チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 122

2019年03月26日 13時32分06秒 | 日記
くりまわしの続き
フランスの著名なデザイナーが「日本人のくりまわしの知恵」が美しいと思うことにこちらのほうが逆に「くりまわし」について再考してしまう有様
西洋から「パッチワーク」が入ってきた時
「このアイデイア着物の端切れで作るといいですね」と先輩に提案したら
「日本は昔からやってるわね」という一言で片付けられたことがある
もうすでに私の時代は新しい着物を購入するのが当たり前の時代に入っていた

日本でのくりまわしは布を平面にして使用するのではなく
全く新しいものとして誕生をさせるところに豪さがあるように思う

先日お会いした呉服屋の女将田家さんはくりまわしの天才で
いつおあいしてもくりまわしの着物を実に美しく着ている

90年以上続く呉服屋さんで
「祖母や母からの着物、また売れ残った反物そういう布を前にいろいろと悩むのが好き」という
特に大島紬が三代の女将さんが揃って好きだったようでいつもいつも大島紬のくりまわしに目を見張る

呉服屋の女将さんは布が好き 
われも負けじと「これは父親の結城紬に母の大島紬を市松に縫ったのだけどどう?」
「結城紬と大島二大紬の競艶ですか?」
「長襦袢は父と祖父の羽織裏をつなぎ合わせたの」

また別の女将が
「そういうときは帯は格がある上等のものがいいわね」
割って入ってきて、柔らかくなってきた父親の白大島を襦袢にした」と裾をめくる

着物を商いする女将さんたちは
「着物は着物にして生き返らせるものよ」
というしっかりした軸を持っているので決して簡単に切り刻んだ洋服にしたりはしない
最後の最後は「前掛け」その前掛けも端切れを縫い合わせている、風呂敷も油単もそうだ

どんなに小さな端切れでも実に見事にセンスよく着るものにしてしまう
これは布を愛しているからであろうか

しかし最近は針を持つ人が少なくなり、またくりまわしはいたしませんという縫い手が増えている
そこへ
「私くりまわし大好きいつでもおっしゃってください」と30代の若手の縫い手
女将さんに鍛えられたのだという、しかも布をどうやって活かそうかと思う時間が大好きなのだと

長く着物の世界にいながらチャコちゃん先生くりまわしのこと不勉強だったなとと感じ入っている
それを反省すると女将さんたちは
「比佐子さんは先へ先へと私達を導いてくださればいいのよ」
と慰めてくれる

傘寿の祝をしてもらっている西村艶子さんの右手中指には銀の指ぬきが光っていた
そういえば彼女の指にはいつも指ぬきがはめられている

#着物 #チャコちゃん先生 #指ぬき #パッチワーク #くりまわし #女将さん #中谷比佐子 #傘寿


コメント
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