山崎斌さんに「梅染」を依頼し
糸染めが出来上がるまで時間がかかるので
予定された仕事をこなし早速「染織紀行」に取り掛かった
山崎さんの生地長野県は染織の宝庫だと聞いている
その長野には養蚕や製糸工場もたくさんあり明治時代は日本の経済の中心であったとも
まずはどこにしようか
いろいろと情報をとってまず松本にある本郷織物を取材することにした
その前に新人小説家として売り出していた水上勉の「有明」という一文で天蚕の文字を見たのも刺激があった
所属している出版社は新人作家の売出しが上手で
新刊本が出ると一冊ずつ貰える
少女時代兄が小説好きでその兄に対して父は
「男たるもの小説にうつつを抜かすものじゃあない」
といっていたのを耳にしていたので小説に対して偏見がありあまり読んだことはなかった
しかし家には宮本武蔵や三国志、鞍馬天狗などが難しい本の間に挟まっていて
その殆どを読んでいたのであれは兄だけにいっていた言葉だろうと今は思う
というわけで小説が新鮮で新刊本が配られると仕事そっちのけで読みふけったものだ
後にその「知識?」を徴用されて名だたる女流作家の担当にされたこともあった
この出版社は小説と言ってもほとんどノンフィクション思考なので現場の様子もよく分かる
それではじめてのルポは「有明の天蚕」にしぼり
タイトルも「信濃路の紬」とした
(我ながら良いタイトルだと自画自賛)
とにかく着物のことは全くわからない
有明でみた天蚕は青虫みたいで怖かった
触ることもつまむこともできず両手を後ろに回し
どうしてこの蚕に価値があるのか全くわからない
小学生の頃夏休みの宿題で蚕を飼ったことがあり
無残にもキャベツやきゅうりをわざと与えて桑の葉だけしか食べないということをやっと理解した事がある
それなのにこの天蚕桑の葉ではなくクヌギの葉を食糧とするという
天敵の鳥の餌にならないように大きく広く網を張って保護していた
人間がその糸をほしいから保護しているのだ
天蚕でもなんでもないじゃあないの
と小生意気に思いながらも着物のことに無知なのでただただ説明を黙って聞くしか無い
天蚕は網で保護されているとはいえ
雨風 紫外線 または霜などに耐えて繭を作りその中の蛹を守る
繭は葉と同系色の美しい緑だ自分の体を天敵から守るための生き物の知恵だと説明された
でもせっかく作った繭を人は横取りしてしまうのだな
と何か解せないまま取材は続く つづく
糸染めが出来上がるまで時間がかかるので
予定された仕事をこなし早速「染織紀行」に取り掛かった
山崎さんの生地長野県は染織の宝庫だと聞いている
その長野には養蚕や製糸工場もたくさんあり明治時代は日本の経済の中心であったとも
まずはどこにしようか
いろいろと情報をとってまず松本にある本郷織物を取材することにした
その前に新人小説家として売り出していた水上勉の「有明」という一文で天蚕の文字を見たのも刺激があった
所属している出版社は新人作家の売出しが上手で
新刊本が出ると一冊ずつ貰える
少女時代兄が小説好きでその兄に対して父は
「男たるもの小説にうつつを抜かすものじゃあない」
といっていたのを耳にしていたので小説に対して偏見がありあまり読んだことはなかった
しかし家には宮本武蔵や三国志、鞍馬天狗などが難しい本の間に挟まっていて
その殆どを読んでいたのであれは兄だけにいっていた言葉だろうと今は思う
というわけで小説が新鮮で新刊本が配られると仕事そっちのけで読みふけったものだ
後にその「知識?」を徴用されて名だたる女流作家の担当にされたこともあった
この出版社は小説と言ってもほとんどノンフィクション思考なので現場の様子もよく分かる
それではじめてのルポは「有明の天蚕」にしぼり
タイトルも「信濃路の紬」とした
(我ながら良いタイトルだと自画自賛)
とにかく着物のことは全くわからない
有明でみた天蚕は青虫みたいで怖かった
触ることもつまむこともできず両手を後ろに回し
どうしてこの蚕に価値があるのか全くわからない
小学生の頃夏休みの宿題で蚕を飼ったことがあり
無残にもキャベツやきゅうりをわざと与えて桑の葉だけしか食べないということをやっと理解した事がある
それなのにこの天蚕桑の葉ではなくクヌギの葉を食糧とするという
天敵の鳥の餌にならないように大きく広く網を張って保護していた
人間がその糸をほしいから保護しているのだ
天蚕でもなんでもないじゃあないの
と小生意気に思いながらも着物のことに無知なのでただただ説明を黙って聞くしか無い
天蚕は網で保護されているとはいえ
雨風 紫外線 または霜などに耐えて繭を作りその中の蛹を守る
繭は葉と同系色の美しい緑だ自分の体を天敵から守るための生き物の知恵だと説明された
でもせっかく作った繭を人は横取りしてしまうのだな
と何か解せないまま取材は続く つづく