波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

泡粒の行方    第47回

2016-02-17 10:01:34 | Weblog
初めての接待営業であり、売り込みのチャンスでもあった。7~8人の幹部とテーブルに着くと
ジョッキで乾杯を一気飲みするのだ。欽二は自信がなかったのでそろそろと飲み始めると全員が勢いよく飲み干している。まだ半分も飲めなくて躊躇していると「全員乾杯しないと意味がない」と言われ、無我夢中で飲み干した。そして次は「大ジョッキだ」と声がかかった。
そしてそれが運ばれてくるうちに欽二は少し気が遠くなるような感じになっていた。そしてそのまま体の自由が利かなくなり、気を失いかけていた。其の様子を見た幹部は「しょうがないなあ」と言いながら、適当に飲み終わると欽二を両側から腕を支えて連れて帰ることになった。
何しろ全身がマヒ状態で歩けないのだから仕方がない。それでも意識はあり「悪いけど、どこかで休ませてください。少し休めば大丈夫ですから」と言うと、一人が近くの自分の家に連れてゆくと言って、とりあえず休ませてもらうことになった。
そして全員「これからみんなでの見直してくるから此処で寝ていろ」と言われて留守番を頼まれてしまった。そのまま気を失ったように眠ってしまった。どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
「まだ寝ているのか。起きろよ」と言われて気がついた。しかし身体はまだ調子が悪い。
「申し訳ないけど、今晩どこかこの片隅でこのまま寝かせてもらえませんか」頼み込む。
「冗談じゃないよ。人の家で勝手にそんなことを言われてもこっちも都合があるんだ。車を呼ぶからさっさと帰れ」と言われ、タクシーに放り込まれてしまった。
運転手も心配そうに「気持ちが悪くなったらいつでも声をかけてください」と言われ、何とか其の夜、何とか家へたどり着くことが出来た。「急性アルコール中毒症状」であり、病院へ行かなくてすんだことは本当に幸運だったと言える。
そして欽二は自分の体がアルコールを受け付けないことをはっきりと自覚することになった。
今後も酒席をはずすわけにはいかないだろうけど、何とかそれをかわす方法を考え泣ければならないということである。