)、「あなたに任せると言いながら選んだものに不満を言う」(だって自分で考えて失敗したくないもん)、「占いにはまる」(だって、自分で考えなくてもいいもん)、「思っていることを遠まわしに言う」(はっきり言うと気が強いと言われるじゃん)、「ダメ男でも愛せてしまう」(女の深情けって聞いたことない?)、「バーゲンでの戦闘モード」(そうそう、ウェディングドレスのセールはまるで野牛のスタンピードみたい!)、「恋人の部屋の内装を自分好みにしたがる」(あなたのものはアタシのもの・・・)、「人目のあるところでキスを求める」(おいおい、「なぜ?」なんて言わずに、ボクって見せびらかしたいくらいにイケてるんだと思って、とびきりロマンチックなキスシーンを演じてみたらどうなのよ)。

ああ、「男と女の間には、深くて暗い川がある。誰も渡れぬ川なれど・・・」。まだ、恋することがどんなことなのか良くわかっていなかった頃のワタシが、なぜかほんとにワタシで口ずさんでいた歌・・・

毎日新聞のサイトに「万能川柳」というページがある。これがまたすごくおもしろい。巷の「声なき声」が五、七、五の音で、あるときはさらりと、あるときはほろりと、あるときはぐさりと、世相を風刺する川柳はまさに日本が生んだ真の庶民芸術だと思う。ここ数日はこんなけっさくがあった。

 「麻生さんマンガ省などどうでしょう」 (経産相-島耕作、文科相-ドラえもん、農水相-ベジータ?)
 「海外でありがたさ知るあの便座」 (ああ、あれねえ。でも、どうしても違和感があるんだけど)
 「ドンペリも瓶がなければ分からない」 (そこが偽装の狙いなんだろうなあ)
 「こんな娘(こ)が嫁にこぬよう願ってる」 (息子いないけど、な~んだかわかる気がするなあ)
 「大臣も臨時雇いの我が日本」 (派閥とかいう名の派遣会社があるらしい)
 「どうせなら総理5人でワークシェア」 (三人寄ると文殊の知恵。5人だと6割増し?まさかぁ)

思わずギョッとして、ドキンとなったのがこの一句。

 「ついに明日なすべき仕事なき自営」 (目の前仕事に没頭して、考えないようにしよっと・・・)

秋の日の、土曜日の

10月4日。雨。おまけに風。こうなったら本格的な雨期。午後も1時近くになって起き出して何をかいわんやだけど、午前4時までがんばって超特急で頼まれた仕事を片付けて納品したんだからしょうがない。のんびりとベーコンと目玉焼きで朝食を、という予定だったけど、それでは6時に予約してあるディナーまで時間があかないから、ベーコンは明日までお預けにして、いつものシリアルとトースト。

今日は早めにダウンタウンへショッピングに出た。雨が降ったりやんだりだけど、けっこう若い人たちがたくさん出ている。いま頃の季節でおもしろいのが服装の違い。土地っ子はまだかなりの軽装なのに、アジア系の若い人たちはもう冬支度かと思うような重装備が目立ってくる。暑くないのかと思うんだけど、みんな背を丸めて、なんだか寒そうに歩いている。ワタシは傘をさすのがめんどうなもので、フード付の毛糸のジャケット。新しいマスカラは熱めのお湯でしか落ちないから、顔が濡れても平気、平気。

ショッピングリストのトップはランニングシューズ。ひざの調子が悪くてしばらくトレッドミルを休んでいたけど、そろそろ再開の潮時。だけど、5年前に10キロマラソンを走った靴はメッシュの部分がぼろぼろで、走っているうちにつま先が飛び出してしまいそうなくらい。そこでインドア専用の運動靴を買うことにした。モールのスポーツ用品店に並んでいるスポーツシューズは、なんだかよくわからないけど、すごく派手。ファッションで身を固めたって運動の効果が上がるってわけじゃないだろうに、とぶつぶつ言いながら、店員さんを捕まえて一番シンプルなのを選んでもらった。(人手不足だから、店員の方からにこやかに寄って来る思っていたら、永久に待つことになるのだ・・・。)試し履きするのにソックスを忘れてきたから、半額セールのソックスを買うことにしてその場で開ける。サイズ6は幅がちょっときつ目。サイズ7は幅は良くてもやっぱり大きすぎ。ということでサイズ6.5。ワタシの足が入る靴は、サンダルは5、普通の靴は5.5、ブーツは6で運動靴は(厚いソックスを履くためもあるけど)6.5. 靴一足買うのもひと仕事。

車に荷物を置いて、パーキングメーターにコインを足して、買い物その2はミニコンポ。キッチンにおいてあったラジオとCDのコンポが頓死。まあ、買って15年、昼間ひとりで仕事をしていたときにケーブルにつないでシアトルのFM局を聞いていたものだから、寿命を全うして永眠ということ。エレクトロニクスの店に入ってびっくり。ミニコンポなんてほとんどない。昔ながらのステレオもほとんどない。その代わり、テレビから何から、はてはデジタル時計にまでiPodのドッキングステーションがついている。やれやれ、なんか技術の変化においてけぼりを食ったような気分。それでも、見つけたミニコンポ。壊れたのと同じブランドで同じような構成。違うところはMP3対応なのとiPodドッキングステーション付きなこと。それで値段が15年前の三分の一だからびっくり。ああだこうだと言っていると店員が寄って来たので(ここは歩合給が入っているから、一歩店に入ったら最後、黙っていてもうるさい・・・)、お買い上げ。

車に荷物を置いて、余った時間をつぶすつもりで近くにあったインテリアの店に入ってみた。ここ数年の高層コンドの建設ブームで、家具やインテリア雑貨の需要もかなり高いんだろうけど、カレシ曰く、「イェールタウンにコンドを買ったけど、目いっぱいローンを組んだものでインテリアまで手が回らない。だけどもイェールタウンに住むんだからそれなりのインテリアじゃなきゃ・・・っていう連中の店だなあ」。うん、ファッショナブルだけど、安っぽい。ちょっとウォルマートっぽい雰囲気だよなあ。チープシックというやつかな。な~んて言いながら、気に入ってしまったのが、街灯をデザインしたような電気スタンド。かねがねダイニングテーブルにおけるのが欲しい思っていたところで、そろって「これだ」。ということで今日の「想定外」の買い物は45ドルなり。

また車に荷物を置いて、パーキングメーターにコインを足して、今度こそディナーへ。ああ、腹ぺこ・・・

人間のセンサー

10月5日。あれ、今日は昨日とうって変って、けっこういい天気じゃないの。新調のミニコンポでラジオを聞きながら、お預けだったベーコンとスクランブルドエッグの朝食。ディナーの帰りにふらりと立ち寄ったつもりだった本屋でつい4冊も買ってしまった、一口料理(amuse bouche)の本の写真を眺めては、クリスマスやお正月にお客を呼んでディナーパーティをしようと、朝から、食べる話で盛り上がる二人・・・。

そういえば、ワタシのメインは「イノシシのラグー」だった。カレシは横目で見ていたけど、よく煮込んであって、思ったよりあっさりしていた。いつだったか、小町で誰かが「イノシシ料理」のことを書き込んだら、われもわれもと「ジビエは最高ですね」、「ジビエが好きで、好きで」という、猛進するイノシシもびっくりの賛辞がずらり。でも、イノシシだけが「ジビエ」ではないんだけどなあ。狩猟で射止めものだから、キジもカモもウサギもシカもみんなジビエ。広東料理で言うなら「野味」に近いのかな。ただし、ジビエは全部が野生とは限らないらしい。それにしても、それほど「ジビエ、ジビエ」とはしゃぐほどイノシシを食べる人がいるのかなあ、日本て・・・

日本発ニュースのサイトに、「壁の向こう側が見える携帯」を開発したところがあるという記事があった。センサーで壁の向こう側にあるものの形状わかるしくみらしいけど、これも日ごろから「プライバシー」に神経質なくらいの日本人にしてはパラドクシカルと言っていいのか、それとも、神経質だからこそ、壁の向こうにいて様子をうかがっているかもしれない人を事前に発見して「プライバシー」を守ろうと言うことなのか。ずっと昔「透視めがね」で女性を見ようという荒唐無稽な映画か何かがあったように思うけど。だけど、もし一枚の壁の両側に同じ携帯を持った人がいたらどうするんだろう。どっちも「あ、誰かいる。やだ~」とばかりに、誰もいないところを探すのかなあ。ちなみに、優れもの?のこの携帯、持って歩くと消費カロリーも計算してくれるんだそうな。「ついでに○○も」と機能満載するところはいかにも日本的でおもしろいと思うけど。

センサーと言えば、ローカル日本人の掲示板に「霊は臭いますか」という質問があった。自分の部屋の中で、ふとしたときに人間の臭いを感じるんだそうな。自分は体臭がないし、カナダでは汗をかくこともないから、絶対に自分の臭いではない。自分の衣服もチェックしたけど臭くない。部屋には自分以外に誰もいないのに誰かいそうな雰囲気で、誰かいるのかと不安感がよぎる、と。外国に来て臭い霊に付きまとわれるなんてお気の毒に、と突っ込みそうになったけど、「臭い臭い病」も、ここまで来たら限りなくパラノイアに近づきつつあるとしか思えない。ない臭いを感じるのは慢性副鼻腔炎の症状だったりするけど、「あ、人間だ」と思わせる臭いがして気になると言うのは、自分の周囲の臭いの何もかもが不安をかき立てるということだろうなあ。『ジャックと豆の木』の大男じゃなくて、成人性人見知り症患者のカナダごもりというところか。まあ、そんなに人間臭いのが気になるんだったら、その鋭敏な鼻を洗濯バサミではさんでおけばいいんじゃないの?

さて、日本は週明け。東京株式市場はまだ沈没中らしい。このままでは1万円を割り込みかねない気配。ダウも1万ドルを割り込むかなあ。株に漬け込んであったお金、どこへ行ったんだろうなあ。そういえば、円はどんどん上がっているけど、日本の投資家が海外の投資を引き上げているのかなあ。カナダでは厳しい規制で銀行が儲かっているので、金融危機の心配はまずないけれど、アメリカの住宅ブームの崩壊がBC州の林業に与える打撃は大きいから、いずれは不況前線もこっちまでやってくるのは必至だろう。不況のあおりを食う人が出て来る一方で、恩恵を受ける人もいるのも事実。不公平だからこそ、お金は天下をぐるぐる回り、経済というものが成り立つんだと思うけど、不況風にさらされる人たちにはそんなのんきな発言はムカつくだろうなあ。それを言っちゃうのがKYな極楽とんぼなんだけど・・・

欲の皮も張りすぎると

10月6日。今日はシーラとヴァルが昼前に掃除に来ると言うので、久しぶりに目覚ましで起きる。セットした時間は午前11時。だけど、即座にスヌーズボタンをポン。5分ごとにボタンを押すこと3回で、アラームをオフにして、なおもしばし寝ぼけまなこでぐずぐず。結局ベッドから起き出したのは午前11時30分。それでも、ここのところの遅延モードよりもずっと早い。

目が覚めてみたら、かなりの頭痛。首筋が凝った感じ。そうか、土曜日に前かがみから上体を起こしたところで、上の棚の下に頭の後ろをゴツン。そのときに首になんとなくむち打ち症のような衝撃があって、昔ずらした頚椎の古傷をいためたんだろうなあ。運動で首の筋肉はけっこう鍛えられているから、悪化することはないだろうと思うけど、指の動きに支障を感じ始めたら要注意。まだ、そんな様子はないけど。それにしても、昨日の夜からな~んか熱っぽっかったり、汗ばんだり。ふむ、雨にあたって歩いて風邪を引いたのかなあ。おいおい、再来週にはラスベガスなんだから、そんなの困るよ、もう。

世界の株式市場は今日も急降下爆撃。ダウはとうとう1万ドルを切ったし、トロント市場などは一時的に千ドルも下がったと言うから、パニック増幅効果はすごい。マスコミには「世界恐慌」なんて字も踊るし、ほんとにどうなるんだろうね。ある新聞サイトの隅っこで目についた広告、「お金はなくても購入したい」。お金はなくても家を買える「裏技」を紹介すると言うから、のぞいてみたら、あれ、モデルはどうみたって日本人じゃない。なるほど、これがアメリカのサブプライムモーゲージの広告か。「裏技」というところが、いかにも「問題あり」という感じだけど、いつ頃からだったろう、何にでも「裏技」がもてはやされるようになったのは。まっとうな手続きや手段はのろまがやること、裏技を使うのが賢くてかっこいい・・・そんな風潮があったような。サブプライムも言ってみれば危険な裏技だったんだなあ。

株に投資して老後の蓄えを、ともくろんでいた人たちは、資産価値が激減して大変だろうな。引退を少し先延ばしにすると言う人、いつ引退できるのやらとため息をつく人。議会に喚問された倒産したリーマンブラザースのCEO、8年間に給料やらボーナスやらで5億ドルももらっていたんだそうな。まさに、What for?と言いたくなる数字だなあ。会社の倒産で失業した社員たちが世界で何万人といて、老後の虎の子が紙くずになった人が数え切れないほどいる。だけど、このCEO氏はこれから何世代も養えるような報酬を手にして、そのくせ政府が助けてくれなかったと泣き節。テレビに映った顔はいかにも強欲そうな突っ張った感じがした。いやはや、人間の欲の皮ってのはすごいもんだ。

テレビを見ていたカレシは「RIMなんか、少し買ってみるか」。RIMはブラックベリーで有名な会社。れっきとしたカナダの企業。トロント市場の大暴落のあおりを食って急落したけど、ブラックベリーがなくなるわけじゃないよなあ。キャリア人間はブラックベリーなしでは夜も日も明けないから、みんな一斉に使うのをやめるってこともないだろう。それにしても、株を売り払ったお金はどこへ行くんだろう。原油も下落、ドルも下落、ユーロも下落、カナダドルも下落。商品市場に流れるのかと思ったら、原油も下落。原油が下がればバイオ燃料にまわされるトウモロコシや小麦が減って、投機熱も冷めるかもしれない。みんな売るばかりで買わないなら、お金はどこに行くんだろうなあ。昔ながらにベッドのマットレスの下にしまい込んだりして。分厚い札束の上で寝るなんて、どんな感じだろう。まあ、お金は天下の回りもの。怪しげな裏技なんか使わなくても、巡りめぐって、そのうちにまたお目にかかるって。

視界、良好ですか

10月7日。おやおや、目覚ましをかけないと、さっそく正午過ぎに逆戻り。今日は早い夕食の日だというのに、もう。でも、いい天気。世界の金融市場は今日もにぎやかだけど、世紀の危機も、マスコミが何日か騒ぐと、「あっ、そ」という反応になって来る。過剰な関心も無関心も、所詮はマスコミの産物なんだろう。

東京のど真ん中のそれも天皇陛下のお堀で素っ裸で泳いで、警察相手に大捕り物を演じた変な外人の話題が世界中のニュースサイトやソーシャルブックマーキングサイトを駆け巡っている。動画だけじゃなくて、拡大した写真を載せているところもある。いつものように音声なしで見ていたけど、おかしくて、いすから転げ落ちそうなほどの爆笑。何がおかしいかって、つるつる坊主でメタボでお尻もぶよぶよの男を捕まえるのに1時間半もかかったということ。ビデオには、堀から上がった男が取り巻く警官たちに向かって行ったら、警官たちが我も我もと退却。それを男が追いかけるシーンがあって、「え、これってほんとはなんかのバラエティショー?」と思ってしまった。

あのさぁ、このおっちゃんは素っ裸で、武器も持ってないんだけど。怖がることなんかないじゃないの・・・とケラケラ笑っていて思い出したのが、地元テレビの人気スポーツキャスターがお気に入りの日本の「動物園から逃げ出した猛獣を捕獲する訓練」。警官や消防士がなんともかわゆい着ぐるみの「猛獣」をおっかなびっくり捕獲する真剣そのもののシーンがおかしくて、(まじめに訓練をやっている人たちには悪いけど)見るたびに爆笑してしまう。あれとそっくりなんだ、ほんと。だけどなあ、いくら図体のでっかいガイジンだからって、素っ裸の男ひとりを取り押さえるのに、警察と消防から50人もが出動したそうで、日本はやっぱり平和ぼけのシアワセな国なんだなあ。(北米だったら、テーザーでZAP!だもの。)

ノーベル物理学賞の受賞者3人。日本のメディアは「トリプル受賞」とかいって日本人が独占したと書き、北米のメディアは日本人2人とアメリカ人1人が受賞したと書いていた。見出しでは「アメリカ人」だけど、記事には「日本生まれのアメリカ人」と明記してあった。確かに南部博士は日本生まれで、アメリカ国籍だからアメリカ人。このあたりの微妙な帰属観念がおもしろい。日本ではあくまでも日本人、アメリカでは日本生まれのアメリカ人、博士自身はきっと「アメリカ国籍の日本人」と考えているんじゃないのかなあ。大臣までが軽く「単一民族」と言ってのけるくらいだから、日本人には国家に帰属する「人」とある人種/民族に帰属する人との区別がどうしてもつかないんだろうなあ。フランス人の多くがフランスの国民で、ドイツ人の多くがドイツ国民で・・・というヨーロッパでも似たようなものなのかなあ。

在日外国人の人権擁護運動をやっている有道出人という「日本人」がいる。どこかの道ですれ違ったら、十人中十人が「あ、外国人だ」と思うはず。アメリカ人もきっと「お、アメリカ人だ」と思うだろう。というのも、この有道出人は元アメリカ人で、日本国籍を取得して「日本人」になった人。「外国人お断り」の差別の撤廃を叫んで活動している。まあ、彼の活動については在日外国人の間でも賛否が分かれているけど、そのサイトには日本人の「よそ者排斥意識」を浮き彫りにするようなエピソードがたくさん掲載されている。日本国籍=日本国民。だから「ぼくは日本人」という発想は、「アメリカ人」という民族がまだ存在しないアメリカと言う国で生まれ育った人間ならではかもしれない。帰属する民族に関わりなく、アメリカ国籍を持っていればアメリカ人。ノーベル賞受賞者のひとりは(日本生まれの)アメリカ人という視点で見るけど、日本では、いや、国籍はアメリカでも日本人なんだから、これは日本人3人の偉業だ、ということになる。人間の視野はそれぞれに思っているほどは広くないのかもしれないなあ。

時には笑わなくちゃ

10月8日。どうしてこんなにいい天気なんだろうなあ。雨のはずだったのに。ま、いっか。でも、2日続けてちょっと寝不足気味。睡眠時間の真ん中あたりで、猛烈な頭痛で目が覚める。頭をぶつけたときに傷めた首が寝ているとずれるのか、神経を圧迫するのか、後頭部から頭のてっぺんを回って目のあたりまで痛い。おまけに嘔吐神経まで刺激されるのか、なんとなく胃のあたりがむかつくから困る。できるだけ頭痛がしない姿勢を探してもぞもぞと1時間も2時間も寝返りを打つことになる。まあ、それでもいつの間にか寝入って、目が覚めたときには頭痛はなくて、1日中なんともないから、今度は頚椎がずれたわけではなさそう。

仕事がちょろちょろと入ってきて、順番を調整しているうちに週末を越える予定になってしまった。まあ、日本も三連休らしくて、月曜日の感謝祭には支障はなさそうだからいいんだけど。原油価格の下落にあおられて、カナダドルはアメリカドルに対しても日本円に対しても、急落している。収入のほとんどがアメリカドルか日本円建てのワタシにとっては実質的な賃上げ。去年はカナダドル高でかなりの実質的賃金カットだったから、急がされても文句はいうまい。「すべてには時がある」って言うもの。天下の回りもののお金と出会いに恵まれるには運みたいなものもかなりある。まあ、「運」の多くは通り過ぎてから「幸運」だったとわかることが多いんだけど。

皇居のお堀で泳ぎまわって、警官を追いまわした素っ裸ガイジンの報道写真をPhotoshopで加工したものがあちこちのブログサイトに流れている。特に人気はさすまたを突き出す警官を威嚇する後姿と、皇居の石垣をよじ登る後姿。ルネッサンス絵画にはめ込んで加工したり、スターウォーズみたいにライトセーバーを持たせたり、シュールな絵画風にしたり、テトリス風に並べてみたりと、オタクたちもなかなか芸術的センスがあるもんだと脱帽。特に気に入ったのは大好きなルネ・マグリットの絵を彷彿とさせる作品。いや、裸おじさんに迫られて後ずさりする警官たちの後ろに笑っている野次馬の列が写っているくらいだから、おもしろいショーだったんだろう。「めったに見られないおもしろいものが見られた」と、何と45分も鑑賞?した若い女性会社員もいたそうだけど、仕事、さぼったのかなあ。

鬱々とするような、パニックになるような、ぞっとするような、そんなニュースばっかしだもん。ちょっとはおなかを抱えて笑うようなニュースがあってもいいじゃない。どこの誰か知らないけど、スペイン在住のイギリス人だというおっちゃん、笑わせてくれて、ありがとうね。だけど、風邪を引かないでね・・・

もらう、使う、残り

10月9日。ああ、今日も世界は騒がしい。それにしても株価は落ちるときは落ちるもんだなあ。(株を持っていないからのんきなことを言っていられるんだけど。)マスコミは1930年代の世界大恐慌当時の(白黒写真のせいもあるけど)どよ~んと暗い大不況の風景を流して、「こうなるぞ、こうなるぞ」とあおらなくてもいい不安をあおっているように見える。そうはならないとは言えないけど、経済の仕組みも政治政策も違うし、何よりも、アメリカに次いで最も深刻な影響があった「世界大恐慌」という教訓があるんだから、たぶん国民総生産が40%も減少して、失業率が27%にも達したという状況にはならないと思う。

国の財政は黒字だし、銀行はアメリカと違って規制が厳しいおかげで資本も流動性もしっかりしている。経営幹部の給料やボーナスだってアメリカに比べたらつつましいもの。社会主義の政党や労働組合が「銀行が多大な利益を上げるのはけしからん」というけど、利益を上げてもらわないと危なくてだいじな虎の子を預けるなんてできないでしょうが。このあたりが、金持ちを見ると「自分もああなりたい」と思うアメリカ人と、「なんであいつが」と思うカナダ人の気質的な違いと言えるんだけども。

円高をキャッチして日本の銀行から移動した円。数週間前と比べて1ドルで10円もの差がある。朝から銀行が電話をしてきて「どうしますか」と聞くから、いつものようにカナダドルに換えて入金してといったら、「残高、いくらあるか知ってますか」ときた。わかってますよといったら、日付を先日の金利引下げの前に遡って処理してやるから短期の定期に入れないかと言う。ふむ、1ヶ月とかを転がす手もあるし悪くないオファーだなあ。でも、カレシとアメリカドルの口座を開こうかと話していたので、その話を振ったら、「じゃ、この送金で開きましょう」と言う。じゃ、USドルに換えて入れてといったら、規則でそれはできないから、一旦カナダドルに換えてからUSドルに換えて入れる。おいおい、それでは為替差損が出てしまうでしょうが。

ま、いいか。というわけで、即座に新口座を作って、番号までくれて、午後にログインしたら、もうUSドル口座が表示されていた。銀行も商売だから、お金が入るとなればやることは早い。為替差損は328ドル。USドルのクレジットカードを作ってもらって、ネットショッピングで使えば、カナダドルでの請求に上乗せされて来るVISAの為替手数料がなくなるし、USドル建ての翻訳料を新しい口座で受け取れば、為替差益を出すこともできるから、元は取れるだろう。まあ、このあたりが、株の投資なんかめんどくさいという極楽とんぼ流資産運用法。大もうけはしないけど、大損もしない・・・

ニュースでお金の管理と投資について教えている高校があるという。見ていたカレシ曰く、「全部の高校で必修にすべき」。同感。少なくとも、子供が小遣いをもらうようになる小学生あたりから「簿記」の基本を教えた方がいいと思う。ワタシの父はワタシが10才になったときに、「月100円を支給す」という証書と共に小遣い帳をくれて、「もらう」、「使う」、「残り」という、簿記の基本中の基本を教えてくれた。それがワタシの金銭感覚、経済感覚を形成する原点になって、結婚してからの家計運営の基礎にもなった。もう家計簿も収支予測もやらなくなって久しいけど、経験則で「安定経営」を維持できている。教育の基本は3つのR、つまり「読み書き算数」。もっと昔は「読み書きそろばん」といった。「そろばん」は経済の基本概念も意味するから「簿記」も含まれる。これに第四のR(Research)を加えて、玉石混交であふれる情報を選り分けるスキルを教えたら、うまいもうけ話に軽々と乗っては株が下がった、世界の終わりだとパニックになる人間が減るかもしれない。小難しい数学なんかに比べたらずっと簡単な教科だろうに、そういう現実的なことを教えられる教師っていないのかもしれない。親が教えればいいんだろうけど、経済ニュースを見る限りでは、親の方もあんまりわかっていないような・・・

奇才と凡才の違い

10月10日。金曜日。日本はとっくに三連休の始まり。カナダも今週末は感謝祭の三連休でぴったりマッチ。仕事の方は2つも残して行かれたけど、実際の時間的な余裕はともかく、気分的には余裕があるそうな感じがして、ちょこっとだれても良いかなあと思ってしまうのが少々難・・・。

今夜はてっきりすっぽ抜かしたと思ったバンクーバー交響楽団の2008/2009年シーズンの室内楽シリーズ第1回。ただし、楽団はアジアツアーとかでお留守。韓国と中国の何都市かでコンサートをしてくるんそうな。ま、オリンピックの宣伝もかねてだろうけど、留守番はモントリオールから来たイ・ムジチ・ド・モンレアル。(「モンレアル」はモントリオールのフランス語読み。)15人編成の室内楽アンサンブル。前部はヘンデルのコンチェルトグロッソ3曲。コントラバス奏者はまだ二十代かな。日本のバラエティに出演させたらスーパーアイドルになりそうなイケメン君だなあ。(演奏はちゃんと聴いているぞ・・・)

休憩をはさんでの後半は弦楽アンサンブル用にアレンジしたバッハのGoldberg Variations。トリオになったり、カルテットになったり、トゥッティになったり、オリジナルとはかなり雰囲気が違っていていい。不眠症の伯爵のために書かれたというけど、カナダが生んだ鬼才グレン・グールドの決定盤と言われる1955年の演奏は、最初はとろんといい気持でいると、そのうちに目が冴えに冴えてしまうんだよなあ。グレン・グールドは天才の鬼才だったけど、かなりの奇人でもあった。アスペルガー症候群だったという説もあるけど、どうもパラノイアの方に近い精神状態で、特にばい菌を恐れたらしい。だけど、グールドくらいの芸術家になると、それもその「人間的な一面」として伝記になるから、おもしろい。

帰ってきてそんなことを考えていたせいか、のぞいて見た小町で毎日ブラジャーを変えるならタオルやシーツはどうするかという、清潔論争の姉妹編が目に付いた。元のトピックはブラジャーは毎日変えるものかどうかについて、数日の間に300本もの書き込みがあって、「毎日変えるのが常識」派は「肌につけるものなのに不潔!」、「本人は気づいていないけど、臭う」、「見えなくても雑菌うじゃうじゃよ」と、ヒステリックに「毎日は変えない」派を追い込んで行くもので、かなり笑わせてもらっていた。だもんで、その姉妹編も、1度使ったら洗わないと、不潔!臭い!ばい菌うようよ。グレン・グールドの亡霊みたいなのがいる、いる。大違いなのは、鬼才でも、天才でも、奇才でも何でもなくて、ただのパラノイア、悪臭恐怖症、ばい菌恐怖症、成人性人見知り症。ここまで来ると笑っていいのか、どうか・・・。

肌に触れるんだから1回着るたびに洗わないと不潔だというのは、自分が汚いってことじゃないのん?肌に触れるものなら着るものだけじゃなくて、手が触れる階段の手すりも、電車の吊り革も、サンダルも、果ては恋人も、夫も、自分の子供も、み~んな毎日洗濯しなきゃならないよなあ。それとも、念には念を入れて、煮沸消毒するか。なにせ、雑菌うじゃうじゃなんだから、消毒までしないと気持ち悪いでしょうに。「雑菌の排除に意欲的な人は、他人の意見も排除する傾向が強い」という指摘は当たっていそう。毎日洗濯して清潔だと自己満足するために排水と洗剤で環境汚染というのも図星。たしかに日本は湿気が高いだろうけど、だからって自分と同じに潔癖じゃない他人を「不潔」と断罪するのはちょっと怖いなあ。もちろん、ご本人たちには不潔な人や臭い人は死ぬほど耐えられないことなんだろうけど・・・

放蕩息子が帰ってくる日

10月11日。三連休の始まりの土曜日。月曜日が七面鳥を焼いての「宴」の日だから、週末恒例のおでかけは休み。今年の七面鳥は手ごろな4.5キロ。それでも野菜やらスタッフィングやらグレイヴィーやらで、かなりの高カロリーになる。ひとつの週末で2日も食道楽をやっていたら、一週間後のラスベガス行きの頃には着られるものがなくなってしまうもんね。まあ、水曜日に開いたばかりの口座の書類にサインしに銀行に行かなければならないから、気が向いたら、カキがおいしくなるRの月でもあるし、久々にRodney'sに行ってもいいかな。

カナダの語学学校の団体が、日本で破産した留学旅行エージェントを通じて手続きをして、すでに来ている日本人学生の授業料を免除するそうな。留学生が払い込んだ授業料を斡旋会社から受け取っていない学校はかなりあるらしい。この団体の被害は50万ドル程度ということだけど、救済を決めた団体加盟校はわずか13校で、学生数は160人だとか。バンクーバーのダウンタウンには百何十校とかいう語学学校があるし、その関連団体も数多いから、この団体の措置を実行する学校の数が13校だったら、たぶんその程度の学校の集まりかもしれないなあ。信頼できる学校なんてほんの一部で、たいていはアジアの英語留学ブームに乗った、「学校」と言える規模さえない零細経営。授業料を免除してもらえる学生のほとんどが3ヵ月の「留学」だそうで、それでは「英語体験ツアー」と言ったほうがいいような・・・。

今日の『Vancouver Sun』に「Home-for-the-holidays Syndrome(日本だったら「お盆/年末年始帰省症候群」かな)」と題して、感謝祭やクリスマスのような、ふだんは離れている家族が集まる祭日は家族が抱えている問題が噴き出す危険が高まるという記事があった。特別の祭日なもので「完璧なる家族の集まり」というイメージへの期待感が高まり、それを実現することへのストレス度も急上昇する。家を離れた子供はおとなとして成長を続けるけど、それを日々見ていない親にとってはいつまでも家にいた頃の「子供たち」のままだから、昔のように子ども扱いする。親子の関係がうまく行っていなかったりすると、未解決の軋轢や恨みつらみ、しこりが頭をもたげて、かっての険悪な親子関係が再現されるということらしい。祝い事だから酒の勢いによる問題も起きやすいし、成人した子供たちの配偶者という「部外者」も絡んで来るから、聖書の「放蕩息子の帰還」のようにはいかない。

カウンセリングをする心理学者によると、「完璧な幸せ家族」のイメージというのはまさにテレビや映画に登場するみんな仲良しで快活な幸せ家族像なんだそうな。あれは理想像だということに気づかないで、みんな「ああでなければ」というプレッシャーでストレスをため、がんばりすぎて現実に失望してしまう。ふ~ん、現代人はメディアが繰り返し流す「作られた」イメージに自分を合わせようと躍起になっていて、それが単なる理想像にすぎないことに思い及ばないのかなあ。考える葦と言われた人類も今や視覚で「反応」するだけになりつつあるんだろうか。だったら、(自分が好感する)メディアのイメージが自分の常識で、それが他人にとっても常識であるはずという、反応思考では先行的な日本人の「常識観」が理解できるようでもあるけど、ふむ、グローバル規模で人類の「オタク化」が進んでいるのかなあ。

よく考えてみると、ワタシも感謝祭、クリスマスのカレシの家族の集まりはかなり退屈だった。はじめのうちは、家族の一員になって日が浅いんだからしょうがないと思っていたし、日頃誰とでも何のことでもおしゃべりできると豪語する通り、自分が知らない話題でも話の輪に潜り込んだから、「行きたくない」、「嫌だ」と思ったことはないけど、今になるとやっぱり所詮「機能不全家族の中のよそ者」だったのかと思えないでもない。ひとりの人間としてのレベルでなら、義弟たちとも義妹たちとも仲はいいんだけど。うん、家族ってのは意外と難しいものなんだなあ・・・

世界は今日も最終回?

10月12日。選挙戦も終わりで、やっと少しは静かになりそう。といっても、これはカナダの総選挙の話で、カナダの外ではアメリカ大統領選とウォール街の大騒動の影にすっかり隠れて注目度ほぼゼロ。まあ、カナダの国政のことなんだからいいはずなのに、何かにつけて目立つお兄ちゃんの影で割を食ってきたと思い込んでいる弟にとってはあまりおもしろくないらしい。「ぼくはいつだってこんなにいい子をやってるのに、どうしてお兄ちゃんばっかしちやほやするの」と拗ねるけど、お兄ちゃんはおにいちゃんで自分の問題でいっぱいっぱいなんだろうと思うよ。国も人間もだいたいがそういうもんじゃないのかなあ。

ローカル掲示板に悪名高きにいちゃんねらの類らしいのが、「アメリカ/カナダ滅亡論」をぶち上げていて、思わず吹き出してしまった。ご本人はくそまじめな調子で「アメリカもカナダも明日にも崩壊する。カナダという国もあと数年でなくなっている。英語も廃れて、英語圏の国々は崩壊する」と説いている。文章はいかにもにいちゃんねら調で稚拙だけど、街角で通りすがる人に「もうすぐ世界が終わる」と布教している宗教団体みたいでおもしろい。宗教は「改宗すれば救われる」と会員募集をやるわけだけど、にいちゃんねら君は「日本のひとり勝ち、日本の時代が来る」と、元から救いの手を差し出す気はない。

でも、こういうのを真に受けたような反応があったりするからよけいにおもしろい。反応の極めつけは、「カナダ人って、怠け者で馬鹿で性格が悪い奴(特に白人連中)が多いから、国がおかしくなってもおかしくないさ。 だからあんまりこんな低俗な国に長くいると、ここの連中の馬鹿さが移っちゃうよ」。どうやらその馬鹿さが移っちゃったんだなあ。こういうのを仮想的有能感というのかな。最近流行っているらしい「外ごもり」はこの仮想的有能感のひとつの表現なのかもしれない。もしも、カナダが本当になくなってしまったら、この人たちは行き場をなくして、異国を浮浪するか、ひとり勝ちの日本に「引揚げ者」として帰ることになるんだろうなあ。世界中に何万人いるのかしらないけど、大挙して日本に帰ったら、今度は日本が危ないことになりそう。ま、それは日本の問題・・・。

笑っていて思い出したのが、カナダで戦前から1980年代まで大人気だったインテリのお笑いコンビ、Wayne & Schuster。古典のパロディと言葉遊びが得意だった。あるスケッチでヒッピーが「真夜中に世界が終わる」と書いたプラカードを持っていて、それをくるりと回すと、「ニューファンドランドでは午前12時30分」(ニューファンドランド州では島の部分だけが大西洋標準時より30分早い)。ま、終末論はジョークのネタになるという楽しい副作用もある。日本のにいちゃんねらは、表向きは仮想的有能感で威勢がいいけど、実は自分に自信のない悲観論者なんだろう。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ってね。「お空が落ちて来る~」と大騒ぎしたひよっ子の寓話にも通じるかなあ。ひよっ子だもんなあ・・・

日本発ニュースサイト(Japan Probe)を見てびっくり仰天!日本で15歳から22歳の女性を対象に、「なりたい職業」の調査をしたら、「キャバクラ嬢/ホステス」が22.3%で堂々の第9位。英語記事は「dream job(夢に見る理想的な職業)」と訳しているから、日本のオンナノコの夢は水商売てな印象になりかねないけど、OLだとせいぜい時給1200円がホステスなら4000円以上。ブランド品も買えるし、きっとお留学やワーホリの資金だって楽々貯金できそう。昔はやむを得ずに足を踏み入れる職業で、一旦入ったら最後、出られても「ホステス上がり」と結婚なんかで差別されたものだけど、今どきは軽いアルバイトなんだ。だけどなあ、日本では「風俗」とか「フーゾク」とかいうと「娯楽」の部類に入るのかもしれないけど、英語にすると「sex trade(性産業)」なんだよなあ。日本女性の新しいステレオタイプが世界に広がってしまわないのかなあ。ま、これも日本の問題・・・

そうそう、あした食べる七面鳥、どのくらい解凍したかなあ。明日って、まだ来る・・・よね?

ラララの中の七面鳥

10月13日。感謝祭。朝からけっこうな雨。朝食を済ませてすぐにディナーのしたくにかかる。寝付く前にカレシがのたまわった。「感謝祭なんてやるようになったのは、最近だよなあ」。あの~、ワタクシはもう30年も毎年七面鳥を焼いて、二人で感謝祭を祝って来ておりますけれど・・・。お忘れなんでしょうか。それとも、体はいたけど心はいなかったとか・・・?まあ、感謝祭をやらなかったのはご実家のことではないでしょうか。カレシ(あわてて)曰く、「ボク、ターキーディナーが大好きだから、楽しみだなあ」。あはは・・・

カレシは「何かできることない?」と、朝から少々ばつの悪そうな顔。いいの、いいの。無理しなくても。ワタシはほんとに30年もやって来たもんで、目をつぶっていたってちゃっちゃかとできるんだからさ。そういったら、「じゃ、手がいるときは呼べよ」とか何とか言って、雨の中を庭へ出て行った。ま、やりなれた作業は、ひとりでやりなれたようにやるのが一番効率的なもので、カレシの出番ってないんだよなあ。去年は7キロもあるメタボ七面鳥を相手に大奮闘したけど、今年はぐんと小さくなって、ちょうど手ごろな4.67キロ(10ポンド)。このあたりが一番ジューシーで味もしっかりとしている重さで、これより小さいと味が落ちる。オーブンで焼く時間の目安が1ポンドあたり20分だから、大きければそれだけ朝早くからの格闘となる。だから、集まった値引きクーポンを持ってでクリスマス過ぎに買いに行くと、残っているのは10キロ級の大きいのばかりで、7キロでも「小さいのがあった」と喜ぶはめになる。

スタッフィングを詰めて、表面に油と塩とこしょうをすり込んで、オーブンに入れると2時すぎ。ちょうどいい頃合。七面鳥が焼けるのを待つ間に夕方(日本朝一番)納期の仕事の仕上げ。終わって送信したところで、キッチンに駆け上がっていったら、七面鳥はいい焼け色。ふたをしない焼き方だと、皮が早くにこんがりと焼けて油が出にくくなるから、竹串でラックの下から背中の辺りをちょいちょいと突っついてやる。近頃は七面鳥もダイエットしてスリムになったのか、大きさの割には出てくる油が少なくなったような感じがする。スタッフィングにするパンは自家製のパンの両端をさいころに切って軽くトーストしてから保存しておいたもの。少し足りなそうなので、キノアを混ぜてみた。松の実の代わりにいれた炒ったひまわりのたねと味の相性がいいんだけど、「ちょっとドライだね」とカレシ。キノアを(わざと)完全に炊き上げないで混ぜたから、水分を吸われてしまったのかなあ。アイデアは良かったし、仕上がりの味もよかったんだけどなあ。

今日は、アメリカでもコロンバスデイの休みのはずだけど、法定祝日ではないらしい。新しい週が明けて、へこんでいた投資家筋も気を取り直したのか、ダウはそれこそのけぞりそうな急騰。ロンドンでもパリでも株が上がっている。金曜日には「もっと落ちる」とか「底なし沼」だとか大騒ぎしていたくせになあ。東京でも日経が打ち上げ花火みたいに景気よくどど~ん。円の為替は予想通りに急落。「なんだか平常に戻ったみたいじゃないの」とワタシ。「でも、いつまで続くかなあ」とカレシ。「あしたまでは大丈夫よ」とワタシ。今どきの金融市場って世界のどこでも「クリック!」だから、明日になってみたらさや稼ぎでまた落ちるのと違うかなあ。億単位のお金がボタンひとつでいわしの大群みたいに右往左往する今の市場はしろうとの出番じゃないから、外野席で花火見物でもしているのが一番・・・

まあ、世界の市場は各国政府の施策に今のところ好感しているってことかもしれないけど、さて、カナダは明日が連邦総選挙の投票日。安定政権が射程内に入るほど好調だった与党は金融危機と株価暴落のあおりを受けて尻すぼみで、今は再び少数政権の予想。自由党とグリーン党は馴れ合いもいいところで、保守党を政権から引き摺り下ろすために、グリーン党に「自由党に投票を」と呼びかけさせている。選挙で候補を立てている政党が他の政党への投票を呼びかけると言うのは、民主的と言えるのかなあ。まるで「目的のためなら手段を選ばず」というごり押し党と、「虎の威を借りよう」というコバンザメ党の結託という感じだけど、こんなのが政権をとったらどうなることやら。これだから政治はおもしろい・・・

やっとのことで投票日

10月14日。総選挙の投票日。いや、秋たけなわらしい良い天気。その日の天気は投票率に影響があるらしいけど、三連休明けのけさはトロントの株式市場が史上最大の上げ。こういうのもあるていどは選挙の結果に影響するんだろうか。まあ、「Undecided(いわば浮動票)」にはあるかもしれないなあ。だって、ひと月以上も選挙戦があったのに、投票日になってもまだ自分の意見を決められない人は、周りの雰囲気やマスコミに左右されやすいんじゃないかという感じがする。

今回から投票所での本人の確認が強化されて、投票カードだけでなく写真と住所のある身分証明書も提示しなければならなくなった。それではたと困ったのが法律上の名前と日常の通称が違うカレシ。たとえば、John=Jack、Robert=Bob、Elizabeth=Betty、Margaret=Peggyというように、元の名前とはかけ離れた通称が英語圏の長い、長い伝統になっている。昔は「常識」だったし、時代が少し変わっても「英国系の伝統」ということで問題はなかったんだけど、時代がさらに変わって、多民族化が進み、コンピュータによるデータベース化が進み、正確なアイデンティティの重要性が高まったおかげでややこしくなってしまった。カレシは40何年も「通称」で納税申告をして来ているけど、身分証明となるものは、出生証明書も運転免許証もクレジットカードも全部法律上の正式な名前・・・。

というわけで、念のために通称と社会保険番号と住所が記載されている税金の査定通知を持参して、投票にでかけた。投票所の外にいる案内係?に事情を説明して、出生証明書を見せて、名前の訂正フォームを作ってもらって、次に投票所の中の指定された投票ブロックのテーブルでに行って、今度は運転免許証も見せながらの説明。担当者がフォームに承認の署名をして、投票用紙をもらうのに20分くらいかかった。国民の義務を果たすのも大変なことなんだ、ほんと。

名前と住所と顔写真を確認したら、投票者名簿の名前に線が引かれる。投票用紙を渡されるときには(すでにたたんである用紙の)たたみ方も実演してくれる。段ボール箱を立てたような投票ボックスで、備え付けの鉛筆で投票する候補者の名前の横の丸にばつ印を書き込んで、元通りに折りたたみ直してブロックのテーブルに持っていくと、担当者がはみ出した部分を切り取ってたたんだ部分を渡してくれるから、それを自分で投票箱に入れる。担当者に頼んでも代わりに投票箱に入れてくれない。切り取った部分は開票の後で疑惑が起きたりしたときに投票用紙と付き合わせて不正を防止するためのもの。

カナダの投票用紙はその選挙区の候補者の名前がアルファベット順に印刷されていて、その横にある丸の中にバッテン(X)を書き込む仕組みになっている。国や州の選挙なら候補者の数は公式の政党の数プラス無所属や泡沫候補だから小さな紙切れ1枚。英語がよくわからなくても、候補者の名前の綴りさえ認識できれば投票できる。日本ではまっさらな投票用紙に候補者の名前を書き込んでいたように思うけど、これだと、日本国籍を持っていて選挙権があっても日本語を書けない人はどうするんだろう。日本の生まれ育ちでなくても日本国籍を取得する外国人の数は増えているだろうから、日常生活には困らなくても、日本語を書くのはダメという人も多いんじゃないかなあ。

カナダは小選挙区制を取っている。ひとつの選挙区に何ヵ所も投票所があるのは当然だけど、さらに各投票所が「ブロック」に細分される。私たちの投票所にはブロックが10ほどあって、(アルバイトの)選挙管理人が2人一組で投票者確認の手続きをしていた。このブロックごとに開票して、投票所ごとに集計し、最終的に選挙区全体の得票数が集計されるから、結果はほんの数時間でわかってしまう。さて、急激な世界金融危機のおかげで混沌した観のあるこの選挙、どうなるのかなあ・・・