波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

     泡粒の行方    第48回

2016-02-23 10:09:30 | Weblog
欽二の毎日は多忙を極めた。新しい材料の販売は需要期に入り、あちこちで引き合いもあり問い合わせもあった。其の範囲も北は秋田、宮城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、静岡、名古屋、大阪、愛媛、九州と全国へと広がったのでそのために当然行動範囲は広げざるを得なかった。若かったこともあり意欲もあった。彼の心には全国制覇の野望があった。そして次々に講座を設けて実績を上げた。それは本社の工場にも反映し新工場が二つも増やさざるを得ない状況になっていた。勿論そこには親会社の信頼による資金援助もあり、人材支援もあった。
こうして外面的な仕事は順調であったが、それだけではなかった。それは親会社との交流を図ることであった。田舎の会社の生活とは全く違っていた。
つまり「時間外交流」の持ち方である。朝9時出社、5時退社の定刻のリズムの生活であった欽二にとっては考えられない生活であった。彼らは定刻を過ぎると思い思いに其の後の時間を娯楽の時間として過ごしていた。近所の居酒屋での懇談に始まって、それぞれに仲間がいた。其の時期一番盛んであったのが麻雀だった。本社の近所の雀荘は常に満員であり、そのために予約が必要で午後なると雀荘の予約と人数と席を確保、そして時には満貫賞というプレミヤのお土産まで用意しなければならない。其の準備は子会社の其の担当者が当てられていた。
欽二は其の役目を命じられていたために定刻前には其の場所へ駆けつけて、本社の上司を向かえてお相手を勤めるのである。当然費用は先方もちであるが、其の勝負の決済は個人もちとなる。
と言ってやたらに向きに勝負にこだわって勝つことも出来ず、そこそこにお遊びの結果になるように願っていた。終わるのは11時ごろになる。したがって帰宅できるのはタクシーを利用してもやっと、其の日のうちに帰れるというのが精一杯だった。こんな費が週に2階か3回あるのである。土曜と日曜日はゴルフが月に一回かに貝は入る。ゴルフもまた盛んであった。
スタートの時間の予約を取るために朝早くゴルフ場へ行くこともしばしばであり、 場合によっては前日から並んで待つ場合もあった。(さすがにこの場合はアルバイトを頼んだが)