万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

尖閣諸島問題―ICJへの提訴は”自衛権”の行使

2012年09月23日 14時37分03秒 | 国際政治
国連で日本の立場説明へ=「尖閣・竹島」言及は回避―野田首相、24日総会へ出発(時事通信) - goo ニュース
緊張高まる尖閣諸島問題について、日本国政府は、これまで”領土問題は存在しない”とする公式の立場を表明してきました。この立場を貫くと、司法解決の提案さえも、”領土問題”の存在を認めたことになり、中国への譲歩となるとする反対意見も聞かれます。

 何故、中国への譲歩となるのか、と申しますと、領土問題として認めた限り、二国間交渉の席で、日本国は、中国側からの提案を飲まざるを得なくなるのではないか、とする懸念があるからです。実際に、胡錦濤主席の作戦は、日本国側に領土問題の存在を認めさせた上で、共同開発案を日本国側に飲ませるというものなそうです(習近平氏も、武力奪取の方針を転換?)。つまり、領土問題化こそが重要であり、後は、外交交渉という”平和的な手段”を装った”脅し”で、少なくとも、尖閣諸島、あるいは、近海に眠る資源の半分は奪取できると目論んでいるのです。しかも、トップ外交で、平和的に解決したとなれば、国際社会から称賛を浴びるかもしれません。中国側からしますと、一石二鳥なのですが、よく考えてみますと、中国政府、並びに、司法解決反対派の人々も、一つの重要な点を見落としていように思えます。それは、領有権とは、法の保護の下にある排他的な権利であって、法的な根拠を持つ側は、他国による権利主張を退けることができることです。仮に、複数の国が、同時に権利を主張する場合には、どちらに法的な権利が存するのかを、中立・公平な裁判によって判断してもらうことになります(中国は、既に尖閣諸島を自国の領域に編入…)。ですから、日本国政府が、ICJへの提訴といった司法解決に訴えたとしても、相手国の権利を認めたことにはなりませんし、自国の正当な権利を否定したことにもならないのです。むしろ、中国側の不当な権利主張を、法を根拠に排そうとしているのですから、行為としては、自衛権の行使に類似した自己防御権の行使なのです。

 国連総会では、日中間の外相会談なども準備されているそうですが、外交的解決と領土問題の承認の組み合わせは最悪です。中国側のペースに嵌れば、いつのまにか、平和的解決の名の下で、法的根拠を持つ日本国側が、領土や権利放棄を迫られることになりかねないからです。日本国政府は、軍事力による自衛を強化すると共に、法的な自衛手段にも訴えるべきと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-09-23 19:34:54
こんばんは。尖閣について日本側の主張、領土問題は存在しない。これは、日中・日台の国境線が海上にあり領海内に浮かぶ島嶼としての認識だからではないでしょうか。
気になって尖閣に関する動画を数本見ていましたが、最悪なのは元外務省主任情報分析官だった佐藤優氏です。
国際法がどうたら、12海里の範囲がどうのと国際法に書いてないからどうの、明治時代に尖閣は領有を閣議決定されただけで国際的に発信していないからどうたら・・・呆れ果てて。
外交官や外務省の職員がこの程度の認識しか持たず、戦前は日本人が住んで漁業や鰹節工場を営んでいたことなど有効支配下にあったことは完全に無視。
1960年代の中国政府発行の地図も見ていない。
どうやったら外交に勝てるのか理解不能でしかありません。
教条主義に陥り、他国を利する馬鹿しか出世出来ないのなら悲しすぎます。
もう一人トンデモナイことを中国のメディアのインタビューで喚いてる人物が・・・
野中広務氏です。「このような問題を引き起こして日本人として申し訳なく思う」「若い人は歴史を知らずに受けを狙って勇ましいことを言い中国国民の気持ちを傷つけてしまった、悲しい気持ちだ」「中国国民に多大な被害と苦痛を与えたのだから対等の関係であろうとする事は間違ってる」
一体どこの国籍を持った人物なんでしょうね。
見ているこっちが情けないわ・・怒鳴りつけたくなりました。
中国共産党一党独裁のもとで、どれだけの人間の生命財産が奪われ、どけだけの苦痛と苦しみがあり地獄絵図が描かれてきたことか。
人間の生命や尊厳を守り平和な世界を築きたいのなら中国共産党の支配を終わらせるしかありません。
常識もなく強奪と侵略しか知らない連中は地球上に不要です。そのような国でも常任理事国として強い発言権を持つ国連は一度解体して新たに法の下に平等な国際機関の設立も必要でしょう。
欧州が中国に擦り寄ったのは、幾つかの原因が有ります。
中国人が欧州に移住し重要な地位につき欧州を誘導したこと。資本でメディアに食い込み中国の宣伝工作を行ったこと。欧米のグローバルスタンダードが根本から間違っていたことです。90年代に入りソ連が崩壊した事によりアメリカで大陸間弾道弾の軌道計算をしていた人間が大量にリストラされ、それらが金融界に入りグローバリズム理論の構築に関与したのです。
サブプライムローン問題で資金の流れの解明に時間がかかりどれだけの規模になるか予測がつかなかったのは高度な数式を多数組み合わせ複雑な数学理論で運用されていたからです。
最近明らかにされたのは、グローバリズムの誤り、グローバリゼーションのモデルが数式のみで予測不可能な人間の心理や動きは完全に無視されていたことです。その為モデルケース通りに世界が動けば、こうなるであろう。このレベルでしか無かったのですが日本では、とっくに捨て去られたグローバリズムを国際的な潮流だと誤った議論が主流になっているのです。
欧州も気づき始めてはいるのですが、ユーロの失敗を認めたくないばかりに中国の資本を受け入れ現実を糊塗しようとしています。
自主防衛に踏み切るには中国との関係をできる限り失くさなくてはなりません。日本経由で軍事情報や機密に属する情報が中国・北朝鮮に流れるのではアメリカは日本の自主防衛を認めないでしょう。アメリカの安全保障にも関わってきますので。
日本が自主防衛に踏みきりながらも装備品の調達を安く上げるには国内で開発する以外にありません。それと他国に輸出をすることです。
三菱の監督と雑談していた時に、自衛隊納入品の溶接30センチで10万円、ヘリに銃座の穴を開けるだけでも数十万円・・馬鹿馬鹿しい話ですが防衛省に納入する品物は特注品扱いになりますので値段はあって無いようなものだ、そうです。

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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-09-23 20:48:43
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 元外務省主任情報分析官であった佐藤優氏は、尖閣諸島に関して、中国側の言い分を認めようとしているのでしょうか。野中氏の発言は、主権平等の原則さえ否定しているのですから、”属国宣言”のようなものです。氏は、植民地が当然であった時代に、逆戻りしたいのでしょうか。維新の会の橋下氏も、竹島の共同管理を言い出しているようですが、こうした人々こそ、自ら国の正当な権利を護ろうともせず、侵略した側の肩をもつ”売国奴”というものです。国際社会において、中国や韓国の非常識かつ違法な言い分がまかり通るようになれば、全ての国境線は、一気に不安定化します。『権利のための闘争』を著したイェーリングという人が、権利のために闘うことは、自らの法益のみならず、社会の平和のための義務でもあり、それは、法秩序の形成に貢献する、というような内容のことを述べておりましたが、物理的な自衛とともに、日本国が、毅然とした態度で自らの権利を護りませんと、国際社会全体が、無法化します。中国や韓国の工作員による世論誘導もあるでしょうが、日本国政府は、国際社会の法と正義のためにも、自らの権利を、決して譲ってはならないと思うのです。
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