読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

第135回直木賞 風に舞い上がるビニールシート 森絵都 オール読物9月号

2006-09-19 21:12:12 | 読んだ
直木賞を受賞した短編集「風に舞い上がるビニールシート」から<風に舞い上がるビニールシート>と<ジュネレーションX>の2話が掲載されていて読んだのである。

選考委員の評判がいいので期待をして読んだのだが、私にとっては<つまらない>部類にはいるものであった。
「なんだかなあ」というのが読後の感想。
林真理子の「ただごとではない成長の早さ」や井上ひさしの「感服する」という感じは受けなかったのである。

いつかこの展開が裏切られるだろうどっかで何かがあるはずだろうと思っているうちに、まあ予定調和的な結末に至る。
この順当な話の進み方にいらいらさせられるのである。
別に順当な話の進み方をする物語がきらいなわけではなく、どちらかというとけれんたっぷりの「ドウダ!」という作品よりは好みなのである。のであるが、この物語は違うのである。

ひとつには主人公の気持ちの動き、というのが「つかめない」あるいは共感がもてないのである。
主人公の心の動きは揺れ動いたほうがこのような物語ではいいのではないかと思う。
主人公がしっかりしているのならば物語の設定や動きはどちらかといえば「荒唐無稽」に近いほうがいいのではないかと思う。
主人公がしっかりしていて現実に近い物語であると「反発」してしまうのかもしれない。

それにしても、選考委員とというか世間と、自分の感覚が違ってきていて、いよいよ変なおっさんになってきたのではないかと、若干の危惧を覚えているのである。

とはいえ、直木賞受賞エッセイ「父に捧ぐ」は非常に面白かったのである。
どちらかといえばこのエッセイのほうがドラマチックで、登場人物が正直である。正直であるがゆえに、どこかが破綻していて自己矛盾を抱えている。
小説のほうの登場人物たちは「うまく」書こうとか設定しようという意識がつよく<作られた人>感が強く感じられたのかもしれない。
小説に登場する人物たちは、せめて読者に対して徹底して正直であるか、徹底して嘘をつくかしてもらいのである。

というわけで、エッセイと込みでまあまあかなというのが正直な感想。
というか、ワタシ好みではなかった、というべきでしょう。

予告
 明日は同時受賞した「まほろ駅前多田便利軒」三浦しおんについてのココロだ!
コメント
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