My Audio Life (趣味のオーディオ)

真空管オーディオを中心に、私のオーディオチューンアップについて書いています。最近はPCオーディオにも取り組んでいます。

6AS7G PPアンプを5998 PPアンプに改変。~暴れん坊で使い難いけど隠れた銘球~

2019-07-08 11:54:45 | 真空管アンプ

暫く新規投稿が出来ていなかったのは、また6AS7G PPアンプを弄っていたためです。

そして、このアンプの改造も遂にここまで来ました。

やっと手に入れた6AS7G同族のTUNG-SOL 5998」

本当に落ち着きの無いやんちゃな暴れん坊で、とっても使い難い球です。

6AS7Gも使い難い球ですが、そこからの置き換えは容易では有りませんでした。

色々と注意しなくてはならない事がありました。

整流管は内部抵抗が小さくて面白いのですが、これを出力管として使いこなすのはほんとに難しい~(泣)。

 

最初はバイアス変更だけで置き換えが出来ると思い、電圧配分や半固定でのバイアス可変範囲等を計算し定数設定しました。

球無しの状態で実際の電圧も測定し設計通りである事を確認したのち、いざ5998を乗せて電源ON!。

バイアス電圧値はほぼ設定通りです。

ただ、予測通り、球間、ユニット間でかなりのVg-Ipバラつきが有ります。

各ユニットのカソード電流に合わせるのにバイアス電圧は約7V位の差が有ります。

しかも時間経過とともに電流が増えたり減ったりと安定しません。30分毎に変化する感じ。

取り敢えず聴いてみます。ああ~、良い音だ~。しっかりと芯のある音です。聴く人に訴えかけてきます。

一旦電源を落とし数時間後に電源再投入。しばらく無音状態で通電。部屋の温度は30度近くになりました。

音楽CDを再生し、恐るおそるボリュームを上げていきました。

すると、ここで大惨事発生!!!。左chの5998の足元から白い煙がモクモク、、、やっちまいました。

慌てて直ぐに電源を落としました。

球の足元は放熱のために隙間が空いているので、恐らく内部の部品が焦げた?

裏を覗いてみましたが焦げた形跡は無し。しかしカソード抵抗(200Ω)が熱い。多分この絶縁樹脂が熱せられ煙が出たのでしょう。

※後日、取り外して裏を見ると、やはり焦げていて抵抗値が3%ほど低下していました。

ここは、のちほど同タイプの新品に交換しました。


5998が暴走して過電流が流れたことを疑い、暴走の原因を考えました。

この真空管のことをデータシートや文献でもう一度良く調べてみる事に。。。

 

すると、注意すべき点が見つかりました。

①グリッド抵抗は自己バイアスの場合で100kΩ max.。

②グリッドには寄生発振防止用の直列抵抗1kΩが必要で出来るだけグリッド近くに配置。

 

現状と対策を以下の様にしました。

①6AS7Gではデータシート上は1MΩ max.でしたので、今は260kΩ位になっています。

 →ここを100kΩ程度になる様に設定し直しました。

~~以下は私の勉強のため書き残しておきます~~

この球(5998族)はプレート、カソード~グリッド間隔が特に狭いため、熱せられたグリッドから熱電子が放出され、この電子が高圧のプレートに引っ張られる。この時電流はグリッドに吐き出される方向に流れるため、バイアスをより浅くしてしまう。バイアスが浅くなるとより多くのプレート電流が流れ、グリッドの温度上昇が更に進み、より多くの電子を放出、更にバイアスが浅くなる。バイアスが浅くなるとさらに電流が多く流れ・・・、遂には熱暴走状態になる。

しかし、グリッド・リーク抵抗の値を小さくするとドライブ段の負荷が重くなってしまうが、今の回路は元々6AS7Gの深いバイアス用に設計してあるのでドライブ能力的には問題ないであろう。

実際のリーク電流を測定してみました。

すると3ユニットが20uA程度、1ユニットのみ2uAと少なく、更にこのリーク電流は時間とともに増えたり減ったりて不安定。

やはりグリッド抵抗は小さいほうが良さそう。

しかし、この値をあまり小さくすると、ドライブ段とのカップリング・コンデンサが0.068uFなので、時定数的に低域が厳しくなる。またスタッガ比の関係もあり、前段も含めてカップリング・コンデンサを見直さなくてはなるまい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

②ここには1kΩの抵抗が入れてあるのですが、位置を基板上から真空管ソケットのグリッド・ピン直付けに変更。

 抵抗はA&B(アーレン・ブラッドレー)を使いました。

 

 

カソード電流は40~45mAに調整し暫く観測。

今のところ(今のところです)暴走する事は無くなりましたが、カソード電流は相変わらず変動します。±5mA程度。

多分グリッドのリーク電流の変化に連動しているのでしょう。

とにかく不安定でいつ何時突然噴火、牙を剥くのか恐々です。

これはエージングすると治まるのかな??? 不明???

 

その他の変更点:

a)カソード抵抗に抱かせている電解コンデンサも見直しました。

今の560uFでは少し大きすぎるかも。(これも暴走トリガーのひとつ?不明)

ニッケミ560uF→ROE 220uF/63V(金色)に変更しました。

Philipsの220uFも試してみましたが、こちらは中域の張り出しの良い締った音になりました。ピアノの音はこちらが良いかも?。

ROEは柔らかく広がりのある豊かな音です。好みの問題でしょうけど。

6AS7Gの時は560uF位にしないと低音が出なかったのですが、5998では220uFでもそこそこ良さそう。様子が違うのかな?

暫くこの状態で聴きましたが、やはり220uFでは物足りなく感じます。

そこで470uF/40V(Philips製)に交換しました。

低音の量感は増しましたが、ROEほど抜けは良くありません。暫くエージングして様子を見ます。

1週間ほど使ってみました(延べ時間50時間位)が、やはり抜けが良くありません。しかも中域から高域も歪っぽい。

この1週間はこのフン詰まった音でストレスが溜まりました。ダメダメです。

そこで見た目は良くありませんが、ROE製220uFをパラにして440uFとしました。

やっぱりこれです!抜けが違います。歪っぽくもありません。リアリティが良いです。

精神的にも気分が晴れてきました。 

 

b)初段のカソード・パスコンをROEからスプラグのATOM 250uF/16V(黒)に変更し少し締まりを持たせてみました。

全てROEだど、ブヨブヨの音になってしまうので。

音の判断は、あくまで個人的な聴感上の感覚ですので、ツッコまないでください!


c)入力(VR後)にカップリング・コンデンサを入れました。

プリアンプのNFBが直接出ているので、気持ち的に入れておいたほうが良さそうと思い。音の色つけも兼ねて。

EROのMKT1813 0.22uF(緑色の円筒)を入れておきました。


d)バイアス調整用のVRを高級品に交換しました。4個。

 20kΩ。コパル製?(黄色)だったかな?忘れました。

 

e)ドライブ段~出力段のカップリング・コンデンサは、事前にGUDEMAN→ブラック・ビューティ0.68uF/600Vに換装していました。

しかし、グリッド抵抗を100kΩに変更したので、時定数を再計算すると0.068uFではカットオフ周波数(-3dB)が23Hzくらいになってしまう。

キッパリとこのまま低域をカットしてしまう手もありますが、やはりもう少し低音が欲しいので、同じBBの0.1uF/600Vに交換しました。

BlackBeautyは経年変化で容量が増す傾向にあり、実測すると0.13~0.14uFでした。

時定数は計算上12Hzくらいになりました。

B.B.もオールド・ビンテージの新品(NOS)なので交換したばかりは音が落ち着きません。

 

f)整流ダイオードを一般的な1N4007からウルトラ・ファースト・リカバリ・タイプのUF4007に交換しました。

 初段電源(4本x左右2系統)、バイアス用負電源(4本)の計12本。Vishay製。

 出力段のB+電源にはブリッジ・タイプが使ってあったので、これをUSのDIODE製GBU410に交換。左右2個。 


g)電源ヒューズをBussmann製4A/250V(セラミック)スローブロー・タイプに交換。

 

a)b)については、聴き込んでから、また色々と試してみたい。。。。。

当初このアンプの改造には、あまりお金を掛けないつもりでしたが、結構な投資になってしまいました。

 

いよいよ、今回入手したTUNG-SOL 5998の紹介です。ST管。

私のアンプにはスペース的(落とし込み穴径制約)にST管しか刺さりません。

他の球に比べてガラスの透明度が素晴らしいです。 

デートコードが「62-31」と言う事は、1962年31週と言う事かな?こんな球が新品の状態で57年の時を経て現存していたなんて本当に信じがたい(incridible!)です。貴重です。譲って頂いた方、有難う御座いました。 お宝発見です。

ステム部分です。

WE製とは少し形状が違います。WE製はステムの上部が真っ平です。

見難いですが、スクエア・ゲッターです。

2枚のプレートの隙間はプレートのダボで確保してある様です。この隙間からヒーターが見えます。

プレートがドミノの様な形状をしているので、「ドミノ・プレート」と呼ばれる事もある様です。

最初このお宝を暴走させて申し訳ありませんでした。球自身もいきなりの通電でビックリしたのでしょう。これでエミッション・ロスしたような気もします。これからは大事に使って行きます。

RCA 6AS7Gやロシア製よりも音質的に秀でています。

 

この5998には5998AというGT管のものも有りますが、仕様的には細かなところで違う別物で、5998はWE421Aと同等と考えた方が良さそうです。

5998の最大定格は6AS7GやWE421Aの13Wに対し15W。プレート電圧/電流も275V/140mAと余裕があります。

実はこの球の入手前にWE421Aも入手したのですが、こちらは片ユニットが電流が流れなくて即刻返品しました。

でも、いつかはWE球を手に入れたい(願望)。WEのほうが作りがしっかりしています。

しかし値段が、、、! 300Bほどではありませんが、とんでもないです。 

 

 

今回改造したアンプを聴いてみると、これが実に良い音!(個人的な感想です) 

表現が難しいですが、「NIGHT BIRD(Live)/Eva Cassidy」を部屋を暗くして聴くと、狭いライブハウスの前席で聴いている様な気分になります。ワイングラスやウイスキー・グラスを手にしたくなります。

他のCDでも、今迄聴き馴染んだ曲が「こんな曲だったかな~?。」と思わせる様な鳴り方です。別の曲の様に聴こえます。

特にジャズはどれを聴いても魅力的な音楽に聴こえる様になりました。 

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がしかし、、、。それにしても使い難い球です。

暫くはどんな災難が起こるか分からないので、通電中はこのアンプから離れられません。

毎日のバイアス電流のモニターも欠かせません。

まあ、そんな人は居ないと思いますが、こんな球を使おうと真似はしないでください(笑)。

電源トランス、出力トランスも特殊なものが必要です。  


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