読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

秋のうた 乃南アサ 小説新潮10月号

2006-09-29 22:09:01 | 読んだ
小説新潮に不定期に連載されている小説である。

<東京・谷中に肩を寄せ合うように生きる、前科者の女ふたり>の話である。
今号で第4話になるのではないか。
確か前回では「ボクの町」の主人公高木巡査が登場したりして、えっどうなるの?と思ったのであった。
しかし、今回では登場しない。

主人公小森谷芭子は、恋をした相手がホストで彼のためにお金を使いなくなり、テレクラなどで知り合った男から金を奪う「昏睡強盗」で捕まり7年間の懲役をつとめてきた30歳。
刑務所で知り合った綾香は一回り上の女で、暴力亭主を殺していた。

この二人が出所後、東京・谷中でひっそりと暮らしている。
「前科がばれないように」ということのみに集中している。だから、同じ境遇の二人きりのときだけが息を抜けるときなのだが、それでもできる限り当時の話はしないようにしている。
でも、二人の共通点は刑務所なのだからどうしても話題はそっちへ行くわけで・・・その辺が芭子のイラつくところなのである。

さて、今回は綾香が勤め先のパン屋によく買い物に来るスナックのママと仲良くなり、そのスナックにカラオケをしに行く。芭子は気が進まないのだが、だんだんと常連になっていく。

そしてある日・・・
というお話なのだが、兎も角、この二人がいじましい。世間をすごく恐れている、あるいは警戒している。

たぶん私の周りにいかに女の人といえどいわゆる「前科者」が現れたら、やっぱり素直な対応はできないだろうなあ、と思うし、できればかかわりあいたくないと思うだろう。

そんな世間の心をよく知っているからこそ、彼女たちはできるだけつましやかに生きようとしているのだろう。

彼女たちにもう少しの幸福が来るようにと思わされる、そんな小説なのである。
コメント
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