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不幸にも未成年が損害をかけた場合に、被害者救済を図る法:民法712、714、709条

2012-05-18 10:19:24 | シチズンシップ教育
 加害者が、損害賠償を請求された場合、以下の「責任能力」がないという事由で、その責任から逃れることが可能であると民法は、規定しています。

 「責任能力」がないとは、民法712条にいう12歳前後(民法に明記はありませんが、判例で出されています。)を目安とした未成年、713条にいう精神上の障害のあるひとをいいます。
 712条の規定では、未成年者は、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき」と書かれ、判例で、その時が、12歳前後と判断されたわけです。大審院が、道徳上の善悪の判断がつく年齢よりも高い年齢において、12歳を基準にしたということです。

 さて、そのような責任能力のない未成年が、不幸にも加害者となって、被害を起こした場合、被害者側は、712条の規定により、その未成年本人に対して損害賠償などを請求できないことになります。
 
 その場合は、被害者救済のために、714条において、
 1項で、「監督する法定の義務を負う者」=監督義務者、すなわち、未成年者の場合は親権者、未成年後見人など
 2項で、「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」=代理監督者、すなわち、保育園・幼稚園・小学校などの施設
 が、被害者に加えた損害を賠償する責任を負います。


 裁判所は、責任能力の認定において、やや人為的な操作を行っています。

 「光清撃つぞ事件」(大判大正6.4.30)では、射的銃で友人を失明させた12歳2か月の少年に、責任能力を否定しました。(それにより、その親が責任を負う)

 勤労少年「豊太郎」の自転車事故(大判大正4.5.12)では、雇い主のために商品を得意先に自転車で届ける最中にひとと衝突し怪我を負わせた11歳11か月の少年に、責任能力を負わせました。(それにより、使用者責任715条で雇い主が責任を負う)

 同じ12歳前後でも、12歳2か月は、責任能力が否定され、11歳11か月に、責任能力が認められています。

 ポイントは、被害者救済にとって、請求の根拠としてよりよい形になるように12歳前後の責任能力の線引きを微妙に調整するのです。


 
 では、12歳より年齢がいった未成年の場合は、どう考えるか。

 責任無能力者とは言えず、したがって、714条を根拠に親に責任を追及することはできません。
 かといって、責任能力はあるとはいえ、その本人である未成年に損害を請求しても、その賠償できる能力は、たかが知れています。本人が大人になるのを待つ手はありますが、求められるのは、いますぐの被害者の救済です。

 その場合は、もともとの基本となる条文709条(不法行為)に立ちかえって、その709条を根拠に、親自身の責任を直接追及する形がとられます。

 ただ、被害者にとっては、資力のない未成年本人ではなく、監督義務者である親への責任追及ができることでは、道が開けるわけですが、709条と714条の立証の負担では、709条の方が、被害者側に立証の負担が重くなり、不利にはなりますが、しかしながら、それにより対応がなされているのが現実実務の状況です。


<709条と714条の立証責任の負担の差>

1.故意・過失について
709条では、被害者は、加害者未成年の過失を立証しなければならない。(立証責任は、被害者側)

714条では、加害者側(監督義務者の親)は、監督の「義務を怠らなかった」ことを立証できない限り、責任を負わされる(714条1項但書前段、「ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、この限りではない」)。(立証責任は、加害者側に転換)
      被害者は、多くの場合、加害行為をした未成年に注意義務違反の行為があったこと(故意・過失)を立証するだけでよい。 

2.因果関係について
709条では、加害行為をした未成年の過失と損害との間の因果関係を、被害者側が立証しなければならない。

714条では、監督義務の懈怠と生じた損害との間の因果関係の不存在が、加害者側で立証されない限り責任が認められる(714条1項但書後段、「ただし、その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」)。(立証責任は、加害者側に転換)


 実際は、709条を適用された場合に、上記1.2.の立証責任の困難さを裁判所側も十分に考慮に入れ、監督義務者の責任を認めています。

 例)
 流行の裾幅の広いズボンほしさに、中学1年生の新聞配達の少年Aを殺害し、集金した新聞代金を強奪した中学3年生(15歳)による事件における両親への損害賠償の請求
 (最判昭和49.3.23 )


*****民法******
(責任能力)
第七百十二条  未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

第七百十三条  精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条  前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


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