尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「しあわせの絵の具」、カナダのナイーブ派画家モード・ルイス

2018年03月22日 21時37分07秒 |  〃  (新作外国映画)
 カナダにナイーブ派(素朴派)の画家モード・ルイス(1903~1970)という人がいた。映画「しあわせの絵の具」で描かれていて初めて知った。ウィキペディアを見ると「フォーク・アート」と書かれていて、日本で初めて紹介されたのは「なんでも鑑定団」じゃないかと書いてある。故・大橋巨泉が彼女のコレクターで、2007年の番組に持ってきたんだとある。色彩豊かなホント素朴な自然が描かれていて、心ひかれる絵だなと思う。どんな絵かというと、こんな感じ。
 
 「しあわせな絵の具」はとても面白い映画だった。カナダの一番東、ノバスコシアの港町で生まれたモード・ルイスは豊かな自然の中で育った。映画ではスタジオじゃ感じが出ないので、ニューファンドランド島にオープンセットを作ったという。ホントは彼女が住んで絵で飾り立てた小さな住まいがあるんだけど、それは今は博物館に移築されている。

 モードは小さい時から家族からも疎んじられてきたようだが、それはリウマチで歩くことも大変だったかららしい。途中で判るけど、一度は(結婚せずに)子どもも生まれた過去もあるらしい。(家族から死産だったと言われた。)そんな彼女を借金まみれの兄は面倒見きれず、おばに預ける。何とか自活したいモードは、店に貼ってあった住み込み家政婦を求めるエベレットを訪ねる。孤児院育ちの彼は、魚の行商などをしながら、精一杯生きていた。そんな二人はうまくやっていけるのか。

 モードは何より絵を描くことが好きだった。やがて住み込みの小さな家の壁などに絵を描き始める。孤独な二人は少しづつ理解しあってゆくんだけど…。いさかいを重ねつつも、次第に売れて評判になる彼女をエベレットも認めていくようになる。ちゃんと結婚した二人だったけど…という話。無骨な男と無垢な女という取り合わせは、フェリーニの「道」を思い出すが、この映画は二人の住む家を動かない。この家を取り巻く自然が素晴らしく、画面を見ていても飽きることがない。

 なんだか人生に何が必要なのか、改めてしみじみ感じさせてくれる映画。主人公モードは、「シェイプ・オブ・ウォーター」で大評判のサリー・ホーキンス。なりきり演技が素晴らしい。エベレットはイーサン・ホーク。ほとんどこの二人が出ずっぱりで、印象的な演技。監督はアイルランド出身のアシェリング・ウォルシュという人。
(モード・ルイス本人の写真)
 画家の映画は割と多い。有名画家を扱う映画も多いが、ナイーブ派の映画も多い。グルジア(ジョージア)の「ピロスマニ」、ポーランドの「ニキフォル」、フランスの「セラフィーヌの庭」など忘れられない。日本の「裸の大将」(山下清)などもある。男は放浪出来るが、女性画家は家で描くことが多い。
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