チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 107

2019年03月05日 12時46分23秒 | 日記
ある時ぼんやり旅行雑誌を見ていたらウイーンで「ジャガーバル」というダンスパーテイーがあり、そこには民族衣装を着て集まり、収益の一部は森を活かす植樹用に寄付をする場所は王宮
その記事に吸い寄せられた

というのはそのころ私は「女将さんサミット」というのを立ち上げて
日本全国の呉服屋さんの女将さんたちに会員になっていただき
女将さんが中心のお客様の気持になった着物選びができる店の確立に力を注いでいた

日本は高度成長期からバブルに入り着物がボンボン売れると男の経営者がやたら元気になり
男の論理で着物を販売する
そうすると着物は「もの」で「消費」するものという位置づけになり
女将がゆっくりコーチングしながら客と着物を選びその着方まで更にはその人の生き方のアドバイスに時間を掛ける店が少なくなり
ついに女のきる着物に女が口出しできぬような流通になってしまった

それを見かねたチャコちゃん先生は全国の小売店に手紙を出し
平成4年3月3日に東ドイツの領事館(ちょうどベルリンの壁が落ちこの領事館は空き家だった)
で女将さんサミットを立ち上げた
56社の美しくて優しい元気の良い女将さんが集まり
またたく間に横の繋がりができて毎月一回の例会にいろんな問題点を話し合ういい仲間が生まれた
さらに年一回の総合会議を兼ねた研修会やパーテイ
いつも渋い着物で店に座っている女将もこの日ばかりは女にもどって美しく着飾って遊ぶ

その時思ったのは
女将さんが培った気働きそして家族に対する思いやりまたお客のことを心から案じる優しさ
これぞ大和撫子という感じの人ばかりで私もその中で学ばぜていただいた
彼女たちのすべてがもてなし上手
それぞれの店に取材に行くとその土地でしか味わえない美味を惜しげもなく出してくれる
「おもてなし」の天才と言える

ある店で
女将さんが一人の客の話をずーと聞いている私は邪魔にならないように遠くに座って観察していた
二人の間には見事な色留袖がおいてある
しかしふたりともその着物には視線も落とさない一時間もたった時
「ではお願いしますね」と客は腰を上げた
「お客様お気に召さなかったの?」
「帯はまかせると言ってご購入されたわ」
「勧めていなかったじゃあないの」
「はじめにお見せしてお話していただけ」
「それで?」
「そう全部で300万円」
「天才ねすごい美学だ!」

こういう女将さんをもっと大きな目で日本の着物を見てほしい

それで「振り袖を着てウイーンに行こう」という企画を立て実行した
その企画は4年続きおかみさんたちは日本の着物に自信を持った
 
#女将さんサミット #ウイーン #ジャガーバル #女将さん #振り袖 #中谷比佐子
コメント
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