お正月に「もう一度見たい映画・外国編」というのを書いたんだけど、その時に二番目に見たい映画に挙げたのが「おもいでの夏」という映画だった。そうしたら、キネカ大森でやってるワーナーブラザースの映画特集に入っているではないか。今回やる映画の中には最近見直した映画が多いけど、「おもいでの夏」と「避暑地の出来事」は見てないから、この機会に見に行った。
1971年に作られた「おもいでの夏」(Summer of '42)は、アカデミー作曲賞を得たミシェル・ルグランの甘美で哀切なメロディが忘れられない。だから思い出の中で、ずいぶんロマンティックな映画になってたんだけど、見直してみたら「10代少年のセックス妄想おバカ映画」でもあった。ほとんど足立紳監督の「14の夜」じゃないか。まあ15歳という年齢は確かに「性のめざめ」だろうが、今の時点で見ると多少セクハラ的に問題なんじゃないか。世の中甘美なだけの世界はない。
この映画は脚本家の思い出がもとになってるが、原題にある「42年の夏」、つまり真珠湾攻撃後半年ほどという時点を描いている。映画製作当時はベトナム戦争真っ最中で、第二次世界大戦を経験した人も数多くいた。そのような「戦争の影」が映画を成立させていて、だからこそ「海辺の家に住む出征兵士の若き妻」という存在が神話的な輝きになる。この「若き人妻」役のジェニファー・オニールは結局あまり大成しなかったけど、この映画一本で永遠に記憶されるだろう。
(ジェニファー・オニール)
僕にとって「おもいでの夏」は、ジェニファー・オニールとミシェル・ルグランの映画だったんだけど、今回見たら撮影監督のロバート・サーティーズの映画でもあると思った。「ベン・ハー」などで3回もアカデミー賞を得ているが、活動期間が長く「卒業」も「ラスト・ショー」も「スティング」もこの人。いかにも思い出の中を映像化するかのように、海辺の砂浜や太陽を背景にして、はかない幻のような世界を現出させている。「アラバマ物語」で知られるロバート・マリガン監督の佳作。
デルマー・デイヴィス監督「避暑地の出来事」(1959)は初めて見た。マックス・スタイナー(「風と共に去りぬ」)作曲のテーマ曲「夏の日の恋」がパーシー・フェイス・オーケストラで大ヒットして、僕も曲だけは昔からよく知っている。美しいテーマ曲だけ有名で、大した映画じゃないというのは映画史的知識として知ってたけど、確かに今では古すぎる青春映画だった。
もちろん「避暑地の出来事」で「夏の日の恋」の映画ではあるが、内容的には全然ロマンティックではない。ボーイ・ミーツ・ガール映画だけど、ボーイもガールも親の夫婦関係がメチャクチャ。メイン州の島の避暑地パイン・アイランドのホテルに、島で昔ライフガードだった若者が大富豪になってやってくる。ホテルの方が今では閑古鳥が鳴いて、オーナーは酒浸り。ホテルの息子と富豪の娘が出会ってすぐに恋に落ちるが、ある日ヨットが転覆して帰りが翌朝になると…。
この映画のテーマは、「愛し合う若者はどこまでなら許されるか」である。キスまでならいいのか。愛し合っていれば結ばれてもいいのか。しかしセックスすれば妊娠の可能性もあるわけだから、生計のない若者がセックスするのはどうなんだ。世間体もあれば、財産問題、進学先の問題など様々な問題も起きてくる。こういうテーマは昔はけっこうたくさんあって、「純潔」を守らないとこんなに不幸になるというような映画もある。同じころに書かれたフィリップ・ロスの「さようならコロンバス」でも、若者の意識は変わりつつあるが、親の世代の意識が固いことが描かれた。
今もこの問題そのものはあるだろうが、いちいち悩んでいく様子を映画にするというのは、アメリカや日本ではもうないだろう。そういう意味で「50年代」の最後の映画という感じがする。主演の若者たちはトロイ・ドナヒューとサンドラ・ディー。トロイ・ドナヒューは本人のセリフにあるように勉強に向かないタイプで、まあカッコよいだけみたいな感じ。だから青春スターで売れなくなると、B級映画で殺人鬼みたいな役をやった。サンドラ・ディーは翌1960年に18歳で歌手のボビー・ダーリンと結婚してしまい、子どもを産むがやがて結婚は破たんした。実人生と映画は関係ないけど、なんかなるほどというようなカップルではある。
(トロイ・ドナヒューとサンドラ・ディー)
1971年に作られた「おもいでの夏」(Summer of '42)は、アカデミー作曲賞を得たミシェル・ルグランの甘美で哀切なメロディが忘れられない。だから思い出の中で、ずいぶんロマンティックな映画になってたんだけど、見直してみたら「10代少年のセックス妄想おバカ映画」でもあった。ほとんど足立紳監督の「14の夜」じゃないか。まあ15歳という年齢は確かに「性のめざめ」だろうが、今の時点で見ると多少セクハラ的に問題なんじゃないか。世の中甘美なだけの世界はない。
この映画は脚本家の思い出がもとになってるが、原題にある「42年の夏」、つまり真珠湾攻撃後半年ほどという時点を描いている。映画製作当時はベトナム戦争真っ最中で、第二次世界大戦を経験した人も数多くいた。そのような「戦争の影」が映画を成立させていて、だからこそ「海辺の家に住む出征兵士の若き妻」という存在が神話的な輝きになる。この「若き人妻」役のジェニファー・オニールは結局あまり大成しなかったけど、この映画一本で永遠に記憶されるだろう。

僕にとって「おもいでの夏」は、ジェニファー・オニールとミシェル・ルグランの映画だったんだけど、今回見たら撮影監督のロバート・サーティーズの映画でもあると思った。「ベン・ハー」などで3回もアカデミー賞を得ているが、活動期間が長く「卒業」も「ラスト・ショー」も「スティング」もこの人。いかにも思い出の中を映像化するかのように、海辺の砂浜や太陽を背景にして、はかない幻のような世界を現出させている。「アラバマ物語」で知られるロバート・マリガン監督の佳作。
デルマー・デイヴィス監督「避暑地の出来事」(1959)は初めて見た。マックス・スタイナー(「風と共に去りぬ」)作曲のテーマ曲「夏の日の恋」がパーシー・フェイス・オーケストラで大ヒットして、僕も曲だけは昔からよく知っている。美しいテーマ曲だけ有名で、大した映画じゃないというのは映画史的知識として知ってたけど、確かに今では古すぎる青春映画だった。
もちろん「避暑地の出来事」で「夏の日の恋」の映画ではあるが、内容的には全然ロマンティックではない。ボーイ・ミーツ・ガール映画だけど、ボーイもガールも親の夫婦関係がメチャクチャ。メイン州の島の避暑地パイン・アイランドのホテルに、島で昔ライフガードだった若者が大富豪になってやってくる。ホテルの方が今では閑古鳥が鳴いて、オーナーは酒浸り。ホテルの息子と富豪の娘が出会ってすぐに恋に落ちるが、ある日ヨットが転覆して帰りが翌朝になると…。
この映画のテーマは、「愛し合う若者はどこまでなら許されるか」である。キスまでならいいのか。愛し合っていれば結ばれてもいいのか。しかしセックスすれば妊娠の可能性もあるわけだから、生計のない若者がセックスするのはどうなんだ。世間体もあれば、財産問題、進学先の問題など様々な問題も起きてくる。こういうテーマは昔はけっこうたくさんあって、「純潔」を守らないとこんなに不幸になるというような映画もある。同じころに書かれたフィリップ・ロスの「さようならコロンバス」でも、若者の意識は変わりつつあるが、親の世代の意識が固いことが描かれた。
今もこの問題そのものはあるだろうが、いちいち悩んでいく様子を映画にするというのは、アメリカや日本ではもうないだろう。そういう意味で「50年代」の最後の映画という感じがする。主演の若者たちはトロイ・ドナヒューとサンドラ・ディー。トロイ・ドナヒューは本人のセリフにあるように勉強に向かないタイプで、まあカッコよいだけみたいな感じ。だから青春スターで売れなくなると、B級映画で殺人鬼みたいな役をやった。サンドラ・ディーは翌1960年に18歳で歌手のボビー・ダーリンと結婚してしまい、子どもを産むがやがて結婚は破たんした。実人生と映画は関係ないけど、なんかなるほどというようなカップルではある。

